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【第44回石橋湛山賞】三浦まりさん『さらば、男性政治』とケネス・盛・マッケルウェインさん『日本国憲法の普遍と特異』が受賞

石橋湛山記念財団が主宰する第44回(2023年度)石橋湛山賞の受賞作が発表されました。

 

第44回石橋湛山賞が決定!

第44回石橋湛山賞は、全国の有識者から推薦された多くの著の中から、次の通り決定しました。

 
<第44回石橋湛山賞 受賞作品>

◎三浦まり(みうら・まり)さん
『さらば、男性政治』(岩波新書)

◎ケネス・盛・マッケルウェイン(Kenneth Mori McElwain)さん
『日本国憲法の普遍と特異――その軌跡と定量的考察』(千倉書房)

 
三浦まりさんの『さらば、男性政治』は、豊富な事例とデータによって、ジェンダー後進国日本の「男性ばかりの政治」の歴史と実態を明らかにしています。ジェンダー不平等がもっとも顕著なのが政治の世界であり、多くの女性候補者が、さらには女性議員が輩出することが必要だとします。

三浦さんは「市民と政党の新しい関係性の中核にジェンダー平等と多様性を据えることが、男性政治を打破する鍵となる」と主張、具体的な打開策としてクオータ制の導入を提案しています。ジェンダーと政治について考えるための啓蒙書として評価されました。

また、石橋湛山は戦前、市川房枝さんと共に「婦人経済会」を組織し、女性の政治的・経済的地位の向上のための支援を惜しみませんでした。その意味からも本書は石橋湛山賞にふさわしいといえます。

 
一方、『日本国憲法の普遍と特異』は、世界各国900の成文憲法データベースを計量政治学の手法で分析、日本国憲法と比較した研究書です。日本国憲法だけが、なぜ75年もの間、変わらないのか。他の憲法と比して、統治機構や制度を、過度に法律に委ねているため、改正の必要性が構造的に低い。小選挙区制や、選挙運動への規制等を憲法を変えることなく、法律で変えることができる点が、政治アクターの恣意的な操作を呼び、民主主義にとって大きな問題だと指摘します。ケネス・盛・マッケルウェインさんは選挙制度に最高裁が介入できる根拠と権限を付与することによって、この問題を解決すべきだとします。

計量政治学による分析手法の斬新さとその問題提起は憲法改正論議にも一石を投じるものと思われ、有意義な研究書として評価されました。

 
なお、授賞式は11月9日(木)15時30分より東洋経済ビル 9階 経済倶楽部ホール(東京都中央区日本橋本石町 1-2-1)にて開催。

 

受賞者プロフィール

 
■三浦まり(みうら・まり)さん

上智大学法学部教授。1967年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業、カリフォルニア大学バークレー校大学院修了。Ph.D.(政治学)。2021年フランス政府より国家功労勲章シュバリエ受章。専攻は現代日本政治論、ジェンダーと政治。

著書に『私たちの声を議会へ:代表制民主主義の再生』(岩波書店、2015年)、『社会への投資〈個人〉を支える〈つながり〉を築く』(編集、岩波書店、2018年)、『日本の女性議員――どうすれば増えるのか』(編集、朝日新聞出版、2018年)、『女性の参画が政治を変える――候補者均等法の活かし方』(共編、信山社、2020年)、「日本政治の第一歩』(共編、有斐閣、2018年)、『ジェンダー・クオータ――世界の女性議員はなぜ増えたのか』(共編、明石書店、2014年)、『政治って、面白い! : 女性政治家24人が語る仕事のリアル』(編著、花伝社2023年)などがある。

 
■ケネス・盛・マッケルウェイン(Kenneth Mori McElwain)さん

東京大学社会科学研究所教授。1977年、日本生まれ、アイルランド国籍。プリンストン大学卒業。スタンフォード大学大学院政治学博士課程修了(Ph.D.)。ハーバード大学日米関係プログラム研究員、ミシガン大学助教授などを経て、2015年から現職。専門は憲法の制度設計、選挙法、比較政治制度、政党政治。平成28 年度東京大学卓越研究員。Social Science Japan Journal編集委員長。

主要論稿に“The Proposer or the Proposal? An Experimental Analysis of Constitutional Beliefs”, Japanese Journal of Political Science 22(1), 2021 (with Shusei Eshima and Christian G. Winkler); “The Japanese Constitution”,In The Oxford Handbook of Japanese Politics, edited by Robert J. Pekkanen and Saadia M. Pekkanen, Oxford University Press, 2021; “Manipulating Electoral Rules to Manufacture Single-Party Dominance”, American Journal of Political Science 52(2), 2008; “What’s Unique about Japan’s Constitution? A Comparative and Historical Analysis”, (with Christian Winkler) Journal of Japanese Studies, 41(2), 2015.などがある。

 

石橋湛山賞について

石橋湛山賞は、石橋湛山記念財団が東洋経済新報社の元主幹で内閣総理大臣も務めた石橋湛山(いしばし・たんざん)を記念して、1980年に創設。東洋経済新報社と経済倶楽部が後援。

政治経済・国際関係・社会・文化などの領域で、その年度に発表された論文・著書の中から、石橋湛山の自由主義・民主主義・国際平和主義の思想の継承・発展に、最も貢献したと考えられる著作に贈られてます。

政界・経済界・学界・マスコミ関係者から寄せられた推薦論文・著書をもとに、財団理事・評議員による選考委員会が授賞候補を数点~十数点に絞ります。この中から最終選考委員の田中秀征さん(福山大学客員教授)、加藤丈夫さん(前国立公文書館館長)、山縣裕一郎さん(経済倶楽部理事長)、駒橋憲一さん(東洋経済新報社 取締役会長)各氏の合議を経て、最終選考委員会の場で決定します。

 

さらば,男性政治 (岩波新書)
三浦 まり (著)

性政治とは、男性だけで営まれ、男性だけが迎え入れられ、それを当然だと感じ、たまに女性の参入が認められても対等には扱われない政治である。ジェンダー平等な社会を目指す推進力が生まれているが、男性政治の最後の砦、永田町がその流れを阻んでいる。こうした日本の現実を超えて、女性も、男性も、マイノリティも、誰もが生きやすい社会への道を探る。

日本国憲法の普遍と特異 :その軌跡と定量的考察
ケネス・盛・マッケルウェイン (著)

75年間、一文字も変わらない世界でも希な憲法典。そのことにどのような意味があるのか、そこに問題はないのか、各国憲法との定量的比較により検証する。【2022年10月 第34回「アジア・太平洋賞 特別賞受賞」】

 


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