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「憲法作成請負人」の視点から、革命の知られざる成果を捉える〈新・フランス革命史〉『シィエスのフランス革命 「過激中道派」の誕生』が刊行

山﨑耕一さん著『シィエスのフランス革命 「過激中道派」の誕生』(NHKブックス)

山﨑耕一さん著『シィエスのフランス革命 「過激中道派」の誕生』(NHKブックス)

山﨑耕一さんによる、憲法と議会を軸に展開する〈新・フランス革命史〉『シィエスのフランス革命 「過激中道派」の誕生』がNHK出版より刊行されました。

 

「人民主権」の危険性を痛感するシィエスが実現したのは、立法権よりも行政権を重視する近代的な代表制であり、今もフランス政治に受け継がれる「極端な中道主義」だった――。

政治パンフレット『第三身分とは何か』でフランス革命に火をつけた理論家シィエスが、その後政治の第一線に立ち続け、ナポレオンを呼び込んで自ら革命に終止符を打ったことは知られているでしょうか。

本書は、シィエスの視点から激動の10年間を簡潔に描くことで、革命の全体像と、注目されてこなかった歴史的意義を見出します。

E=J・シィエス肖像

E=J・シィエス肖像

【「序章」より】

《本書の主人公であるエマニュエル= ジョゼフ・シィエス(1748-1836)は、1789年1月に刊行された政治パンフレット『第三身分とは何か』の著者として知られる。確かにこのパンフレットは、折からの全国三部会開催の知らせを受けて、新たな政治改革への期待に胸をふくらませていたフランス国民に、斬新な希望と展望を与えた。すぐにベストセラーとなり、著者のシィエスは一躍、有名人になって、首都パリの第三身分議員に選出されることになった。

 
だが『第三身分とは何か』が有名になり過ぎたために、1789年から99年までの10年間に及ぶフランス革命においてシィエスが果たした役割には、あまり関心が寄せられなかったように思われる。しかしこの10年間、シィエスはほとんど常に政治の第一線に位置していて、議会が進むべき方向を示唆し続けた。革命が激動の時代だったことを思えば、この点は注目に値する。

 
そのシィエスも、1793年夏から翌94年夏までの1年間は、政治の表舞台から姿を消す。これは「革命政府の時代」もしくは「山岳派独裁の時代」と呼ばれる時期で、対外戦争と国内の反革命反乱に対処するために、ロベスピエールを中心とする公安委員会が独裁的な権力を握り、反対派を次々とギロチンで処刑した、恐怖政治の時代である。

 
しかし、恐怖政治が終わるとシィエスはすぐに復帰して、1799年にナポレオン・ボナパルトが政治権力を握るまで、再び政治の第一線に立ち続けることになる。このシィエスに着目することで、革命の表面におけるドラマチックな動きに目を奪われることなく、フランス革命はどのような共和政を生み出したのか、あるいはどのような共和政しか生み出すことができなかったのかを、見極めることができるだろう。》

 

本書の構成

革命以前の地方区分(州名)と本書に出てくる地名

序章 フランス革命の論じ方

第一章 アンシアン・レジームとは何か――「特権による自由」と初期シィエスの思想

第二章 1789年=「シィエスの年」

第三章 慧眼の理論家のつまずき――孤立するシィエス

第四章 革命のモグラ――いかに恐怖政治を乗り切るか

第五章 立法府より執行府を――95年憲法は何を変えたか

第六章 ナポレオンとの同床異夢

終章 過激中道派の先駆者

参考文献

あとがき

関連年表

人名索引

 

著者プロフィール

山﨑耕一(やまざき・こういち)さんは、1950年生まれ、神奈川県出身。一橋大学社会学部卒業、同大大学院社会学研究科博士課程を単位取得退学。博士(社会学)。武蔵大学人文学部教授などを経て2000年から2014年まで一橋大学社会科学古典資料センター教授。2005年から国際フランス革命史委員会副委員長、2015-22年は委員長。

著書に『啓蒙運動とフランス革命 革命家バレールの誕生』(刀水書房)、『フランス革命 「共和国」の誕生』(刀水書房)、共編著に『比較革命史の新地平 イギリス革命・フランス革命・明治維新』、『フランス革命史の現在』(ともに山川出版社)、訳書にR.セディヨ『フランス革命の代償』(草思社文庫)など。

 

シィエスのフランス革命: 「過激中道派」の誕生 (NHKブックス)
山﨑 耕一 (著)

まったく新しい革命史

パンフレット『第三身分とは何か』で革命を引き起こし、ナポレオンを引き込んで革命に終止符を打つまで一貫して革命の表舞台に立ち続けたE. J=シィエスの視点から激動の10年間を描き、大革命の全体像とその成果をとらえる

 


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