柳美里さんが「日本人」へ問う、魂のエッセイ集『国家への道順』 戦争ではなく、対話によって拓かれる未来のために

柳美里さんが「日本人」へ問う、魂のエッセイ集『国家への道順』 戦争ではなく、対話によって拓かれる未来のために
2010年より7年間にわたり月刊『イオ』で「ポドゥナムの里から」として連載されてきた、柳美里さんの長期連載エッセイが、大幅な再編集と加筆修正を経て、『国家への道順』として河出書房新社より刊行されました。
「日本人」に問います。「あなたは自分が何を考え、何をしているか、解っていますか?」
書籍化にあたり書き下ろされた「はじめに」と「おわりに」をあわせた計40本のエッセイは、日々、柳さんが直面する「差別」や「在日」の問題を通じて、私たちが暮らす「国」とはそもそも何なのかという問いを投げかけます。
事実を知るその先にあるものとは、故郷への思い、犠牲者たちへの悼み、差別の根……柳さんは語ります。
わたしたちは時間を与えられています。
わたしたちの時間には限りがあります。
過去の苦痛を孕んだ現在の重みを軽くできるのは、現在の努力だけです。
対話の道筋の中でしか、共通の言葉は見つけられません。
わたしは、対話を、求めます。(「おわりに」より)
「非常に困難な状況の中で、失語の一歩手前でどんな言葉ならば語ることが可能か、迷い、悩みながら書きました(「おわりに」より)」という、柳さんの魂の叫びが詰まった『国家への道順』。
戦争ではなく対話によって拓かれる、私たちの未来のための一冊です。
『国家への道順』の内容
◎はじめに
謝罪への道順
事実を知る、その先に
我々の言葉
チマチョゴリの紐が風に舞う日
逆境の中で、人は言葉に出逢う
痛ましい記憶を語ること
諦念ではなく抵抗としての沈黙
あの日からの時間
かけがえのない一人の生として悼む
「どこにもない場所」(Utopia)を創出する力
分断された故郷
犠牲者たちの声を聴く
同胞たちの強い意志
質問
ルーツと邂逅
祖国の心
「我々」という曖昧さ
「人」との「間」に在(あ)るもの
遅いが、まだ遅すぎない
誰もが歴史の上に暮らしている
対話とは何か
外国人労働者
義務と権利
言葉の本質
差別の根
戦争を人間の外に置いてはいけない
限界の線
一つの音楽を響かせる
未来は全て過去にある
わたしは、問い続ける
ナショナリズムの罠
広島スピーチ
靖国神社の在り方
日本人が知らないこと、知りたくないこと
憎むのでもなく、許すのでもなく
『金陵十三釵』
李浩哲さんへ
「最悪」に黙従しないために
◎おわりに