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『共感という病』過剰な「共感」は対立・分断を呼ぶ? 紛争地の最前線で働く著者が、いきすぎた同調圧力との向き合い方を提言

永井陽右さん著『共感という病』

永井陽右さん著『共感という病』

永井陽右さん著『共感という病』が、かんき出版より刊行されました。

 

ビジネス、政治、恋愛、趣味――至るところで重要視される「共感」 その負の側面を明らかにし、あるべき向き合い方を考察

「共感」は、人間関係において重要であり必要な感情です。
ですが、ともすれば他者を排除する危険な思想にもなり得る、と提言するのが、紛争という憎悪のぶつかり合いの正にど真ん中で仕事をしている永井陽右さんです。

たとえば、道端に力なく座り込み、服もボロボロで今にも餓死しそうな人物がいるとして、それが中年男性であるか10歳の女の子であるかによって、共感のレベルが変わってきます。
多くの共感を集めるのは、やはり10歳の女の子の方でしょう。

とはいえ、2人は人間として抱いている苦痛は全く同じです。

 
私たちは結局のところ、どこまでも個々人が持つバイアスに振り回されることになり、結果として共感は、全員ではなく特定の誰かしか照らさない「スポットライト的性質」と、自分にとって照らすべきだと思えた相手しか照らさない「指向性」を持つことになってしまうのです。

過剰な共感は対立や分断を生みます。
特に近年の日本社会では「共感」がいきすぎ、同調圧力が強くなりすぎている面もあると永井さんは指摘します。味方ではないと思った人に対して厳しすぎるのです。

 
本書では、この「共感」について深堀りし、あるべき向き合い方について考察していきます。内田樹さん、石川優実さんとのロング対談も収録。

 

本書「はじめに」より(抜粋)

共感はこの社会において、人々を繋げ、連帯を生み出し、時には社会や世界を良くしていくものとして、基本的にポジティブに語られています。
そしてそれのみならず、日々の人間関係においても共感の重要性は語られますし、ビジネスの領域においてもマーケティングからプレゼンテーションまで、一つの鍵となっています。

 
しかし同時に、私たちは共感といったものの胡散臭さも感じてきました。東日本大震災に対する「絆」に始まり、ラグビーワールドカップでの「ワンチーム」、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた「団結」など、それ自体は素晴らしいアイデアではありますが、どこかそうした美しい概念が本来の目的を超えた何かに対して恣意的に使われてきた節もありました。

 
たしかに「絆」や「ワンチーム」「団結」の内部は、最高に気持ちが良くて恍惚すらできるものですが、よく見てみると、その中にいない人がたくさん存在していることに気が付きます。むしろ外側にいる人に対して排他的であることも珍しくありません。「共感し合おう」「繋がっていこう」と言うと、なんとなく無条件に良いものである気がしますが、繋がっていくからこそ分断していくとも言えるわけです。

 
私は共感が全て悪いとは思っていませんし、そんなことを言うつもりも毛頭ありません。むしろ社会と世界を良くするために間違いなく重要な要素だと思うからこそ、共感が持つ負の面を理解し、自覚し、うまく付き合っていく必要があると思うのです。

 
本書はそうした理解の下で、共感を考察し、共感の捉え方や共感以外の手がかりを考えるきっかけを投げかけていきます。

 

本書の構成

第1章 キモくて金のないおっさんは、なぜ共感されないのか?

第2章 共感中毒がもたらす負の連鎖

第3章 紛争地域から見る共感との付き合い方

特別対談 石川優実

第4章 戦略的対話 わかりあえない相手とのコミュニケーション

第5章 基本的に人はわかりあえない

第6章 共感にあらがえ

特別対談 内田樹

 

著者プロフィール

著者の永井陽右(ながい・ようすけ)さんは、1991年生まれ。神奈川県出身。NPO法人アクセプト・インターナショナル代表理事。国連人間居住計画CVE(暴力的過激主義対策)メンター。

テロと紛争の解決をミッションに、主にソマリアなどの紛争地にて、いわゆるテロ組織の投降兵や逮捕者、ギャングなどの脱過激化・社会復帰支援や過激化防止を実施。また、テロ組織との交渉および投降の促進、国連機関や現地政府の政策立案やレビューなどにも従事。London School of Economics and Political Science紛争研究修士。「Forbes 30 Under 30」や「King Hamad Award」など、国内外で受賞や選出多数。

著書に『僕らはソマリアギャングと夢を語る 「テロリストではない未来」をつくる挑戦』(英治出版)、『ぼくは13歳、任務は自爆テロ。 テロと戦争をなくすために必要なこと』(合同出版)がある。

 

共感という病
永井 陽右 (著)

内田樹氏、石川優実氏とのロング対談収録!

ビジネス、政治、恋愛、趣味――
至るところで重要視される「共感」。
その負の側面を明らかにし、あるべき向き合い方を考察する。

 


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