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【第43回石橋湛山賞】筒井清輝さん『人権と国家』と千々和泰明さん『戦争はいかに終結したか』が受賞

第43回石橋湛山賞が決定!

第43回石橋湛山賞が決定!

石橋湛山記念財団が主宰する第43回(2022年度)石橋湛山賞の受賞作が発表されました。

 

第43回石橋湛山賞が決定!

第43回石橋湛山賞は、全国の有識者から推薦された40余の著作・論文の中から、次の通り決定しました。

 
<第43回石橋湛山賞 受賞作品>

◎筒井清輝(つつい・きよてる)さん
『人権と国家――理念の力と国際政治の現実』(岩波新書)

◎千々和泰明(ちぢわ・やすあき)さん
『戦争はいかに終結したか――二度の大戦からベトナム、イラクまで』(中公新書)

 
筒井清輝さんの『人権と国家』は、人類普遍の理念としての「人権」の確立を歴史的に解明しています。他国の内政に干渉してまで普遍的人権を守るべきだとする規範の確立について、奴隷貿易撤廃運動から世界人権宣言、国連人権委員会や人権NGOの活動など、具体的な例を引きながら、体系的に分析しています。国際的に人権外交の重要性が増すとともに、国内的にも人権への配慮が求められる現在、日本の「人権力」の強化が今日的課題だとしています。

 
一方、千々和泰明さんの『戦争はいかに終結したか』は、第1次、2次世界大戦からベトナム、イラク戦争までの歴史的事例研究を通して、戦争終結の形をパターン化し考察した、ユニークな書です。「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスの中で、優勢な勢力が「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のどちらを選択するかで、さまざまな戦争終結の形がありうるとします。戦争がなぜ始まったかの研究は多いが、戦争の終わらせ方、出口を論じたものは少なく、日本の安全保障を考える上で有意義な書として評価されました。

 
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって、世界は新たな安全保障と人権の危機にさらされています。両書はウクライナ侵攻以前に上梓された著作ですが、現在の状況を考える上でも、示唆するところが多く、その点からも高く評価され、同時授賞となりました。

 
なお、授賞式は11月21日(月)14時より東洋経済ビル 9階 経済倶楽部ホール(東京都中央区日本橋本石町 1-2-1)にて開催。

 

受賞者プロフィール

 
■筒井清輝(つつい・きよてる)さん

1971年生まれ、東京都出身。1993年京都大学文学部卒業。2002年社会学博士(スタンフォード大学)。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校助教授、ミシガン大学社会学部教授等を経て、現在スタンフォード大学社会学部教授。同大ジャパン・プログラム所長、人権・国際正義センター所長。東京財団政策研究所研究主幹。

主な著書にRights Make Might: Global Human Rights and Minority Social Movements in Japan. Oxford University Press, 2018. Corporate Social Responsibility in a Globalizing World. Cambridge University Press,2015.(共編著)。The Courteous Power:Japan and Southeast Asia in the Indo-Pacific Era. University of Michigan Press,2021. (共編著)がある。

 
■千々和泰明(ちぢわ・やすあき)さん

1978年生まれ、福岡県出身。2001年広島大学法学部卒業。2007年大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て、現在防衛省防衛研究所戦史研究センター安全保障政策史研究室主任研究官。

主な著書に『大使たちの戦後日米関係―その役割をめぐる比較外交論 1952-2008年』(ミネルヴァ書房、2012年)、『変わりゆく内閣安全保障機構―日本版NSC成立への道』(原書房、2015年)、『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010―「基盤的防衛力構想」の時代』(千倉書房、2021年、第7回日本防衛学会猪木正道賞正賞)、『戦後日本の安全保障―日米同盟、憲法9条からNSCまで』(中公新書、2022年)がある。

 

石橋湛山賞について

石橋湛山賞は、石橋湛山記念財団が東洋経済新報社の元主幹で内閣総理大臣も務めた石橋湛山(いしばし・たんざん)を記念して、1980年に創設。東洋経済新報社と経済倶楽部が後援。

政治経済・国際関係・社会・文化などの領域で、その年度に発表された論文・著書の中から、石橋湛山の自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作に贈られてます。

政界・経済界・学界・マスコミ関係者から寄せられた推薦論文・著書をもとに、財団理事・評議員による選考委員会が授賞候補を数点~十数点に絞ります。この中から最終選考委員の奥村洋彦さん(学習院大学名誉教授)、田中秀征さん(福山大学客員教授)、加藤丈夫さん(前国立公文書館館長)、柴生田晴四さん(経済倶楽部理事長)、山縣裕一郎さん(東洋経済新報社 代表取締役会長)各氏の合議を経て、最終選考委員会の場で決定します。

 

人権と国家: 理念の力と国際政治の現実 (岩波新書)
筒井 清輝 (著)

今や政府・企業・組織・個人のどのレベルでも必要とされるSDGsの要・普遍的人権の理念や制度の誕生と発展をたどり、内政干渉を嫌う国家が自らの権力を制約する人権システムの発展を許した国際政治のパラドックスを解く。冷戦体制崩壊後、今日までの国際人権の実効性を吟味し、日本の人権外交・教育の質を世界標準から問う。

戦争はいかに終結したか-二度の大戦からベトナム、イラクまで (中公新書)
千々和 泰明 (著)

第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない――戦争の抑止を追求してきた戦後日本。しかし先の戦争での日本の過ちは終戦政策の失敗にもあった。戦争はいかに収拾できるのだろうか。第一次世界大戦、第二次世界大戦から戦後の朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに近年の湾岸戦争やイラク戦争まで20世紀以降の主要な戦争の終結過程を分析。「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、あるべき出口戦略を考える。

 
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