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【第41回日本SF大賞】菅浩江さん『歓喜の歌 博物館惑星III』と林譲治さん『星系出雲の兵站』が大賞を受賞

第41回日本SF大賞が決定!

第41回日本SF大賞が決定!

日本SF作家クラブは2月20日、第41回日本SF大賞の受賞作を発表しました。

 

第41回日本SF大賞が決定!

2019年9月1日から2020年8月31日までに発表されたSF作品のうち、もっとも優れた作品に贈られる第41回日本SF大賞は、2月20日にZoomで行われた選考会の結果、次の通り大賞および特別賞の受賞作が決定しました。

なお、昨年11月に亡くなった作家・小林泰三さんに功績賞が贈られます。

 
<第41回日本SF大賞 受賞者・受賞作品>

【大賞】

◎菅浩江(すが・ひろえ)さん
『歓喜の歌 博物館惑星III』(早川書房)

『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』書影

『歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ』書影

◎林譲治(はやし・じょうじ)さん
『星系出雲の兵站』全9巻(ハヤカワ文庫JA)

『星系出雲の兵站 1』書影

『星系出雲の兵站 1』書影

 
【特別賞】
「立原透耶氏の中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績に対して」

立原透耶さん近影

立原透耶さん近影

 
【功績賞】
小林泰三(こばやし・やすみ)さん(小説家)

小林泰三さん近影(写真提供:東京創元社)

小林泰三さん近影(写真提供:東京創元社)

 
選考委員は、日下三蔵さん、小谷真理さん、白井弓子さん、三雲岳斗さん、森岡浩之さん。
贈賞式は2021年4月17日(土)、オンラインで行われます(開始時刻は後日発表)。

 
なお、最終候補作は以下の7作品でした。

<最終候補作>
◎『歓喜の歌 博物館惑星III』(菅浩江さん/早川書房)
◎『星系出雲の兵站』全9巻(林譲治さん/ハヤカワ文庫JA)
◎『タイタン』(野﨑まどさん/講談社)
◎立原透耶氏の中華圏SF作品の翻訳・紹介の業績に対して
◎『時のきざはし 現代中華SF傑作選』(編:立原透耶さん/新紀元社)
◎『日本SFの臨界点』全2巻(編:伴名練さん/ハヤカワ文庫JA)
◎『100文字SF』(北野勇作さん/ハヤカワ文庫JA)

 

受賞者プロフィール

 
【大賞】菅浩江(すが・ひろえ)さん

菅浩江さん近影

菅浩江さん近影

1963年生まれ、京都府出身。57歳。高校在学中の1980年に、同人グループ「星群の会」のオリジナル・アンソロジーに発表した短編「ブルー・フライト」が、矢野徹さんの推薦で『SF宝石』1981年4月号(光文社)に転載されデビュー。

1989年にソノラマ文庫から『ゆらぎの森のシエラ』を刊行し、本格的な作家活動に入る。1992年に『メルサスの少年』(新潮文庫/1991年)で第23回星雲賞日本長編部門、1993年に「そばかすのフィギュア」で第24回星雲賞日本短編部門を、2001年に『永遠の森 博物館惑星』(早川書房/2000年)で第32回星雲賞日本長編部門、第54回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を、2014年には『誰に見しょとて』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)で第13回センス・オブ・ジェンダー賞をそれぞれ受賞。『永遠の森 博物館惑星』は第21回、『誰に見しょとて』は第35回の日本SF大賞最終候補作にもなっている。

現在、東京創元社のウェブマガジン「Webミステリーズ!」にて、「妄想少女」を連載中。収益テストとしてnoteを更新中。

★note:https://note.com/hiroe_suga

 
【大賞】林譲治(はやし・じょうじ)さん

林譲治さん近影

林譲治さん近影

1962年生まれ、北海道出身。59歳。北海道大学医療短期技術大学部卒業後、臨床検査技師を経て、1995年『大日本帝国欧州電撃作戦』(高貫布士さんとの共著/飛天ノベルズ)で作家デビュー。以後、主に架空戦記小説で活躍する。

1999年から『機動戦士ガンダム』シリーズのノベライズ(角川スニーカー文庫)を手掛け、2000~2001年にハルキ文庫から刊行した《那国文明圏》シリーズ第一作『侵略者の平和』で本格的にSFに進出。

他の作品に『大赤斑追撃』(徳間デュアル文庫/2001年)、『ウロボロスの波動』(ハヤカワSFシリーズJコレクション/2002年)、『進化の設計者』(ハヤカワSFシリーズJコレクション/2007年)、『キャプテン・リリスと猫の宇宙船』(朝日ノベルズ/2010年)などがある。

2018年から2020年まで、第19代日本SF作家クラブ会長を務めた。2021年からハヤカワ文庫JAで新シリーズ『大日本帝国の銀河』をスタート。現在1巻まで刊行ずみ。

 
【特別賞】立原透耶(たちはら・とうや)さん

1969年生まれ、奈良県出身。52歳。大阪市立大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。大学在学中の1991年に「夢売りのたまご」(立原とうや名義)で第18回コバルト・ノベル大賞読者大賞を受賞、翌年『シャドウ・サークル 後継者の鈴』(コバルト文庫)でデビュー。

以後、《冥界武侠譚》シリーズ(集英社スーパーファンタジー文庫/1997~2000年)、『竜と宙』(幻狼ファンタジアノベルス/2008年)、《ひとり百物語 怪談実話集》シリーズ(メディアファクトリー、2009~2012年)など多数の作品を発表(2000年から現在の名義を使用)。2016~2018年にかけてその一部が『立原透耶著作集』全5巻(彩流社)にまとめられた。

