「多様なのが普通」って、こういうことなのか! 『ヘルシンキ 生活の練習はつづく』が刊行
『ヘルシンキ 生活の練習』の続編、朴沙羅さん著『ヘルシンキ 生活の練習はつづく』が筑摩書房より刊行されました。
ガチ多様性。
本書は、ふたりの子どもと北欧へ渡った社会学者による、現地レポートです。「考え方が変わる」と大反響の『ヘルシンキ 生活の練習』の続編となります。
【本書の内容】
一日八時間労働だったら、三時間ちょっと、ぼんやりしてください――健康診断の看護師さん
自分のホームはフィンランドだと思って、ここに根づいてほしい――ゲオルギー
母ちゃんは戦争になったら、ユキとクマをすぐ日本に連れていってくれる?――ユキ
ここでどんなにたくさんのことを教わったか、みんながどれだけよく僕をお世話してくれたか、僕は言葉では言えない――クマ
日本ではどうも、おじいさんが偉くなるルールがあるっぽいな――ユキ
言葉で世界があんねん――ユキ
みんしゅしゅぎのくにでは、みんながいやだといったら、せんそうが続けられない――クマ
……ほか
第一章「大人と働く──燃え尽き防止策」より
通勤の地下鉄の中でうっかりゲームをしてしまったり、眠たいのにインターネットで漫画を読んでしまったり、SNSをぼんやりと眺めてしまったりしたあとは、だいたい後悔する。そういう時間がなければ、もっと生産的に過ごせるはずなのに、と思う。だから、そういう気持ちを答えた。すると、看護師さんは怪訝な顔をして「七〇パーセント以上頑張ったら、およそあらゆる仕事の人が、四〇代のうちに肉体的にか精神的にかわかりませんが、燃え尽きます。だから七〇パーセントでもやりすぎなくらいです。六〇パーセントに減らしてください」と言った。
お前は何を言っているんだ。
そこで私が「仕事に割くエネルギーを六〇パーセントにして、例えば家庭生活などに割くエネルギーを四〇パーセントにしなさいってことですか?」と質問したら、今度は、
「そうじゃなくて、仕事も家事も六〇パーセント以下にしてくださいってことです。やらなくちゃいけないことにがんばる時間を減らして、一日八時間労働だったらそのうち四割、つまり三時間ちょっと、ぼんやりしてください。同僚とお茶するとか、窓の外を見て「鳥がいるなー」とか! 健康のために何もしないで!」
と叱られた。
本気かいな。意味がわからないよ。労働時間のうち四割はぼーっとするなんて、できるんだろうか? そんなことしたら仕事も何も回らないくない? いや、意外と回るのかもしれない。回ったら怖いな……。っていうか、鳥?
本書の構成
はじめに
1 大人と働く
2 戦争と平和(前編)
3 戦争と平和(後編)
4 特殊なのは誰か
5 見えないルール
6 エリライシアが普通
7 みんなのための善いこと
おわりに
注
著者プロフィール
朴沙羅(ぱく・さら)さんは、1984年生まれ、京都出身。専攻は社会学(ナショナリズム研究)。ヘルシンキ大学文学部文化学科講師。
著作に『ヘルシンキ 生活の練習』『家(チベ)の歴史を書く』(ちくま文庫)、『外国人をつくりだす』(ナカニシヤ出版)など。
ヘルシンキ 生活の練習はつづく 朴 沙羅 (著) 装丁・装画・本文設計:寄藤文平+垣内晴(文平銀座) |
<既刊>
ヘルシンキ 生活の練習 (ちくま文庫) 朴 沙羅 (著) フィンランドの子育てに、目からうろこ。 【内容紹介】 「フィンランド(に限らず、北欧)は理想郷のように描かれるときがある。かと思うと、そんなことはないのだ、これがフィンランド(と北欧)の真実だ、と悪い情報を流す言説を見ることもある。 解説 坂上香 |
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