私たちの先入観は見事に打ち砕かれる! 人類をはるかに凌駕する、目も眩むような生物たちの生殖の事実『生物と性 神秘の最適化戦略』が刊行
人類をはるかに凌駕する、目も眩むような生物たちの生殖の事実に迫る『生物と性 神秘の最適化戦略』(著:エマニュエル・プイドバさん、イラスト:ジュリー・テッラッォーニさん、訳:西岡恒男さん)が求龍堂より刊行されました。
4億年以上前から生物の生殖器は「最適化」を目指し、進化し続けてきた
太古より、水・陸に関わらず、生物にとっての最も大きな課題は、厳しい環境変化のなかでどうやって自らが種の保存を達成するかでした。
現存する生物はその激戦を勝ち残ってきた子孫ということになります。生き残りを賭けた術は、さまざまな問題に阻まれる度に改良されていきました。その改良方法はまさに千差万別で、その多様性に驚くばかりです。
本書の「はじめに」では、膨大な時間をかけて行われてきた、無数の生物の最適化戦略の全容をわかりやすく解説。まずはここを準備体操とし、生物と性の扉が開かれていきます。
思いつく限りの創意工夫が凝らされた、生殖器の多様性とその戦略
本書ではワニやダチョウ、カメレオン、ハリモグラ、ゾウ、ナメクジなど(果てはシラミまで!)、32種類の生物の生殖活動とオスの生殖器を紹介しています。
各生物は色彩豊かな水彩画と繊細な鉛筆画などが添えられ、美しさを堪能できます。
しかし、と言うべきか、生物の大小に関わらず、その生殖の物語は驚きの連続です。ふたつのペニス、先端が4つあるもの、自在に動き時には物を掴むもの、トゲだらけのもの、歌うもの(!)など、困難に適応するために辿り着いた形や大きさ、生殖方法には圧倒されるばかりです。
彼らの戦略と飽くなき情熱を前には、ヒトの営みはきわめて平凡なものに感じられるのは間違いありません。
快楽を求める生物のさまざまな生き方
本書では、生物たちの快楽のための性行為や同性愛、タブーのない解放された性を生きる例も紹介します。なかには共生し種を保つために、性別や体の大きさを変えることができるものも登場します。
私たちがこれまでぼんやりと常識として捉えていたことを覆す事実が伝えてくるのは、私たち人類は大河のほんの一滴でしかないということです。
「性の多様性」は人類誕生よりずっと前から存在しており、生きものはその性を多様化しながら、困難に対し並外れた適応を行ってきました。それは神秘的であり、同時に生存に対する最適化戦略の成功よって成しえたことです。ゆりかごである地球環境に抗うことなく生きてきた彼らへの尊敬と愛情を育むきっかけとなる一冊です。
編集者より
生物たちのあくなき挑戦と内容に驚愕しつつも、その必死な姿と懲りない性格(オスの)がどこかコミカルに思えてきます。小さなものも大きなものも、すべてが全力でダイナミックに生きていることに感動します。イラストの美しさも必見。オスの生殖器ももはや植物ではというものもあり、造形的な個性と美しさに感心します。
本書の構成
はじめに
Ⅰ 形と大きさの計り知れない多様性
イリエワニ ― 溝がついたペニス
ダチョウ ― 鳥類全体の3%に入る珍しい鳥
ヨーロッパクサリヘビ ― ペニスがふたつある!
コノハカメレオン ― 小さいけど装備は万全!
ハリモグラ ― 4つの先端部をもつペニス!
オカヤドカリ ― 家あればこそ(ペニスが長くなった)!
II できるだけ近づいてメスの生殖器を探りあてる。
マレーバク ― 自在に動くペニス!
アフリカゾウ ― 第二の鼻
アオイガイ ― ペニスを取り外す!
マガモ ― らせん状の荒ぶるペニス
マダラコウラナメクジ ― 交尾後のペニスが犠牲を強いられる!
III ナンパを邪魔する。
ジョロウグモ ― オスが究極の犠牲を払う
オスミツバチ ― 女王バチに栓をする
チリメンウミウシ ― 戦うペニス!
イトトンボ ― ライバルの精子を追い出す!
ナナフシ ― メスを独占して快感を引き延ばす!
IV 受精を最適化するためにしがみつく、貫く。
セイウチ ― 世界最長の陰茎骨!
ファロステサス・クーロン ― 下顎のようなペニス!
ヨツモンマメゾウムシ ― トゲだらけのペニス!
ロンドコビトガラゴ ― トゲをもった「V」字型のペニス!
トコジラミ ― メスにペニスを突き刺す!
トリカヘチャタテ ― メスが反撃する!
Ⅴ コミュニケーションする。脅す、呼び寄せる、だます!
ケヅメリクガメ ― 巨大なペニスで脅す!
チビミズムシ ― ペニスで歌う!
シュントナルカ・イリアスティス ― ペニスが欺く!
フォッサ ― トゲのあるクリトリスで威嚇する!
VI 快感を味わう! 生殖なき奔放な性
ケープアラゲジリス ― マスターベーションが役に立つ
コバナフルーツコウモリ ― フェラチオとクンニリングス
バンドウイルカ ― 同性愛を生きるオス
ボノボ ― タブーなき解放された性
カクレクマノミ ― 性別と体の大きさを変える!
ドブネズミ ― 「超音波」のオーガズム
終わりに
著者プロフィール
■エマニュエル・プイドバ(Emmanuelle Pouydebat)さん
フランス国立科学研究センターおよび国立自然史博物館の研究主任。動物の行動生態・進化を専門分野として研究しており、サル、ゾウ、肉食動物、鳥類、節足動物といった生物を対象とした学際的なプロジェクトを数多く組織している。フランス国立科学研究センター銀賞など受賞多数。
著作『Atlas de zoologie poetique(図解 詩的生物学)』(アルトー社、2018、未邦訳)、『鳥頭なんて誰が言った? :動物の「知能」にかんする大いなる誤解』(早川書房、2019)をはじめ、数々のエッセイが大きな反響を呼んでいる。
■ジュリー・テラゾーニ(Julie Terrazzoni)さん
イラストレーター兼美術教員。伝統的な技法や自然への関心から植物学や動物学に造詣が深く、対象への独特のヴィジョンを、伝統的な技法やクラシックな表現と融合させた作品を得意とする。
エマニュエル・プイドバさんの著作『図解 詩的生物学』にもイラストを提供している。
生物と性 神秘の最適化戦略 エマニュエル・プイドバ (著), ジュリー・テラゾーニ (イラスト), 西岡恒男 (株式会社フレーズクレーズ) (翻訳) 私たちの先入観は打ち砕かれる。 40億年前から始まった、途切れることなく続く生物の生存競争は、生殖のための無数の戦略物語を生みだした。 |
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