中国文学研究者として、札幌の大学で教鞭を執る傍ら多くの論文やエッセイなどを執筆。2007年に横浜で開催された世界SF大会では、パネリストに韓松さん、 狩野あざみさんを招き、「アジアのSFと周辺事情~現状を語る」パネルの司会を務めた。呉岩さん「マウスパッド」をはじめとする中華SFの翻訳も多く手掛け、翻訳監修を務めた劉慈欣さん『三体』日本語版(早川書房/2019年)は第51回星雲賞海外長編部門を受賞した。最新の訳書に郝景芳『人之彼岸』 (浅田雅美さんとの共訳/新☆ハヤカワ・SF・シリーズ/2021年)がある。

 
【功績賞】小林泰三(こばやし・やすみ)さん

1962年生まれ、京都府出身。大阪大学大学院基礎工学研究科修了。1995年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞しデビュー。翌年、同作を表題とした単行本が角川書店から刊行され、併録の中編「酔歩する男」はSF読者からも注目を集め、第28回星雲賞日本短編部門の参考候補となった。

以後、ホラー、SF、ミステリを複雑に横断する多彩な作品を執筆。1998年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞を受賞。長編『AΩ』(角川書店/2001年)で第22回日本SF大賞最終候補、短編集『海を見る人』(ハヤカワSFシリーズJコレクション/2002年)で第23回日本SF大賞の最終候補となった。2012年の『天獄と地国』(ハヤカワ文庫JA)で第43回星雲賞日本長編部門を、2013年の『アリス殺し』(創元クライム・クラブ)で第8回啓文堂大賞文芸書大賞と“上伊那の高校生が選ぶ「読書大賞」2015”を、2016年の『ウルトラマンF』(TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)で第48回星雲賞日本長編部門を、それぞれ受賞した。

他の作品に、『密室・殺人』(角川書店/1998年)、『人獣細工』(角川ホラー文庫/1999年)、『天体の回転について』(ハヤカワSFシリーズJコレクション/2008年)、『人外サーカス』(KADOKAWA/2018年)、『ティンカー・ベル殺し』(創元クライム・クラブ/2020年)、『未来からの脱出』(KADOKAWA/2020年)などがある。20年11月23日に逝去、享年58。

 

日本SF大賞について

日本SF大賞は、一般社団法人「日本SF作家クラブ」が1980年に創設し、主催している文学賞です。毎年9月1日から翌8月31日までの1年間に発表された作品を対象としています。ピクシブ株式会社と株式会社ブックリスタが協賛。

大賞受賞作には正賞として賞状とトロフィー、副賞として賞金100万円(但し、受賞が複数の場合は等分)が贈られます。また、特別賞、功績賞には正賞として賞状とトロフィーが贈られます。

トロフィー原型デザイン:横山宏/写真:藤井太洋

トロフィー原型デザイン:横山宏/写真:藤井太洋

第34回より、候補作選出にあたって「エントリー制」を導入。日本SF作家クラブ会員だけでなく、一般のファンや読者も、同等の権利でエントリーに参加できます。

エントリーされた作品のなかから、日本SF作家クラブ会員の会員投票によって、5作品ほどの最終候補作品が選ばれます。そして、「選考委員の討議」により、最終候補作品のなかから日本SF大賞が決定します。

エントリーできる作品は「出版物や映像作品、および現実に起きた出来事や製品も含む」となっており、「はやぶさ帰還」などの出来事や、「ボーカロイド」「ASIMO」などの製品も対象となります。

エントリーの際の評価基準は、SFとしてすぐれた作品であり、「このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品」や「SFの歴史に新たな側面を付け加えた作品」となります。

自薦・他薦は問わず、同人誌、インターネット上の活動、自主制作ゲーム・動画・音楽等、インディーズの作品全般もエントリーできます。

 

歓喜の歌 博物館惑星3
菅 浩江 (著), 十日町たけひろ (イラスト)

地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館苑――〈アフロディーテ〉。そこには、全世界のありとあらゆる美術品、動植物が収められている。音楽・舞台・文芸担当の〈ミューズ〉、絵画・工芸担当の〈アテナ〉、そして動・植物担当の〈デメテル〉――女神の名を冠した各専門部署では、データベース・コンピュータに頭脳を直接接続させた学芸員たちが、収蔵品の分析鑑定・分類保存をとおして”美”の追究に勤しんでいた。そんな博物館惑星に赴任したばかりの新人自警団員・兵藤健は、同じく新人で、総合管轄部署〈アポロン〉配属の尚美・シャハムらとともに、創立50周年記念フェスティバルの夜、国際的な贋作組織の摘発に臨むが――。
あのダニエル・キイスが推薦した名作『永遠の森 博物館惑星』、その19年ぶりの続篇『不見の月 博物館惑星II』に続く、シリーズ第3作。

星系出雲の兵站 1 (ハヤカワ文庫JA)
林 譲治 (著), Rey.Hori (イラスト)

人類の播種船により植民された五星系文明。辺境の壱岐星系で人類外の産物らしき無人衛星が発見された。非常事態に出雲星系を根拠地とするコンソーシアム艦隊は、参謀本部の水神魁吾、軍務局の火伏礼二両大佐の壱岐派遣を決定、内政介入を企図する。壱岐政府筆頭執政官のタオ迫水はそれに対抗し、主権確保に奔走する。双方の政治的・軍事的思惑が入り乱れるなか、衛星の正体が判明する――新ミリタリーSFシリーズ開幕。

 
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第41回日本SF大賞・受賞作決定! – SFWJ:日本SF大賞

 


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