現役外科医・藤ノ木優さん「あしたの名医」続編『あしたの名医2 天才医師の帰還』が刊行
昨年、北上次郎オリジナル文庫大賞を受賞した『あしたの名医 伊豆中周産期センター』の続編、現役外科医・藤ノ木優さん著『あしたの名医2 天才医師の帰還』が新潮文庫より刊行されました。
「母もお腹の子も救いたい!」天才外科医・海崎栄介を加えた産婦人科チームが直面する試練とは?
「物語を通して、目指すべき理想と立ちはだかる現実の間で葛藤する彼らの想いを追体験して下さい。」
――藤ノ木優さん
「来週から伊豆長岡に行ってくれ」。東京の大学病院で腹腔鏡のプロフェッショナルを目指していた産婦人科医の北条衛は、東京から最も遠い附属病院である天溪大学付属伊豆中央病院(通称・イズナカ)に異動を命じられました。
予期せぬ都落ち、しかも鬼の三枝教授が前近代的なルールを部下たちに強要し、医局を支配していると聞きます。着任早々、その教授と手術を行うはめになった衛。前途多難を体感します。
やがて彼は、個性ゆたかな先輩医師に学びながら成長してゆきます。激務に疲れた衛に活力を与えるのは、伊豆半島の豊かな海と山の幸でした。
――(第1巻より)。
前作で、医師としてさらに学ぶために伊豆中周産期センターに残ると決意した北条衛は、多忙を極めつつ、先輩医師たちと次第に馴染んできました。
ある日、以前から憧れていた腹腔鏡手術のスペシャリスト・海崎栄介が職場に異動してくることを知り、胸が高鳴ります。実際に現れた海崎は、傍若無人でマイペース(つまり変人)で衛を戸惑わせます。しかし、その腕は超一流。他診療科の腹腔鏡手術でも存在感を発揮し、衛は大きな刺激を受けるのです。
同時期チームに加わったのは研修医・阿佐ヶ谷ゆめ。やる気はあるもののそれがちょっと空回りしがちで、衛たちは彼女の扱いにちょっと悩みます。
そんな中、伊豆半島の命の最後の砦に移送されてきたのは、がんを抱えた妊婦──。この難局に彼らはどう立ち向かうのか。医師たちの想い。日常とオフ。そして彼らが全身全霊で臨む手術。まさに、現役医師にしか描けないハイレベルの医療エンターテインメントです。
もうひとつ、本シリーズを他作品と別の味わいとしているのが、グルメ小説としての華でしょう。前作では、伊勢海老や金目鯛、伊豆産の食材を使った豪勢なピザ、特製極上鰻丼などが、食欲をそそりました。本作では、鮑と磯海苔のクリームパスタ、蒸したモクズガニ(上海蟹の仲間!)、マグロ三種を使った海鮮丼などがたまらなく美味しそうに描かれています。
ひとりの青年医師を描く成長小説であり、多彩な医師たちを描く群像劇。幾重もの感動を生む医学小説にして、グルメ小説としても楽しめる、書下ろし文庫シリーズです。
【あらすじ】
海崎栄介がやってくる! 北条衛は胸を躍らせた。憧れていた「腹腔鏡界の革命児」が着任するのだ。同時に、研修医・阿佐ヶ谷ゆめが加わる。傍若無人だが高度な手技で周囲を納得させる海崎。やる気が空回りしがちな、ゆめ。新たな力を得た周産期センターに、危機的な状況に陥った妊婦が移送されてきて──。そして、チームはさらなる高みを目指す。北上次郎オリジナル文庫大賞受賞作、感涙の第2弾。
解説=吉田伸子
伊豆中周産期センターの医師たち
◎北条衛:本シリーズの主人公。「本院に戻れ」という三枝の提案を断り、伊豆中で腕を磨く。
◎三枝善次郎:チームの首領たる老教授。その厳格さで関係者に知られる。
◎城ヶ崎塔子:部長を務めるベテラン医師で、実質上のリーダー。伊豆のグルメを熟知している。
◎田川誠一:コワモテだが心は詩人の医師。患者に寄り添うことを信条としている。
◎下水流明日香:夫である新生児科の圭一と共に病院を支える。天才肌で悪戯好き。
◎神里真司:埼玉の大病院の子息。とってもいい奴。
◎海崎栄介:トップクラスの腕とあくなき向上心から腹腔鏡界の革命児と云われる。衛の憧れの外科医。
◎阿佐ヶ谷ゆめ:産婦人科医になる夢を抱いて研修中。まっすぐな性格のため、しばしば衝突も生む。
本書の目次
第一話 絶品黒鮑と気まぐれな天才医師
第二話 甲羅酒極まって乱になる
第三話 世直し江川大明神の見た夢
第四話 一歩前に踏み出すためのマグロ丼
最終話 執刀医・城ケ崎塔子
解説 吉田伸子
著者プロフィール
藤ノ木優(ふじのき・ゆう)さんは、千葉県出身。順天堂大学医学部卒業。2021年『まぎわのごはん』で作家としてデビュー。2023年『あしたの名医 伊豆中(いずなか)周産期センター』で北上次郎オリジナル文庫大賞を受賞。
ほかの作品に『あの日に亡くなるあなたへ』『アンドクター 聖海病院患者相談室』『-196℃のゆりかご』がある。首都圏で産婦人科クリニックを営んでいる。
あしたの名医2:天才医師の帰還 (新潮文庫) 藤ノ木 優 (著) 「母もお腹の子も救いたい!」 あの海崎栄介がやってくる! 北条衛は胸を躍らせた。ずっと憧れていた「腹腔鏡界の革命児」が伊豆中央病院に着任するのだ。同時に加わったのは研修医・阿佐ヶ谷ゆめ。傍若無人だがハイレベルな手技で周囲を納得させてゆく海崎。猪突猛進でやる気がちょっと空回りしがちな、ゆめ。新たな力を得た周産期センターに、きわめて困難な状況に陥った妊婦が移送されてきて──。そして、チームはさらなる高みを目指す。北上次郎オリジナル文庫大賞受賞作『あしたの名医』、感涙の第2弾。【解説・吉田伸子】 |
<既刊>
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