「人々は互いに分かり合えない」齋藤純一さん×谷澤正嗣さん『公共哲学入門』が刊行
齋藤純一さん・谷澤正嗣さん著『公共哲学入門 自由と複数性のある社会のために』がNHK出版より刊行されました。
「人々は互いに分かり合えない」ことを前提にして、それでも同じ空間に共に生きていくための“考え方の教科書”
2022年、高校の社会科から「現代社会」の科目が消え、代わりに創設されたのが「公共」です。「公共の福祉」などで知られた言葉ですが、その内実は何か? そしてなぜ、10代の子どもたちがそれを学ばないといけないのか?
「公共」の原型は、大学や大学院で講じられてきた「公共哲学」にります。「公共哲学」は、いかに人々の協働を組み立てるか、その協働のあり方がどのようなものであれば人々に受け入れられるのかを探求してきました。
本書は、個人や特定の団体の力によっては対処できない問題を考えようとしてきた思想家・哲学者の議論の要点を網羅し、議論の土台を提供するものです。
著者はこの分野で日本をリードしてきた早稲田大学政治経済学部長の齋藤純一さんと、齋藤さんと共に藤原保信ゼミで研鑽を積んだ同大政治経済学部准教授の谷澤正嗣さん。歴史にも詳しいアーレントの専門家と、現代政治理論に造詣が深いロールズの専門家がタッグを組んだ、これ以上ないというコンビです。
哲学の最高峰と言われるカントが公共哲学の出発点であることの説明に始まり、デューイやリップマンなどの源流、アーレントやハーバーマスなど定番を解説、功利主義、ロールズのリベラリズム、リバタリアニズムの議論を経て、デモクラシーの利点と難点をフラットに論じます。
さらには不平等の問題、フェミニズムからの批判にも応え、グローバル・イシューと呼ばれる大規模な問題へも思考を及ぼす。誰もが問題の当事者となり、同時にその改善の担い手となりうる時代の、社会にかかわるときの“考え方大全”を効率よく学べる一冊です。
大学・大学院の「公共哲学」や高校の「公共」の、究極の虎の巻ともいえる本書。大学の「政治経済学部」や「公共政策大学院」のテキストとしても活用できるよう、全13章構成となっています。
本書の構成
第一章 公共哲学は何を問うのか
第二章 公共哲学の歴史Ⅰ
第三章 公共哲学の歴史Ⅱ
第四章 功利主義の公共哲学
第五章 リベラリズムの公共哲学
第六章 リバタリアニズムの公共哲学
第七章 ケイパビリティ・アプローチの公共哲学
第八章 平等論と公共哲学
第九章 社会保障の公共哲学
第十章 デモクラシーの公共哲学Ⅰ
第十一章 デモクラシーの公共哲学Ⅱ
第十二章 フェミニズムの公共哲学
第十三章 国際社会における公共哲学
著者プロフィール
■齋藤純一(さいとう・じゅんいち)さん
1958年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学政治経済学術院教授。専門は政治理論。
著書に『公共性』『自由』『政治と複数性──民主的な公共性にむけて』(以上、岩波書店)、『不平等を考える──政治理論入門』(ちくま新書)、共著に『ジョン・ロールズ──社会正義の探究者』(中公新書)など。
■谷澤正嗣 (やざわ・まさし)さん
1967年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。現在、早稲田大学政治経済学術院准教授。専門はロールズ、現代政治理論。
共編著に『悪と正義の政治理論』(ナカニシヤ出版)、分担執筆に『現代政治理論』(有斐閣)、『憲法と政治思想の対話』(新評論)など。
公共哲学入門: 自由と複数性のある社会のために (NHKブックス) 齋藤 純一 (著), 谷澤 正嗣 (著) わかりあえない他者と生きる思考法 多様性よりも「複数性」を、そして何よりも人間の「平等な自由」を実現するために――。カントに始まり、功利主義、ロールズ、リバタリアニズムなど定番の要点をしっかり押さえたうえで、デモクラシーの価値を根底から問い直す。「今だけ・自分だけ」の発想を乗り越えて、政治的意思の違いを互いに解消することなく、共に生きていく視点を身につける「新しい教科書」! |
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