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高1男子2人がひとつの演劇を作り上げた――その衝撃の結末とは? 町屋良平さん『生きる演技』が刊行

町屋良平さん著『生きる演技』 写真:細倉真弓

町屋良平さん著『生きる演技』 写真:細倉真弓

芥川賞作家・町屋良平さんの新作長篇小説『生きる演技』が河出書房新社より刊行されました。季刊文芸誌「文藝」連載時から”まぎれもない最高傑作”と反響を呼び、発売前重版も決定した本作は、〈新しい戦前〉と言われる現代日本の高校生を主人公に、戦時下で実際に起きた「立川米軍俘虜虐殺事件」が交差する物語です。

また、刊行を記念して期間限定ためし読みを公開中です。

 

親を憎み、家族を呪い、この国が許せない「かれら」の「生きる」意味

『生きる演技』は、W不倫で実母が自殺した過去を抱えて本心を隠し続ける元「天才」子役 ×「薬物ジャンキーレイプ野郎」を両親にもつ「炎上系」俳優、高校1年生ふたりの友情と愛憎を通して「生きること」「演技をすること」「戦争」をテーマに描いた長篇小説です。

 
人が他人に見せる「私」とは何か。人はいつ、どのように人を傷つけるのか。太平洋戦争末期に東京・立川市でおきた日本の市民800人による米兵の惨殺。実在する残虐な出来事を文化祭の演劇として作り上げ上演する危うい日々のなかで、登場人物たちはさまざまな角度から「生きるとは何か?」を問い続けます。

高校の文化祭で衆目のなか「かれら」はどんな結末を迎えるのか――?
物語の圧倒的なスピードに、読者は呼吸を忘れるほどの読書体験をすることでしょう。そして、高校生たちの「生きて」いる言葉、その身体から放つ暴力への問いは、日本人がもつ戦後79年間の史実とともに、いま現代日本に生きる「わたし」に対して重くのしかかります。

 
文藝賞、芥川賞、野間文芸新人賞、三冠の作家・町屋良平さん。作家本人が「デビューから考えてきたことのすべてを込めた」と語る最新作品は、これまでの”町屋作品”の印象的な”点”が複雑な線となって新たな物語を生む、町屋ファン垂涎のギミックも必読です。

 
〈古川日出男さん、激賞!〉

「最高に読み応えがあり、かつ唯一無二の印象がある。時代のフロンティアに刺さっている。」
――古川日出男さん(朝日新聞 文芸時評)

「このラストは、きっと誰にも予想できません」
――紀伊國屋書店福岡本店 宗岡敦子さん

「この腐った世の中、自分の周りの状況、すべてが本音で、素のままの自分でいられない」
――ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん

「フィクションは現実を進ませるとともに、歴史も進ませる。フィクションのなかで、我々はすべての「場」で当事者となることをつきつけられる。」
――書肆 海と夕焼 柳沼雄太さん

 

担当編集者、感涙

本作の原稿を町屋さんからいただいた時の、のめり込むように読んだことを今も鮮明に覚えています。私は2016年のデビュー作以来、町屋さんの担当編集をしておりますが、まさにこれまでの町屋さんのすべてが詰まった作品で、かつ、こんなにも読み手の心の扉をがんがん叩いてこじ開けてくる小説を読めたことに、深い喜びと感動を覚えました。

 

『生きる演技』本文より

「でもね、言わせてもらうけどおれたちより先生とかもっと年齢いってる人たちのほうが、ずっと暴力的で差別的だよね。 大人は言いたいだけで子どもにそういう正論言うけど、正論言いたい気持ちよさって子どもだってわかってますよ。だからうまく物語にしたり、生きた経験を尊重して語り継ぐわけでしょ。それってどう考えてるの?大人はすごく役割を他人におしつけてさ、監視することが大好きで、嫉妬深いことを正当化して、女の人とか障害をもつひとや色んな立場の弱い、数の少ない人を喜んで差別して排斥するよね。それは事実でオッケー?」

 
「おまえの父親、大麻パーティーの主催者ヅラしてないね」
「おいやめろ。おまえがそんな冗談を言うようになるとは、ビックリだな」
「うちのはどう? W不倫の末に精神を病ませたパートナーを自殺に追い込み今では再婚して幸せそうな男に見える?」
「なんだそれ。見えないよ。普通というより、なんかなんの特徴もない。おれの父親のほうが、やけにニコニコしているのが顔に貼り付いていて、会うひと会うひとにコンニチハって挨拶してる、そういうある種の過剰さが見てとれるかな?」
「ウン。過去にレイプとかしてるの説得力がある。リアリティがあるよ。おれの父親に比べると、ずっとな。そのほうが、なんか安心感があるな。おれの父親のほうが、ある部分では普通です、葛藤してますみたいな顔してるのが、めちゃくちゃ醜いと思う」
「なんなの? やけ饒舌だねえ」

 

著者プロフィール

町屋良平さん 写真:平松市聖

町屋良平さん 写真:平松市聖

町屋良平(まちや・りょうへい)さんは、1983年生まれ、東京都出身。2016年『青が破れる』で第53回文藝賞を受賞しデビュー。

2019年『1R1分34秒』で第160回芥川賞、2022年『ほんのこども』で第44回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『しき』『ぼくはきっとやさしい』『愛が嫌い』『ショパンゾンビ・コンテスタント』『坂下あたると、しじょうの宇宙』『ふたりでちょうど200%』『恋の幽霊』がある。

 

生きる演技
町屋 良平 (著)

家族も友達もこの国も、みんな演技だろ――元「天才」子役と「炎上系」俳優。高1男子ふたりが、文化祭で演じた本気の舞台は、戦争の惨劇。芥川賞作家による圧巻の最高到達点。

かれはこの場のぜんぶを呪っている。
それを才能といってもいい。
そして演じるちからに変えている。

「最高に読み応えがあり、かつ唯一無二の印象がある。時代のフロンティアに刺さっている。」――古川日出男(朝日新聞文芸時評)
「間違いなく、作家・町屋良平のキーとなる作品」―山﨑修平(週刊読書人文芸時評)

本心を隠した元「天才」子役・生崎(きざき)と、空気の読めない「炎上系」俳優・笹岡(ささおか)。性格は真逆だが、同じように親を憎み、家族を呪い、そして「家族を大事に」というこの国が許せない。互いの本音を演じあうふたりはどこへ向かうのか――?
「今この国の空気」を生きるすべての人へ問う衝撃作!

「デビューから7年のすべてを投じました」――町屋良平

 
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