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日本美術のデジタル復元師がひもとく『はじめから国宝、なんてないのだ。』が刊行 Xでバズった新月ゆきさんの漫画も掲載

日本美術のデジタル復元師・小林泰三さんがひもとく入門書『はじめから国宝、なんてないのだ。 感性をひらいて日本美術を鑑賞する』が光文社より刊行されました。

 

国宝鑑賞が自分のものになる本が登場! 日本美術の鑑賞に必要なのは、教養ではなくアプローチの仕方――感性をひらく日本美術の楽しみ方とは?

 
本書では、【制作された当時の色を、制作された当時と同じ方法(環境)で鑑賞する】というアプローチを通して、国宝の新しい鑑賞法を提案します。

 
たとえば、国宝「風神雷神部屏風」(俵屋宗達/江戸時代)。
この有名な屏風を、現代の技術を用いてデジタル復元し制作された当時の色に戻すと、こんなに鮮やかで生き生きとしています。

 
デジタル復元前

デジタル復元後

さらに、屏風に仕立てて間近で鑑賞できるようにすると・・・・・・

昔の日本家屋は庇が大きく張り出しているので日中でも薄暗いのですが、太陽が低く沈む夕方になると赤く染まった外光が奥まで差し込んできます。その光を再現して鑑賞すると、光を反射しない顔料を使った箇所(風神雷神)のシルエットは暗く、一方で背景の金が柔らかく輝きだし、浮遊感が生まれます。

当然電灯なんてない時代ですから、暗くなればろうそくを使用します。ろうろくを手に取り、雷神の顔に近づけると・・・目と歯がギラリと鋭く光るのです。どうですか、”神様の本性”が垣間見えた気がしませんか。

 

Xでバズった漫画も掲載!

本書に掲載されている体験漫画は、漫画家・新月ゆきさん(@Shingetsu_yuki)によるもの。Xで1.3万いいね、2200件以上リポストされ、話題を呼びました。

国宝との距離がグッと近づく、これまでになかった入門書。美術展に行く前にぜひご覧ください。

 

本書の構成

■第1章 国宝をべたべたさわろう
今の美術展と鑑賞のイメージ/誰もが知っている名作の知られていないお話/昔は触っていた証拠/触れる時代が、再びやってきた!/知ってる? 神々の本性

■第2章 これはもうアニメでしょ
こうやって絵巻物は楽しむ/”すみませーん、そのボール投げてくだーい!”効果/平安のエレクトリカルパレード/”ああ無常”すぎるメッセージ/見よ、これが絵巻物のポテンシャル/もうこれは映画でしょ

■第3章 秀吉時代の“おたがいさま”事情
醍醐の花見ってどんだけやねん/豪華絢爛、淀殿の小袖復元!/え、だけど、もしかして/そういえば、絵画も、漆芸も…/これが、秀吉時代の空気なんだな~

■第4章 やっぱり怖い? 超有名なお墓のお話
居心地いいぞ 飛鳥のカプセルホテル/皇子、ピクニックに参ろうぞ/万葉人の時間感覚/スキャンダルは、昔からみんな大好き/簡単に時空を超える万葉人

コラム(1) 国宝、はありがたいものではない
コラム(2) 子供こそ、日本美術に触れてほしい
コラム(3) 大人は”見立て”てタイムトラベル

 

著者プロフィール

小林泰三(こばやし・たいぞう)さんは、デジタル復元師、鑑賞学者。1966年生まれ、東京都出身。大学卒業時に学芸員の資格を取得。大手印刷会社で美術のハイビジョン番組に携わる。美術の知識と美術業界のノウハウを駆使して、美術品のデジタル復元を手掛ける。その先駆者として高く評価され、ハイビジョンアワード、マルチメディアグランプリ、ユネスコシネマフェスティバルなどで数々の受賞歴がある。

2004年に小林美術科学を設立し、美術史業界のネットワークと最新のレタッチ技術を融合し、本格的にデジタル復元の活動を開始。手掛けた作品は、飛鳥時代の高松塚古墳壁画から昭和時代の白黒写真&フィルムのカラー化まで、多岐にわたる。

著書に『日本の国宝、最初はこんな色だった』『誤解だらけの日本美術』(ともに光文社新書)、『国宝 よみがえる色彩』(双葉社スーパームック)、『後白河上皇 「絵巻物」の力で武士に勝った帝』(PHP新書)などがある。

 

はじめから国宝、なんてないのだ。 感性をひらいて日本美術を鑑賞する
小林泰三 (著), 新月ゆき (イラスト)

美術館で国宝を見てもなんだかピンとこないのは、感性や教養がないからではなく、作品との距離感や古びた色彩などにより作品が語りかける声が聞こえにくいから。本書では、国宝をはじめとした日本美術をデジタル復元で当時の色彩に戻し、制作された時の環境で鑑賞することで見えてくるストーリーを紹介。どんな作品も、はじめから国宝なのではない。ストーリーを理解することで感性がひらき、日本美術の鑑賞が自分のものになる!

 


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