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木内昇さん『かたばみ』が山中由貴さん主催「第10回山中賞」を受賞!

高知市の「TSUTAYA中万々(なかまま)店」の書店員であり、フリーペーパー「なかましんぶん」の編集長を務める山中由貴さんが、芥川・直木賞の発表に合わせて半年に一度、お客様に「どうしても読んで欲しい」と思った本の中(翻訳書も含め、ジャンルは問わず)から独自に選出する「第10回山中賞」を、直木賞作家・木内昇さんの『かたばみ』(KADOKAWA)が受賞しました。

受賞作の『かたばみ』は昨年8月に刊行された、血の繋がらない親子を描く、笑いと涙のホームドラマです。

★試し読み:https://kadobun.jp/trial/katabami/entry-84667.html

 

山中由貴さん コメント

ついに今回で10回目を迎えます!ただただ小説が好きではじめた、私、山中由貴が独断で本当に面白かった本に贈呈する山中賞。
第10回山中賞は、木内昇さんの『かたばみ』です!
太平洋戦争真っ只中から戦後までのつらく厳しい時代のおはなしとあって、気合いを入れて読まなければ、と身構えてしまったけれど、もうど直球に、笑って泣いて気持ちが晴れやかになる、素晴らしい物語でした!!!
真面目でがんばり屋の主人公、山岡悌子のとんちんかんな奮闘や、ひ弱でへなちょこな中津川権蔵に何度吹き出したことか。悌子は学校の教員として、何が正しくて何が間違いなのか、手探りで「教育」というものに向き合い、流されるばかりだった権蔵もまた、自分のやりたいことを見つけて生き生きしていきます。ちょっと普通ではないなりゆきで人生を共にすることになったふたりの関係性も素敵です。彼らが、ともに暮らす家族と足りない部分を補い合いながら、大人ひとりが生き延びるのも大変な時代に子どもたちを守り育てていく。その毎日の平凡な営みが、力強くすとんと胸に収まって、ぽかぽかあたたかくなります。
もちろんいまも戦争はなくならない。
『かたばみ』では、戦争という「非日常」のなかでも彼らが懸命に「日常」を生きる姿がとても眩しい。だからこそ「日常」の大切さがひしひしと伝わって、涙が出ました。
あなたにも悌子や権蔵に会いにきてほしい。楽しくて、あったかくて、きっとたくさん元気をもらえると思います。

 
★受賞作発表動画はこちら:https://twitter.com/NAKAMAshinbun/status/1747198534011805921

 

受賞の報を受けた木内昇さんの喜びのコメント

このたびは、山中賞をいただきまして、ありがとうございました!

本に携わる仕事の中でも、書店員さんは読者の一番近くにいて、現場の声をもっとも早く正確に把握できる、とても重要な役目を担っておられます。私もこの仕事をはじめてから、書店員さんたちと親しくさせていただく機会を得て、その読書量の多さ、読みの確かさ、書評の見事さなどなどに感銘し、敬意を抱いてきました。それだけに、このたび書店員さんの賞に選んでいただいたことは、とても光栄に思っています。

「かたばみ」は戦中戦後を舞台に、ある家族を描いた物語です。人生は予期せぬことの連続で、それは戦時中に限ったことではありません。挫折や失恋や病気や介護や天災……自分の描いた理想はないことは誰にも起こります。もちろん日々の楽しみや心温まる交流、なにかを成し遂げた達成感など、光を放つ事柄も人生にはたくさん詰まっているでしょう。

この小説では、人生に起こる陰ではなく光のほうに心を添わせている人を描きたかったのです。とはいえ、現実に蓋をして、なんでもかんでも前向きに!というのとは違います。起こったことを受け止めながらも、ほんの少しだけ光のほうに体を向けている人たちと言えばいいでしょうか。視点の置き方で、人生の景色は変わってくるような気がしています。

山中賞を機に、多くの方に本書を手に取っていただければうれしいです。

 

受賞作『かたばみ』について

 
【あらすじ】

「家族に挫折したら、どうすればいいんですか?」
血の繋がらない親子を描く、笑いと涙のホームドラマ

太平洋戦争の最中、故郷の岐阜から上京し、日本女子体育専門学校で槍投げ選手として活躍していた山岡悌子(やまおか・ていこ)は、肩を壊したのをきっかけに引退し、国民学校の代用教員となった。西東京の小金井で教師生活を始めた悌子は、幼馴染みで早稲田大学野球部のエース神代清一(じんだい・せいいち)と結婚するつもりでいたが、恋に破れ、下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。やがて、女性の生き方もままならない戦後の混乱と高度成長期の中、よんどころない事情で家族を持った悌子の行く末は……。

 
※「かたばみ」 カタバミ科の多年草。クローバーのような葉を持ち、非常に繁殖力が強く、「家が絶えない」に通じることから、江戸時代にはよく家紋にも用いられた。花言葉は「母の優しさ」「輝く心」など。

 

受賞者プロフィール

木内昇(きうち・のぼり)さんは、1967年生まれ、東京都出身。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。

2008年に刊行した『茗荷谷の猫』で話題となり、翌年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2011年に『漂砂のうたう』で直木賞、2014年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞の3つの賞を受賞した。

本書は、新聞連載時から話題沸騰となった家族小説である。他の作品に『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蝋燭』『万波を翔る』『占(うら)』『剛心』など。

 

かたばみ
木内 昇 (著)

 
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