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最果タヒさん詩集『さっきまでは薔薇だったぼく』が刊行 「合わせ鏡の詩」「激流」を全文公開

最果タヒさん著『さっきまでは薔薇だったぼく』

最果タヒさんの最新詩集『さっきまでは薔薇だったぼく』

詩人・最果タヒさんの最新詩集『さっきまでは薔薇だったぼく』が小学館より刊行されました。

 

詩という言葉の連なりが、社会や世界とのつながりを紡ぎ出す

詩という言葉の連なりが、社会や世界とのつながりを紡ぎ出す―― 斬新な日本語が心に沁みる、最果タヒさんの新詩集が発売されました。

「冬の薔薇」「指」「惑星」「生理詩」「猫戦争」「才能」「飛ぶ教室」「ぼくたちの屍」「人で無し」「春の薔薇」――それぞれの詩のタイトルが、すでに「詩」になっているようです。

 
言葉との新たな出会いが生まれる話題作から「合わせ鏡の詩」と「激流」を以下に紹介します。

 
≪生きるたびに削れていく命が降り積もって、
白い雪の道、月の光が反射して、ある朝それは鏡に変わる、
ぼくの人生をきみが、覗き込んでも、きみのことしか見えないから、
ぼくが誰であろうと、きみには、きみしか見えないから、
きみは、ぼくにだって恋をする。
愛されたことがないから、愛せないなんて、ありえない。
愛しているよ、ぼくは、きみを。≫
(本書「合わせ鏡の詩」より)

 
≪死を逃れ逃れ、命を、泳ぎ切って残るは
無数の誰かの手の跡ではなく無数の桜のはなびらで

一度も好きでなかった花に囲まれて死ぬ
一度も好きでなかった花に囲まれて死ぬ

「故人は優しい人でした」
私の好きな色は白でも黒でもない
でも冬は好きでした
誰も話を聞いていない
私だけが知っている桜の木々よ さようなら≫
(本書「激流」より)

 

本書「あとがき」より

≪この時代に詩でどのようなことができると思いますか、と聞かれることがあり、私はその度に、詩が持つ「言葉の揺らぎ」だけが捉える「心の揺らぎ」について話していたけれど、それは今もそうだ、と思いながら、多分あの問いは、詩にできること、ではなく、心そのものにできることについて聞いていたのではと今は思う。私たちはこの時代に、この心で、どのようなことができると思いますか。傷つく人のことを考えてしまう、痛くて苦しいと思う人が少しでも減るならそれがいいと思う、目の前で誰か倒れたら心配で、できることなら手を差し出したい、その手を受け取ってほしいと、傲慢かもしれないが願ってしまう、誰かのためにと思いながらその人のためにやることが時に短絡的で、不要かもしれない手を差し出したあとで、不意に自分の未熟さに気づき、恥じていた。どうすれば、と思いながら、その「どうすれば」という思いも、前提が間違っている気がして不安だ。≫

 

本書の目次

冬の薔薇
恋は無駄死に

惑星
午前
氷の子

me and you
すべり台
満開
生理詩
repeat
晴れ
合わせ鏡の詩
激流
紫陽花の詩
裸足
猫戦争
打楽器
才能
水色
商業主義
本棚

飛ぶ教室
まばたき
三原色
天国
なって
部屋は氷
絶滅
雨だれの詩
カーキ・カーキ・カーキ
ぼくたちの屍
夕暮
ときめく
こいぬ座
短命花
雨になる
冬と昔
西の夕陽
人で無し
春の薔薇

あとがき

 

著者プロフィール

著者の最果タヒ(さいはて・たひ)さんは、1986年生まれ。詩人。

2006年に現代詩手帖賞、2007年に第一詩集『グッドモーニング』で中原中也賞を受賞。以後の詩集に『空が分裂する』、『死んでしまう系のぼくらに』(現代詩花椿賞)、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(同作は2017年石井裕也監督により映画化)、『愛の縫い目はここ』、『天国と、とてつもない暇』、『恋人たちはせーので光る』、『夜景座生まれ』がある。

ほかに、小説やエッセイ、絵本など著書多数。近著に『パパララレレルル』(小説)、『神様の友達の友達の友達はぼく』(エッセイ)がある。

★公式サイト:http://tahi.jp/

 

さっきまでは薔薇だったぼく
最果 タヒ (著)

「冬の薔薇」「指」「惑星」「生理詩」「猫戦争」「才能」「飛ぶ教室」「ぼくたちの屍」「無人駅」「春の薔薇」など全43篇収録。

《恋が恋だという確証はどこにもないまま/死体になっても手を繋いでいたらその愛は本当って信じている人のため/死体の手を結びつける仕事をしている 本当の死神の仕事》――(「恋は無駄死に」から一部引用)

《「春の、川の上に、光を凍らせて、削ってできた粒を撒いていく仕事をしています、/あなたたちがきれいだと言うのは私が嘘をついているから。》――(「me & you」から一部引用)

詩という言葉の連なりが、言葉にできない部分まで伝わる、いや、確かに私たちに届く。

 


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