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『日本人論の危険なあやまち』「日本人は集団主義」という通説に科学的根拠なし!

髙野陽太郎さん著『日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠』

髙野陽太郎さん著『日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠』

髙野陽太郎さん著『日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより刊行されました。

 

日本人は「無個性」でも「集団主義」でもなかった! 科学的な国際比較研究が、日本人論の「常識」を覆す

日本人は、欧米人と比べると無個性で、主張ができず、一人では精神的に自立していないと言われます。

このような日本人論の中心となるのが、「欧米人は個人主義で、日本人は集団主義」であるという、「日本人=集団主義」説です。

 
その理由として「出る杭は打たれる」という日本のことわざや、「サービス残業」「終身雇用」「いじめ」といった事例が挙げられます。

しかし、科学的な国際比較研究によると、世界一「個人主義」とされるアメリカ人と比べても、日本人が集団主義的であるという結果は出ませんでした。

つまり、日本人について海外の方や私たち自身が抱いているイメージには、何の根拠もなかったのです。著者の緻密な研究がそれを明らかにします。

 

「間違った日本人論」は日本経済の「失われた20年」にも影響を与えていた

本書では、「なぜ、間違った日本人論が常識になったのか」についても論じています。

 
1888年にアメリカで出版された『極東の魂』により「没個性」という日本人論が生まれ、第二次世界大戦と『菊と刀』により日本人は自己を犠牲にする「集団主義」というイメージが確立しました。

 
そして、1980年代。集団主義とされる日本人論は再び注目されます。日米貿易摩擦です。

「日本経済は、欧米諸国の自由主義経済とは異質な集団主義経済だ。そのおかげで、貿易戦争で不当に勝ちつづけているのだ」と非難され、アメリカ政府の対日要求により、半導体をはじめ多くの日本産業が壊滅に追い込まれました。

また「日本からの輸入を減らすためには、日本製品の値段を高くすればいい」と考えたアメリカ政府は、円の切り上げも要求します。そして「プラザ合意」により急速な円高が進み、「円高不況」を克服するために日本銀行は公定歩合を引き下げ、日本政府もさまざまな景気刺激策を講じます。

それが、「バブル」を生んだと言われています。

 
しかし、アメリカ政府が日本政府につきつけていた「内需拡大要求」により、日本政府は経済政策を臨機応変に調整できず、バブルは加熱し、崩壊しました。そして、「失われた20年」が訪れたのです。

 

グローバル化が進み、多様性が重要な時代――「われわれ」と「やつら」は違うといった「文化ステレオタイプ」に陥ってはいけない

「日本人=集団主義」という通説には科学的根拠がありませんでした。日本人論に限らず、人種や文化の違いによるステレオタイプにとらわれると、現実を大きく見誤ってしまいます。その結果、大きな惨禍がもたらされてきました。

 
「われわれ」とは違う「やつら」という文化ステレオタイプが創り上げらたことで、ユーゴスラビアの民族対立、戦争中の政治宣伝、ユダヤ人のホロコースト、ルワンダのツチ族の大量虐殺などの人類史に残る悲劇が起こったのです。

 
著者の髙野陽太郎さんは、以下のように書いています。

[いったん通説になってしまうと、「みんながそう言っている」というだけで、通説は正しいと感じられるようになります。確証バイアスのせいで、通説に合った事実ばかりに目が向くので、通説は、いよいよ正しく見えてきます。
現実の人間は、文化によってがんじがらめに縛られているわけではなく、そのときの状況に合わせて、柔軟に行動を変えることができます。また、状況が変化すれば、文化それ自体も変化します。
しかし、文化ステレオタイプを通して見ると、違う文化の人たちは、違う種類の人間に見えてしまいます。そうすると、対立が生じたときには、敵意が自然に湧きあがってきて、その人たちにたいして平気で残酷な仕打ちができるようになってしまいます。この傾向は政治的に利用されやすく、大量虐殺にまで発展してしまうことも稀ではありません。グローバル化と人口増加が進行する今の時代、文化ステレオタイプの危険性は、かつてないほど高まっています。未曾有の大惨事を引き起こさないためには、文化ステレオタイプの歪ゆがみと危険性を認識することは、人類にとっては、喫緊の課題なのです。](「おわりに」より)

 
グローバル化が進み、多様性がますます重要になっている現代だからこそ、「〇〇人は▲▲だ」というような先入観や偏見をもたず、ステレオタイプから抜け出すことが必要なのではないでしょうか。

 

本書の構成

はじめに

第1章 日本人論の核心「集団主義」

第2章 日本人論の危うい足元

第3章 「個人主義的な」アメリカ人と比べてみると

第4章 日本経済は集団主義的か?

第5章 日本人論の言説を検証する

第6章 なぜ「集団主義的な日本人」は常識になったのか?

第7章 なぜ通説は揺るがないのか?

第8章 文化ステレオタイプ

第9章 文化ステレオタイプの罠

おわりに

 

髙野陽太郎さん プロフィール

著者の髙野陽太郎(たかの・ようたろう)さんは、東京大学名誉教授。専門は認知科学(認知心理学・社会心理学)。

1950年東京生まれ。コーネル大学心理学部で博士号を取得。ヴァージニア大学専任講師、早稲田大学専任講師、東京大学文学部助教授、東京大学人文社会系研究科教授を経て、現在、明治大学サービス創新研究所客員研究員。

主な著書に『傾いた図形の謎』(東京大学出版会)、『鏡の中のミステリー』(岩波書店)、『心理学研究法』編著(有斐閣)、『「集団主義」という錯覚』(新曜社)、『認知心理学』(放送大学教育振興会)、『鏡映反転』(岩波書店)がある。

 

日本人論の危険なあやまち 文化ステレオタイプの誘惑と罠 (ディスカヴァー携書)
高野 陽太郎 (著)

「欧米人は個人主義」
「日本人は集団主義」
それは、大いなる幻想
科学的な研究が、日本人論の常識を覆す!

グローバル化が進行する現代、必読の1冊!

「日本人は集団でいないと安心できない」
「日本人は個人が精神的に自立していない」
「日本人は自己主張ができない」

”日本人は集団主義的だ”というのは、日本人論の常識です。

しかし、本当にそうなのでしょうか?
じつは、科学的な国際比較研究はこの「常識」を真っ向から否定しています。
「世界でいちばん個人主義的だ」と言われてきたアメリカ人と比べても、日本人はとくに「集団主義的」というわけではないのです。

では、なぜ「日本人は集団主義的だ」という言説が常識になってしまったのでしょうか。
これは過去、人間社会に大きな惨禍を招いてきた「文化ステレオタイプ」の典型です。

本書では、「日本人論のあやまち」と「文化ステレオタイプ」について、著者の緻密な研究をもとに明らかにしていきます。

 


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