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ヤクザ×政界×GHQ――今だからこそ暴かれる戦後日本の「闇」!長浦京さん『プリンシパル』が刊行

長浦京さん著『プリンシパル』

長浦京さん著『プリンシパル』

長浦京さんが描く超弩級の犯罪巨篇『プリンシパル』が新潮社より刊行されました。

 

怒涛の活劇と衝撃の真実に震撼する、著者集大成にして超弩級の犯罪巨篇

2011年に『赤刃』で第6回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。2017年の『リボルバー・リリー』では、関東大震災後の東京を舞台に、元諜報員の女と帝国陸軍1000人の死闘を描き、デビュー2作目にして第19回大藪春彦賞を受賞。一躍ハードボイルド・冒険小説の旗手として注目を集めた長浦京さん。

その後も快進撃は止まらず、2019年に第3作目の『マーダーズ』で第73回推理作家協会賞候補選出。そして、2020年の第4作目『アンダードッグス』で第164回直木賞にノミネートされるなど、業界でいま、最もさらなる大活躍が期待される作家のひとりでもあります。

そんな長浦さんがデビュー10周年を迎えたいま、その集大成とでもいうべき、渾身の超大作『プリンシパル』が新潮社より刊行されました。

 
<『プリンシパル』あらすじ>

1945年、東京。関東最大級の暴力組織、四代目水嶽(みたけ)本家。その一人娘である綾女(あやめ)は、終戦と父の死により、突如、正統後継者の兄たちが戦地から帰還するまで「代行」役となることを余儀なくされる。

懐柔と癒着を謀る大物議員の陥穽。利権と覇権を狙うGHQの暗躍。勢力拡大を目論む極道者たちの瘴気……。幾多の謀略を経て、次第に権力と暴力の魔力に魅せられていく綾女。そして、鮮血に彩られた闘争の遍歴は、やがて、戦後日本の闇をも呑み込む、漆黒のクライマックスへと突き進み……。

『リボルバー・リリー』(大藪賞受賞)、『アンダードッグス』(直木賞候補)を凌ぐ衝撃! 国産クライムサスペンスの極北へ――。

 

著者インタビューを公開

 
◆いまなぜ、「戦後」なのか。

終戦直後の東京。大物極道の一人娘・綾女を主人公に、混迷極まる戦後での生き残りをかけ、GHQや当時の政財界をも巻き込んだ大迫力の活劇が展開される本作ですが、過去にも混沌の時代と極限状態における人間心理を描いてきた長浦さんは、なぜ今回「戦後」を舞台に選んだのでしょうか。

 
長浦さん:もう出尽くしたようにも感じられる戦後史ですが、これまで語られることのなかった事実も、終戦から長い月日を経たことで、ようやく表に出てきつつあります。

例えば、GHQの統治能力の問題や日本人への搾取の実態。復興に尽力した英雄として語られがちな政治家や官僚の多くも、実際はアメリカ傀儡に過ぎなかったこと。また、ヤミ市での暴利に代表される暴力団は、終戦直後の混乱期においては市民生活の維持に重要な役割を果たしたこと。加えて、終戦の直前・直後に大量の化学兵器が河川などに不法投棄されていた実態や、朝鮮戦争で極秘裏に日本人が強制的に参加させられていた事実などもテレビのドキュメンタリーやノンフィクションで明らかにされてきました。

しかし、そうした新説は過去の定説と離れているものも多いことから、これまで小説で描かれることは、ほとんどなかった。であれば、終戦から七十七年経った「いま」こそ、皆が避けてきた「史実」を極力愚直に描くことで、新たな「戦後」像をも提示することができると考えたのです。実際、実名では登場させるのが難しい日本人政治家や政党名を偽名としたことで、逆にアップデートされた新史実は曲げることなく作品に取り込むことができました、さらにそこへ「活劇」という要素を加えることで、暴力に支えられた政治とヤクザの関係を、より正確に捉えることもできた。フィクションかつエンターテイメントでありながらも、ノンフィクションに限りなく近い「真実」を描けた、と自分では思っています。

 
◆そして、強烈な時代背景や極限状態を通じて描きたかった、人間心理とは。

長浦さん:「慈しみや使命感は、時に人を凶気に駆り立てる」。これまでも、人を思いやる気持ちが強い人ほど背負ってしまう苦しみや狂気を作品で描いてきましたが、そろそろこのテーマに正面から向き合うべきではないかと決意しました。

主人公のような極道の家に育った者でなくとも、いわゆる「毒親」に育てられ、苦しんでいる人は大勢いる。僕自身、「毒親」を持つ知り合いの話を聞いたこともありますが、そうした人たちは「良かれと思って」教え込まれた親の歪んだ価値観に、大人になってからも苦しめられ、いまも「死んだ両親の声が耳の後ろに貼りついている」といいます。では、もしも死者の言葉を振り切れないまま生きてしまったとしたら、人は最終的にどこへ行き着いてしまうのか。その結末を安易な希望に着地させずに、とことん書ききることができた。それは自身の暗部や怒りと向き合うことでもあり、非常に辛く苦しい作業でした。

実際今作の連載終了後から単行本に向けての改稿にかけた期間は、これまでで最長。でも、そのぶん「最高到達点」といえる作品になったと思っています。

 

著者プロフィール

著者の長浦京(ながうら・きょう)さんは、1967年生まれ。埼玉県出身。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。

その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、2017年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞、2019年『マーダーズ』で第2回細谷正充賞を受賞。2021年『アンダードッグス』で第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞候補となる。ほかの著作に『アキレウスの背中』などがある。

 

プリンシパル
長浦 京 (著)

 


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