芥川賞&直木賞(2023年上半期)候補作が決定 芥川賞は2人、直木賞では1人が初ノミネート
日本文学振興会は6月16日、第169回芥川龍之介賞(2023年上半期)および第169回直木三十五賞(2023年上半期)の候補作品を発表しました。
芥川龍之介賞、直木三十五賞ともに、2023年7月19日に都内で選考委員会が開催され、それぞれ受賞作品が決定します。
第169回芥川賞 候補作について
第169回芥川賞の候補作は以下の5作品です。
【第169回芥川賞 候補作】
◎石田夏穂(いしだ・かほ)さん「我が手の太陽」(『群像』5月号)
◎市川沙央(いちかわ・さおう)さん「ハンチバック」(『文學界』5月号)
◎児玉雨子(こだま・あめこ)さん「##NAME##(ネーム)」(『文藝』夏季号)
◎千葉雅也(ちば・まさや)さん「エレクトリック」(『新潮』2月号)
◎乗代雄介(のりしろ・ゆうすけ)さん「それは誠」(『文學界』6月号)
今回、市川沙央さんと作詞家・児玉雨子さんが初ノミネート。石田夏穂さんは2度目、千葉雅也さんは3度目、乗代雄介さんは4度目のノミネートとなりました。
第169回直木賞 候補作について
第169回直木賞の候補作は以下の5作品です。
【第169回直木賞 候補作】
◎冲方丁(うぶかた・とう)さん『骨灰』(KADOKAWA)
◎垣根涼介(かきね・りょうすけ)さん『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)
◎高野和明(たかの・かずあき)さん『踏切の幽霊』(文藝春秋)
◎月村了衛(つきむら・りょうえ)さん『香港警察東京分室』(小学館)
◎永井紗耶子(ながい・さやこ)さん『木挽町のあだ討ち』(新潮社)
今回、月村了衛さんが初ノミネート。高野和明さんと永井紗耶子さんは2度目、冲方丁さんと垣根涼介さんは3度目のノミネートとなりました。なお、永井紗耶子さんは候補作『木挽町のあだ討ち』で第36回山本周五郎賞を受賞しています。
芥川賞と直木賞について
芥川賞と直木賞は、1935(昭和10)年に制定され、芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られます。
芥川賞は主に無名・新進作家が、直木賞は無名・新進・中堅作家が対象となります。受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が授与されます。
我が手の太陽 石田 夏穂 (著) 鉄鋼を溶かす、太陽と同レベルの高温の火を扱う溶接作業は、どの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達したトップ溶接工だ。鉄鋼を溶かす間、伊東は滅多に瞬きしない。息も最小限に殺す。火が鉄板を貫通すると、その切り口が上下に破かれ初め、切断面から動脈血にも似た火花が、ただただ無尽蔵に散る。ーーそんな伊東が突然、スランプに陥った。 |
ハンチバック 市川 沙央 (著) 「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」 圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。 打たれ、刻まれ、いつまでも自分の中から消えない言葉たちでした。この小説が本になって存在する世界に行きたい、と強く望みました。 小説に込められた強大な熱量にねじ伏せられたかのようで、 文字に刻まれた肉体を通して、 井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。 |
##NAME## 児玉 雨子 (著) かつてジュニアアイドルの活動をしていた雪那。少年漫画の夢小説にハマり、名前を空欄のまま読んでいる。 |
エレクトリック 千葉 雅也 (著) 性のおののき、家族の軋み、世界との接続――。 |
それは誠 乗代 雄介 (著) 三島由紀夫賞、野間文芸新人賞を受賞、これまで三度芥川賞にノミネートされた、いま最も期待を集める作家の最新中編小説。修学旅行で東京を訪れた高校生たちが、コースを外れた小さな冒険を試みる。その一日の、なにげない会話や出来事から、生の輝きが浮かび上がり、えも言われぬ感動がこみ上げる名編。 |
骨灰 冲方 丁 (著) 東京の地下には地獄が眠っている。進化し続ける異才が放つ新時代のホラー。 大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。 |
極楽征夷大将軍 垣根 涼介 (著) やる気なし 動乱前夜、北条家の独裁政権が続いて、鎌倉府の信用は地に堕ちていた。 混迷する時代に、尊氏のような意志を欠いた人間が、何度も失脚の窮地に立たされながらも権力の頂点へと登り詰められたのはなぜか? |
踏切の幽霊 高野 和明 (著) 『ジェノサイド』の著者、11年ぶりの新作! マスコミには決して書けないことがある―― 都会の片隅にある踏切で撮影された、一枚の心霊写真。 1994年冬、東京・下北沢で起こった怪異の全貌を描き、読む者に慄くような感動をもたらす幽霊小説の決定版! |
香港警察東京分室 月村 了衛 (著) テロリストを追え! 圧巻の国際警察小説。 香港国家安全維持法成立以来、日本に流入する犯罪者は増加傾向にある。国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力する――インターポールの仲介で締結された「継続的捜査協力に関する覚書」のもと警視庁に設立されたのが「特殊共助係」だ。だが警察内部では各署の厄介者を集め香港側の接待役をさせるものとされ、「香港警察東京分室」と揶揄されていた。メンバーは日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名である。 【編集担当からのおすすめ情報】 |
木挽町のあだ討ち 永井 紗耶子 (著) ◆第三十六回山本周五郎賞作◆ |
【関連】
▼芥川龍之介賞|公益財団法人日本文学振興会
▼直木三十五賞|公益財団法人日本文学振興会
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