「全米図書賞」翻訳文学部門を多和田葉子さん『献灯使』英語版が受賞
アメリカで最も権威のある文学賞の一つである「全米図書賞」(National Book Award)の受賞作が11月14日(現地時間)に発表され、翻訳文学部門を多和田葉子さんの『献灯使』の英語版 「The Emissary」が受賞しました。
36年ぶりに日本の文学作品が全米図書賞を受賞!
今年で第69回を迎える全米図書賞では、今年度から翻訳文学部門が設立され、その記念すべき第1回目の受賞作に、ドイツ在住の作家・多和田葉子さんの『献灯使』英語版が選ばれました。
『献灯使』は、日本では2014年に講談社から刊行。大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本を舞台にした近未来小説です。
新設された翻訳文学部門は、フィクション、ノンフィクション、児童文学、詩歌に続く5つ目の部門となり、フィクションおよびノンフィクションの作品で英語に訳され、アメリカ国内で出版されたものが対象となります。
過去には、フィクションのみを対象とした翻訳部門が1983年まで存在しており、1982年に樋口一葉さんの『たけくらべ』(「In the Shade of Spring Leaves」)と、リービ英雄さん翻訳による『万葉集』(「The Ten Thousand Leaves: A Translation of The Man’Yoshu, Japan’s Premier Anthology of Classical Poetry」が受賞していますので、今回、日本の文学作品が36年ぶりに受賞したことになります。
多和田葉子さん プロフィール
多和田葉子(たわだ・ようこ)さんは、1960年生まれ。東京都出身。小説家、詩人。
1982年に早稻田大学第一文学部ロシア文学科を卒業。同年、ドイツに渡り、2006年までハンブルグに在住。1990年ハンブルグ大学修士課程修了。創作活動の傍ら、2000年にはチューリッヒ大学博士課程修了。
1991年『かかとを失くして』で群像新人賞を、1993年『犬婿入り』で芥川賞受賞を、2003年『容疑者の夜行列車』で谷崎潤一郎賞と伊藤整文学賞を、2009年には国際的な文学活動が評価されて坪内逍遙賞を、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞を、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞と芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞するなど受賞歴多数。
ドイツでは1987年に詩集でデビューし、1988年からドイツ語でも創作活動を開始し。ドイツ語で書いた作品群で1996年にシャミッソー賞を、2005年にゲーテ・メダルを、2016年にはクライスト賞を受賞。2006年よりベルリン在住。
著書に、『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『傘の死体とわたしの妻』『ボルドーの義兄』『百年の散歩』『地球にちりばめられて』『穴あきエフの初恋祭り』など。
なお、今年4月に刊行された『地球にちりばめられて』の続編にあたる長編小説が、12月7日発売の『群像』2019年1月号から連載開始される予定です。
★多和田葉子さん公式サイト:http://yokotawada.de
大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康だが子どもは学校に通う体力もない。義郎は身体が弱い曾孫の無名が心配でならない。無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。
大きな反響を呼んだ表題作のほか、震災後文学の頂点とも言える全5編を収録。
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