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【三服文学賞】応募総数2,170作品の中から平出奔さん「笑っているのがわかる」が受賞

株式会社和多屋別荘(佐賀県嬉野市)が主宰する三服文学賞の大賞ほか入賞作品が決定しました。大賞は、平出奔(ひらいで・ほん)さんの「笑っているのがわかる」です。

今年の夏には平出奔さんを招いた授賞式を実施。平出さんへのインタビューや、1年のあいだライターインレジデンス権で滞在できる客室のメディアツアーなど三服作家のこれからの活動に迫るほか、三服文学賞の裏側もお届けします。

 

三服文学賞とは

三服文学賞は、お茶と本を愉しむための書店「BOOKS&TEA 三服」を館内に開業した旅館・和多屋別荘が主宰する温泉旅館発の新しい文学賞です。

三服や嬉野温泉に関わりのある7つの事柄をテーマに文学作品を募集しました。大賞受賞者には賞金10万円と、和多屋別荘に1年間宿泊して執筆活動ができる“三服作家”としてのライターインレジデンスの権利を進呈します。

 
三服文学賞は「暮らしのなかで書く時間を愉しむ」という理念のもと創設。料理を食べる楽しみがあれば作る楽しみもあるように、文学にも読む楽しみがあれば、書く楽しみがあっていいという思いで、普段なかなか文章を書く機会がない方、嬉野温泉や三服に訪れたことがない方、プロアマ問わず、全国から広く作品を募りました。

★三服文学賞 公式サイト:https://wataya.co.jp/sanpuku_bungakusyo/

 

「三服文学賞」受賞作品

 
■大賞
平出奔さん「笑っているのがわかる」

 
●副島園賞
せとうちひかるさん「朝霧の中で」

●8cacao賞
イトウマさん「輪郭に水音」

◆日本香堂賞
雨宮紫霞さん「水出しの茶と、当たり前の明日」

◆Made in ピエール・エルメ賞
吉岡幸一さん「月の文字」

◆嬉野八十八賞
磯部まきさん「五・七・五の風景」

◆選考委員賞
〔染谷拓郎さん 推薦〕さとうきいろさん「わたくしは誰かの日記を300円で買う」
〔深井航さん 推薦〕 武富伊万里さん「私の好きな事」
〔宮脇亜矢さん 推薦〕北木鉄さん「耳はていねいに洗う」

 

審査委員 総評&コメント

 
【総評】

応募総数2,170作品と予想をはるかに上回り、老若男女問わずさまざまな作品が国内外から寄せられました。「暮らしのなかで書く時間を愉しむ」という賞の理念通り、初めて筆をとった方から商業レベルの方までひろくご参加いただきました。どの作品からも書くことの愉しみがにじみ出て、伝わってくることを嬉しく思います。また、愉しみだけでなく書くことはこれだけ多くの方の生きる支えになっているのだと審査を通じて実感しました。第一回からこのように大きく盛り上げていただき、ご参加いただいた皆様には深く感謝を申し上げます。

 
<大賞作品について>

◆選考委員長・小原嘉元(こはら・よしもと)さん
軽快な会話劇のなかに古典を活用した構成の妙もあり、物語の世界に引き込む力を感じます。文章から感じとれる電車内での会話の間や同僚が怖いという吐露に、いまの時代を生きる人間の確信のない解に揺れ動くさまが鮮やかに表されており、共感しました。だからこそ紆余曲折を経て辿り着いた「旅行しましょう」という誘いの言葉が一層印象深く残ります。

◆染谷拓郎さん(株式会社ひらく プロデューサー)
それまで意識していなかったことが、会話の中でふっと息を吐くように出現して初めて自分の思考に気づくことがあります。また、この短い文章のなかに「おれ」と「荒山さん」の”これまで”が染み出して想像でき、作者の文章力の高さを感じます。ふたりの”これから”も読んでみたいです。

◆深井航さん(株式会社ひらく ブックディレクター)
見えない何かが目の前の当たり前を動かしていることへの漠然とした恐怖など若い感性が文学的情感をもって表現されていると感じました。構成の面でも、導入の古典落語が単なる引用に留まらず、現代という時間軸を意識する装置として作品の時代性をより立体的に浮かび上がらせています。なにより都会を走る電車の中から生まれた「旅」という風景のジャンプが、「見えないものは怖い」という価値観から「見えないのに笑っている」という逆転に接続している点が見事です。

◆宮脇亜矢さん(日本出版販売株式会社 ブックカウンセラー)
怖いものを伝えることは、多少なりとも勇気のいることです。自分の在り方、根幹にかかわる大切なことを吐露した後の、「ねえ、今度一緒に旅行しましょうよ。」という唐突さ。軽快な会話に見えますが、瀬口さんの怖さを荒山さんがやすやすと飛び越えた瞬間を捉えているところ、これまで自他ともに表情を気にしていた瀬口さんが自然と笑うという締め方に希望を感じました。

 
なお、その他の受賞作品を含めた各作品および選評コメントは、https://wataya.co.jp/topics/2023/05/7195 にて公開されています。

 
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