『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』愉快痛快!年の差50歳の「真剣」勝負!佐藤愛子さん×小島慶子さん往復書簡エッセイ集
佐藤愛子さん×小島慶子さんの往復書簡エッセイ集『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか』が、小学館より刊行されました。
悩み、怒り、愚痴――あなたも「酢ダコ」に振り回されている!?
『九十歳。何がめでたい』が2017年の年間ベストセラーランキング総合第1位(トーハン・日販調べ)になるなど、新著の発売を待ち望むファンが数多くいる現在96歳の作家・佐藤愛子さんの最新刊は往復書簡集。佐藤さんが、実に50歳年下のタレント・エッセイストの小島慶子さん(47歳)と手紙のやりとりをしました。
小島さんが「理屈の隘路にハマって人生に呻吟する」と自らについて書けば、佐藤さんは「論理を踏んづけて情念に生きてきた」と書くように、世代も考え方もまったく違う二人が手紙で交わしたテーマはさまざまです。
佐藤さんは本書についてこう言います。「人生論を書くつもりはなかったけれど、図らずも人生論になってしまいました」。対する小島さんは「佐藤さんが下さった最後のお手紙の一節に、私は不覚にも涙が出ました」と。
タイトルの「酢ダコ」は、佐藤さんが手紙の中で書いた人間関係に関する「たとえ」から来ています。
佐藤さんは人間関係に悩む小島さんにこう手紙を綴りました。
<世の中にはいろんな人がいます。一人一人、みな違います……「蛸の酢のもの」を酸っぱいから嫌いだという人を、味のわからん奴、と怒ってもしょうがない。また、無理に嫌いでなくなろうと努力する必要もない……蛸好きが偉くて、蛸嫌いが劣等ということはないのですからね。/今の時代は何かというと人の気持をわからなければいけないといい過ぎると私は思います……エイいちいちうるせえ、と私はいいたくなる>
それを受けて小島さんは、佐藤さんにこう打ち明けます。
<佐藤さんの酢ダコのたとえでいえば、佐藤さんは 「蛸好きが偉くて、蛸嫌いが劣等ということはない」と、酢ダコに対する多様性に寛容でいらっしゃるのですが、私は「どんなに不味い酢ダコに当たっても、美味いと言わねばならない」と頑なに思い込んでいるようなのです。酢ダコ原理主義です>
本書を読んでいくと、知らず知らずのうちに人生を「酢ダコの好き嫌い」に左右されていたことに気付かされること、請け合いです。
夫婦喧嘩の大義は要するに「ウップン晴らし」!?
外出自粛が続く昨今、夫婦喧嘩(果ては離婚まで……)が増えているという報道も見受けられますが、本書の読みどころの一つに、そうした夫婦喧嘩をめぐる二人のやりとりがあります。
東京で仕事をしながら家族が暮らすオーストラリアと行き来する大黒柱生活を送る小島さんは、夫についての悩みを赤裸々に打ち明け、こう嘆きます。
<夫はなぜ私の孤独と不安にこうも無頓着なのでしょう>
そんな小島さんに、佐藤さんは<慶子さんは我慢のし過ぎです。愛し過ぎです>と諭した上で、こんな提案をします。
<バケツの水をぶっかけてごらん。そうしたらスッキリする……、しないか。これを荒療治といいます>
<夫婦喧嘩の大義は要するに「ウップン晴らし」ですからね>
なお、5月8日発売の『女性セブン』では、放送作家の鈴木おさむさん、タレントの壇蜜さん、でんぱ組.incリーダーの相沢梨紗さん、コラムニスト・エッセイストの犬山紙子さん、作家・綿矢りささん、書評家の温水ゆかりさんの6人が、本書について書評を寄稿しています。
皆さんの夫婦関係や人生観、酢ダコ観が垣間見える書評となっています。
人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか: 女二人の手紙のやりとり 佐藤 愛子 (著), 小島 慶子 (著) 1923年生まれの佐藤さんと1972年生まれの小島さん。年の差50歳の二人が往復書簡を交わしました。夫婦のこと、生きること、今の時代、書くこと、話すこと、戦うこと……交わされる手紙の内容は実に様々です。 <夫婦喧嘩の大義は要するに「ウップン晴らし」ですからね。「颱風一過。後は雲ひとつない、ルンルン青い空」が望ましい>(佐藤さん) <佐藤さんは私の愛が深いとおっしゃいます。そうかもしれませんが、だとしたら愛なんてロクなもんじゃないと思います>(小島さん) 読後感はルンルン青空。元気がわき出ること請け合いです。 |