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遠藤周作さん没後25年目に戯曲3本を新発見!書籍化し3月に刊行

在りし日の遠藤周作さん

在りし日の遠藤周作さん

長崎市遠藤周作文学館で昨年末、遠藤周作さんの未発表戯曲「善人たち」「切支丹大名・小西行長 『鉄の首枷』戯曲版」「戯曲 わたしが・棄てた・女」の3本の戯曲が新たに発見されました。2020年の母を描いた私小説「影に対して」(単行本『影に対して 母をめぐる物語』所収)に続く、遠藤文学受容にとって大きな発見です。

 
「切支丹大名・小西行長 『鉄の首枷』戯曲版」と「戯曲 わたしが・棄てた・女」は、それぞれ史伝『鉄の首枷 小西行長伝』、長篇小説『わたしが・棄てた・女』を戯曲化したものですが、物語やセリフや構成に改変がなされており、よりイエスを登場人物に寄り添わせ、世界に深まりを齎せています。

 
小西行長は血腥い戦と政の狭間で、『鉄の首枷』よりもはっきりとイエスが背負った十字架の意味を探り、森田ミツを棄てた吉岡は小説版の30年後、50歳の男となって登場して、「五十歳の男はね、真夜中、眼を覚まして闇をみつめながら、三十年前、棄てた女は今、どうしているか、と思うことがあります。五十歳の男は、夕暮の陸橋を歩きながら、あの女はそこから見える夕焼けの下のひろい町の何処かで生きているだろうかと思うことがあります」と呟きながら、亡くなったミツの生涯をイエスと重ねるような修道女の話に耳を傾けます。そして、珍しくアメリカを主な舞台とする「善人たち」では、日米開戦前後の日本人留学生と善意溢れた米国人牧師補との交流を描きながら、現在のPC問題にも通じる、差別その他、〈善〉をめぐる主題が展開されていきます。

 
いずれも戦国時代、太平洋戦争、現代と描かれる時代は違うものの、「日本人とキリスト教」「宗教における真の〈善〉とは何か」「うす汚れたもの、みすぼらしいものにこそ寄り添うキリスト」といった遠藤周作さんの生涯のテーマが演劇という分かりやすい形で深められている重要な秀作揃いです。

 
新潮社では、

◎「戯曲 わたしが・棄てた・女」を『小説新潮』2022年2月号(1月22日発売)に掲載
◎「切支丹大名・小西行長 「鉄の首枷」戯曲版」を『波』2月号(1月27日発売)と3月号に分載
◎「善人たち」を『新潮』3月号(2月7日発売)に掲載

します。

そして、3本を収録した単行本『善人たち』は、3月末に刊行される予定です。

 


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