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【第23回小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞】小林秀雄賞は池谷裕二さん『夢を叶えるために脳はある』、新潮ドキュメント賞は小沢慧一さん『南海トラフ地震の真実』が受賞

新潮社は8月30日、第23回小林秀雄賞および第23回新潮ドキュメント賞の選考結果を発表しました。

両賞とも、受賞作には記念品および副賞として100万円が贈られます。贈呈式は10月11日(金)に都内にて開催。

 

第23回小林秀雄賞 受賞作品

第23回小林秀雄賞の受賞作品は次の通りです。

 
<第23回小林秀雄賞 受賞作品>

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)さん
『夢を叶えるために脳はある 「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす』(講談社)

選考委員は、片山杜秀さん、國分功一郎さん、関川夏央さん、堀江敏幸さん、養老孟司さん。

 
〔授賞理由〕
「私」、宇宙、時間といった重い主題を、解像度の高い言語で解き明かし、読者を本書の外にひろがる思念へと誘い出す。最新の脳科学を通じて、息の長いストーリーを構築した点を評価する。(文責:新潮文芸振興会事務局)

 
<受賞者・池谷裕二さん プロフィール>

1970年生まれ、静岡県藤枝市出身。薬学博士。現在、東京大学薬学部教授。脳研究者。

著書に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』『記憶力を強くする』『脳には妙なクセがある』『パパは脳研究者』など。

池谷裕二さん

池谷裕二さん

 

第23回新潮ドキュメント賞 受賞作品

第23回新潮ドキュメント賞の受賞作品は次の通りです。

 
<第23回新潮ドキュメント賞 受賞作品>

小沢慧一(おざわ・けいいち)さん
『南海トラフ地震の真実』(東京新聞)

選考委員は、池上彰さん、梯久美子さん、櫻井よしこさん、藤原正彦さん、保阪正康さん。

 
〔授賞理由〕
南海トラフ地震の発生確率は他の地震とは違う基準でつくられていた。その根拠となる一次資料に当たり、信憑性を検討していく過程に、ノンフィクションの醍醐味が感じられる。(文責:新潮文芸振興会事務局)

 
<受賞者・小沢慧一さん プロフィール>

1985年生まれ、名古屋市出身。大学卒業後、コスモ石油株式会社を経て、中日新聞社(東京新聞)に入社。東海本社、名古屋本社社会部などを経て東京本社社会部。東京地検特捜部、科学班などを担当。連載記事「南海トラフ 80%の内幕」で2020年に「科学ジャーナリスト賞」を受賞。2023年には本作を含む一連の報道で菊池寛賞を受賞。

小沢慧一さん

小沢慧一さん

 
なお、第23回新潮ドキュメント賞の候補作は以下の5作品でした。

【新潮ドキュメント賞 候補作】
◎村岡俊也さん『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』(新潮社)
◎小沢慧一さん『南海トラフ地震の真実』(東京新聞)
◎六車由実さん『それでも私は介護の仕事を続けていく』(KADOKAWA)
◎森合正範さん『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』(講談社)
◎杉本貴司さん『ユニクロ』(日経BP)

 

小林秀雄賞および新潮ドキュメント賞について

新潮ドキュメント賞と小林秀雄賞は、ともに財団法人「新潮文芸振興会」が主催。以前は、新潮学芸賞の名称で2001年まで開催されていましたが、2002年からノンフィクションを対象とする新潮ドキュメント賞と、評論・エッセイを対象とする小林秀雄賞とに分離しています。

 
小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外で「自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品」に授与されます。

新潮ドキュメント賞はノンフィクションを対象とし、「ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品」に授与される文学賞です。

両賞とも第23回は、令和5年7月1日から令和6年6月30日までを対象期間としています。

 

夢を叶えるために脳はある 「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす
池谷 裕二 (著)

累計43万部突破!ベストセラー『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』に続く、高校生への脳講義シリーズの最新刊がついに刊行。

なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。
脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは――。

なぜ脳は存在するのか、僕らはなぜこんなに大きな脳を持ってしまったのか、時間はなぜ存在するのか、この世界は現実なのか、人工知能にとって人間とはなにか、私とはなにか――
数々の問いを巡らせていくと、全てがつながり、思いもよらない答えを導く。
人気脳研究学者である著者が、3日間にわたっておこなった圧倒的迫力の講義録。

「というわけで、「ああ、そうか、ならば生きなくては」と僕は感じる。能天気なヤツかもしれない。
君らはどうかな。そうは感じないかな。
僕はね、どうせ生きるんだったら、せっかくなら楽しく生きようよ、と思わずにはいられない。だって、生きているだけで役に立っているんだよ。そんなシンプルな喜びって、他に何があるんだろう。
そうした生命の本質的な原理を、脳の研究をしながら、強く感じる」(本書より)

「いま一番思い入れがあって、一番好きな本」と自らが語る、渾身の一冊。
本書でシリーズ完結となる。

南海トラフ地震の真実
小沢慧一 (著)

発生確率70~80%→実は20%!?
地震は日本のどこで起きてもおかしくない。 なのに、南海トラフ地震ばかりが確率の高さの算出で 「えこひいき」されている? 「科学ジャーナリスト賞」受賞の新聞連載を書籍化?
私が南海トラフ地震の確率が「水増し」されていることを初めて 知ったのは2018年。それまで科学的根拠に基づき算出されている と思っていた確率が、いい加減な根拠をもとに政治的な決められ 方をしていたことに、唖然とした。 また、取材をしていくと、防災予算獲得の都合などから、南海ト ラフ地震が「えこひいき」されて確率が高く示されるあまり、全国の他の地域の確率が低くとらえられて油断が生じ、むしろ被害 を拡大させる要因になっている実態も見えてきた??。 (まえがきより)
西日本から東日本の太平洋側を中心に、大きな被害が予想される「南海ト ラフ地震」。この地震がこれから30年以内に起きる確率を、政府は70%~ 80%と予測する。この数値の出し方に疑問を持つ記者が、その数字を決定 した会議の議事録や予測の根拠となる室津港の水深を記した古文書など を探し出し、南海トラフの確率の出し方が「えこひいき」されている真実 を浮き彫りにするノンフィクション。

 


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