『「これからの世界」を生きる君に伝えたいこと』日本の大学初、アフリカ系学長による不確実な世界を生きる最高の講義
ウスビ・サコさん著『「これからの世界」を生きる君に伝えたいこと』が、大和書房より刊行されました。
世界アフリカ人で最も影響力のある100人に選ばれた日本の大学初のアフリカ系学長
2018年、日本の大学で初となるアフリカ系学長が京都精華大学で誕生しました。マリ共和国出身のウスビ・サコさん。
マリで成績優秀者の奨学生に選ばれ、国の優等生として、自尊心を持ち自信に溢れ、恵まれた環境の中で過ごしました。
ところが、奨学生として海外に出ると、そういった尊厳がすべて無効化されるような経験を余儀なくされたといいます。ウスビさんのその経験が後に日本初の学長となる礎となります。
「自分は本当に人間なんだろうか。人間として認められているのだろうか」
パリを訪れた時のこと。アフリカ系移民の多くは低賃金で苦しい生活を送っていました。
祖国で優等生として生きてきたウスビ・サコさんにとって、同じ祖国を持つ自分が全否定されたような衝撃を受けます。
自分の限界を感じ、アイデンティティが無視され、尊厳がゼロになったような気がしました。その誇りを取り戻すため、人種を超越した「個」として認められるためにはどうするかを考え行動するようになりました。
「グローバル化」と「国際化」は全く別物
国際化は「国対国」あるいは「一国対複数国」の関係を表します。一方、グローバル化は国家間の関係ではなく、基本的に私たち「個」が中心となります。
21世紀型のつながりは、個々が違いを認め共生していくかが問われます。これから生きていく中で、グローバル化や多様性を避けては通れません。
在留外国人は増加しているが、日本のグローバル化は進んでいない
昨年、在留外国人は7年連続増加し過去最多282万人を突破。日本の総人口のわずか2.4%ですが、人口減少の歯止めが掛からない現状で彼らの労働力に頼らざるを得ない状態は当面続きます。
働きに日本へ来る外国人たちに日本語や日本文化を教えたからといって、彼らの価値観が日本に同化するはずはありません。
異なる背景を抱える人間をどう認め、どう受け入れていくか。これこそが、いま私たち個人のなかで重要になってくる課題なのです。
日本のグローバル化のポイントは「メタモルフォーゼ」
「メタモルフォーゼ」は、変身や変化。しかし、ウスビさんは「自分自身を保ったまま、社会に適応した自分をつくる」「中身を維持し、外側を変化させていく」と解釈します。
ウスビさんは日本国籍を取得しましたが、決して日本に同化したわけではないといいます。異なる社会・文化と関わるにあたって大事なのは、「全く異なる視点を持っている自分」を維持し、相手も同様だということを認識すること。
さらに「メタモルフォーゼ」には成長という意味もあります。「ブレない自分を保ち、自分自身を成長させる」これが、不確実なグローバル社会で生きていく姿勢であると「これからの世界」へ生きる若者へ伝えています。
本書の構成
はじめに
第1章 不確実で多様化する世界で、どう生きるのか?
第2章 多角的でブレない価値観を築く「学び」
第3章 人種・文化を越える「コミュニケーション」
第4章 激変し続けるグローバル社会で「働く」
あとがき
著者プロフィール
著者のウスビ・サコ(Oussouby SACKO)さんは、京都精華大学学長。博士(工学)。
1966年、マリ共和国生まれ。高校卒業と同時に国の奨学金を得て中国に留学。中国・北京語言大学、南京市の東南大学等に6年間滞在して建築学を実践的に学ぶ。
1990年、東京で短期のホームステイを経験し、アフリカに共通するような下町の文化に驚く。
1991年、来日。同年9月から京都大学大学院で建築計画を学ぶ。京都大学大学院建築学専攻博士課程修了後も日本学術振興会特別研究員として京都大学に残り、2001年に京都精華大学人文学部教員に着任。
専門は空間人類学。「京都の町屋再生」「コミュニティ再生」など社会と建築の関係性を様々な角度から調査研究している。2013年に人文学部学部長、2018年4月同大学学長に就任。日本初のアフリカ系大学長として、国内外のメディアから大きな注目を浴びている。
バンバラ語、英語、フランス語、中国語、関西弁を操るマルチリンガル。
「これからの世界」を生きる君に伝えたいこと ウスビ・サコ (著) ☆多様性と不確実さが増す社会で、流されない自分の「哲学」を持てる一冊! 経済市場に振り回される世界で、どう自由に生きていくべきか? ☆国内外メディア注目! 日本初のアフリカ系大学長、初の単著! その華々しい活躍の一方で、「ヒューマン・ショック」ともいえる差別や格差に直面してきた過去がある。若かりし頃のサコ氏は、祖国・マリ共和国から成績優秀な奨学生として海外に羽ばたいた。しかし、経由地のフランス、留学先の中国、そしてたどり着いた日本と、価値観を揺さぶられる経験が彼を訪れる。 厳しい現実にあっても、サコ氏が大切にしていたことは、「メタモルフォーゼ」。つまり核を維持しながら自分を変化させていくことだった。 |