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『スマホ失明』「スマホで失明」って大げさなと思ったあなたへ――近視の進行から失明につながるリスクと最新治療を徹底解説

川本晃司さん著『スマホ失明』

川本晃司さん著『スマホ失明』

現役眼科専門医・川本晃司さん著『スマホ失明』がかんき出版より刊行されました。

 

30年後には10人に1人が「失明」するかもしれない

デジタルデバイス、特にスマートフォンの普及に伴い、世界中の人々、その中でも若年層の視力の急激な低下が問題となっています。

 
「スマホの使い過ぎで失明だなんて大げさ」「確かに目は悪くなるだろうけど、ちょっとだけでしょ」などと感じる人も多いかもしれません。
しかし、最近の研究から、近視の先に「失明」の可能性があることがわかってきました。

 
本書では「失明」を、全く見えない状態の「医学的失明」だけでなく、矯正視力が「0.1」を下回る「社会的失明」、疾病などで一時的あるいは部分的に見えない「機能的失明」と3段階に分けて定義しています。

 
<「はじめに」より>

オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所は、2010年には約20億人だった近視人口が、2050年にはなんと約50億人になると推計しています。
これは世界人口の半分です。しかも、このうちの9億3800万人が、強度近視になると予測しています。つまり、今から約30年後には、10億人近くが視力を失う「失明リスク」にさらされるということです。
10億人というのは、その頃の世界人口の約10人に1人です。
10人に1人が、失明するかもしれないのです。

 

エビデンスのある近視の進行抑制法や対策を解説

本書では、眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行う川本晃司さんが、医療現場の実態と最新のデータからこの危機と対応策を解説します。

 
失明に至る原因や、そのメカニズム、世界各国の近視対策などを紹介し、現役眼科医の立場からエビデンスのある近視の進行抑制法や、行動経済学を応用した近視対策まで、徹底的に解説しています。

 
2021年に文部科学省が行った学校保健統計調査では、裸眼視力が「1.0」を下回る子どもの割合は、小学生が36.87%、中学生が60.28%と過去最多となりました。

人生100年時代、若くして眼が見えなくなった後の人生をどう生きますか?

 

本書の構成

はじめに
スマホで近視が進むと失明する!
ある高校生に起こった悲劇
失明には、3つの段階がある
子どもは親に「急性スマホ内斜視」を隠す
年々増加するスマホ利用時間
これまで近視対策ができなかった、二つの理由
近視対策 × 行動経済学
失明カスケードから逃れるために

第1章 新型コロナ禍で進行する「失明パンデミック」

第2章 「スマホ」と「近視」

第3章 エビデンスのある、近視の進行抑制法とは

第4章 行動経済学 × 近視対策

第5章 スマホとの最適な共存を目指して

おわりに
やらなかった後悔は、永遠に残り続ける
「安いニッポン」と近視対策
近視進行と伸び続ける寿命

 

著者プロフィール

著者の川本晃司(かわもと・こうじ)さんは、1967年生まれ、山口県出身。眼科専門医(医学博士)・MBA(経営学修士)。

高校卒業後、産業廃棄物処理の日雇い労働をしていたが、一念発起して受験勉強を始め、28歳の時に山口大学医学部に入学。34歳で眼科医となり、44歳で眼科クリニック・かわもと眼科の院長となる。専門は角膜。2021年に北九州市立大学ビジネススクールでMBAを取得。現在は眼科専門医としての傍ら、北九州市立大学大学院で医療と認知心理学とを掛け合わせた学際的な研究を行っている。現在の研究テーマは「医療現『場』の行動経済学」と「医師と患者の認知心理学」。

 

スマホ失明
川本 晃司 (著)

人生100年時代、眼が見えなくなった後の人生をどう生きますか?

「スマホで失明」って大げさな、と思ったあなたへ
失明=全盲、ではありません
「はじめに」の「ある高校生に起こった悲劇」だけでも読んでください

ある高校生に起こった悲劇
  
デジタルデバイスの急速な普及による、「スマホ失明」リスク。
その急増の波は、もちろん、日本にも押し寄せています。
わかりやすい例が、若い人、特に10代の間で「急性スマホ内斜視」の患者さんが目立つようになってきたことです。
内斜視とは、左右の眼のどちらか、もしくは両方が内側を向いている状態のこと。
私たちの眼は、近くを見るとき、内側を向く「寄り眼」状態になります。
このとき、長時間近くのものを見続けて、寄り眼状態が固定化すると、固定化した視線の先にしかピントが合わなくなります。
すると、それ以外の場所を見たときに、二重にダブって見えるようになるわけです。
ちなみに急性内斜視は、もともと近視がある人が、長時間、近距離でものを見続けることで、発症しやすい傾向があります。
こうした内斜視の中でも、スマホを長時間見続けることで起こる急性症状のことを、私は特別に「急性スマホ内斜視」と呼んでいるのですが……。
先日も、私が診療している山口県防府市のかわもと眼科に、16歳の男子高校生がやってきました。お母さんに付き添われてきた彼の訴えは、「黒板が見えない」「教科書が見えない」というものでした。 検査結果に目を通すと、裸眼視力は右眼が0・03、左眼は0・04。すでに近視がかな り進んだ状態です。 彼はメガネをかけて片眼ずつで見れば、問題なく見えると言います。しかし両眼で見た瞬間に、見えなくなるんだとか。遠くの景色が見えない、授業中に黒板を見ようとすると見えない。教科書やマンガはもちろん、愛用しているスマホも見えない……。 彼に普段の生活を聞いたところ、毎日、かなり長い時間スマホを見ていることがわかりました。そのため、眼球が内側に寄った状態で固定化してしまい、片眼だけなら対象物にピントを合わせられても、両眼を使ったときにピントが合わなくなっていたのです。

「お子さんの眼は、スマホの使いすぎが原因で、急性内斜視を起こした可能性が高いです メガネで矯正が可能か、先ほど試してみましたが、矯正はできない様子です。詳しくはこの病気の専門の先生に聞いてみる必要がありますが、手術が必要かもしれません」
私がそう言うと、男の子とお母さんの様子がたちまち変わりました。
単なる近視だろうと思って受診したのに、まさか手術が必要になるとは思ってもみなかったのでしょう。この段階になって、ようやく二人は、「先生、どうすればいいですか?」とあせり始めました。
とはいえ、急性内斜視は「急性」というだけあって、一時的に斜視になった状態なので、しばらく近距離でものを見ないようにして生活すると、症状が軽減することも多いのです。 しかし近年は、スマホによる近業(44ページ参照)を長期間続けた結果、内側に寄った眼 の状態が固定化してしまい、改善されずに手術となるケースが増えています。
彼の場合も、しばらくスマホをやめても症状は良くならなかったようで、後日、某県の 大学病院で手術となりました。
ただ……残念なことに、手術をしても、見え方は完全に元通りにはならなかったそうです。彼には、常にものがダブって見える「複視」の症状が残ってしまいました。

 


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