尾崎世界観さんが南相馬市の柳美里さんに会いに行く対談動画を公開
今年1月に刊行した小説『母影』で第164回芥川賞の候補作となった尾崎世界観さんが、芥川賞作家の柳美里さんに会うために、福島県南相馬市で柳さんが運営する書店「フルハウス」を訪れました。
尾崎世界観さん×柳美里さん 90分間の対談動画を公開
2020年に『JR上野駅公園口』が全米図書賞(翻訳部門)を受賞し、大いに注目を集めている柳さんですが、尾崎さんが柳美里作品に出会ったのは10代の終わり頃。バンドも仕事もうまくいかずに苦しんでいた時期に、柳美里さんの『ゴールドラッシュ』(新潮文庫)を読んで救われたといいます。
演劇と小説の両輪で活動をつづけてきた作家に、創作について、言葉について、人生について、尾崎さんがじっくりと話を聞きました。
【対談の内容】
◎人が目に留まらない世界を書けることが小説家の才能だと思う
◎私もたいがいケチをつけられてきましたよ
◎誰も歌わないようなことを歌ってきました
◎あの母子は心中するのでは、と思って読んでいました
◎誰もが「正しさ」を主張することの窮屈さ
◎「幸せになった」と言われるのに心当たりはありますか?
◎言葉になる前のなにかを書くという感覚
◎言葉が速くて羨ましいです
◎死をイメージすることはありますか
◎「クソが」って、私もついつい言っちゃうんですよ
◎つま先立ちで歌うのはどうしてなの
対談後は柳さんの書店「フルハウス」の店内をくまなく巡って、気になった本を10冊近く購入した尾崎さん。小さな書店、とりわけ個人経営で独自の品揃えをしている書店に強い関心をもっており、『母影』のサイン本作成にも全面的に協力しました。
その後、柳さんの案内で福島第一原発にほど近い双葉町を訪れた尾崎さん。帰宅困難区域から解除されたものの、人影もまばらな町を歩きながら、柳さんが語る「震災10年後」の現状に耳を傾けていました。
【動画について】
★新潮社 YouTubeチャンネル:https://youtu.be/VGEqLcrgGIk
出演者プロフィール
■尾崎世界観(おざき・せかいかん)さん
1984年11月9日、東京都生まれ。2001年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギター。2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。
2016年、初小説『祐介』(文藝春秋)を書き下ろしで刊行。他の著書に『苦汁100%』、『苦汁200%』(ともに文藝春秋)、『泣きたくなるほど嬉しい日々に』(KADOKAWA)。千早茜さんとの共著に『犬も食わない』(新潮社)。対談集に『身のある話と、歯に詰まるワタシ』(朝日新聞出版)。
■柳美里(ゆう・みり)さん
1968年、神奈川県生まれ。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、「魚の祭」で第37回岸田國士戯曲賞を受賞。
1996年「フルハウス」で第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年「家族シネマ」で第116回芥川賞を受賞。1999年「ゴールドラッシュ」で第3回木山捷平文学賞を受賞。2020年『JR上野駅公園口』の英語版が全米図書賞(翻訳部門)を受賞した。
母影(おもかげ) 尾崎 世界観 (著) 行き場のない少女は、カーテン越しに世界に触れる。 小学校でも友だちをつくれず、居場所のない少女は、母親の勤めるマッサージ店の片隅で息を潜めている。 |
JR上野駅公園口 (河出文庫) 柳 美里 (著) 東京オリンピックの前年、出稼ぎのため上野駅に降り立った男の壮絶な生涯を通じ柳美里が描く、居場所を失くしたすべての人へ贈る物語 一九三三年、私は「天皇」と同じ日に生まれた―東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのために上野駅に降り立った。そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。高度経済成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現・南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして日本の光と闇…。「帰る場所を失くしてしまったすべての人たち」へ柳美里が贈る傑作小説。 |
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