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宮部みゆきさん〈12の俳句と12の短編小説〉『ぼんぼん彩句』が刊行

角川文化振興財団は、宮部みゆきさんの最新刊『ぼんぼん彩句』をKADOKAWAより刊行しました。

 

宮部みゆきさんの新たなる創作への挑戦は、ここから始まる!

《まったく触れたことがなかった17音の俳句の世界に、私は魅せられてしまいました。
第一巻の12作では、まだメンバー全員の句をカバーしきっていませんし、二巻、三巻と続けていきたい。
「凡凡」な眼差しと、身近な暮らしのなかに彩りを見出す俳諧の心を大切に、創作を続けていきたいと思っております。》
――宮部みゆきさん

 
とある一冊の本との出会いから、俳句に興味を抱かれた宮部みゆきさんが、仕事仲間とともに始めた句会。3ヵ月に1度ぐらいのペースで会を開いていくうちに、「ひとつひとつの俳句の裏側にはどんな物語は潜んでいるのだろう」という思いがつのり、本作の執筆が始まります。

 
本書は、会で投句されたたくさんの句の中から宮部さんが12句を選び、宮部さんの深い洞察力と鑑賞力で生み出した繊細で彩り豊かに輝く12の物語を、1冊にまとめたものです。

初めに各章タイトルでもある俳句を読み、その後に小説を、そして最後にもう一度俳句を読むと、今までの小説の読後感とはまた違った新しい発見があるはずです。

★『ぼんぼん彩句』特設サイト:https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/bonbonsaiku/

 

『ぼんぼん彩句』の俳句および小説のあらすじ

 
1.[俳句] 枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる

[小説あらすじ]
寿退社後に、婚約者に裏切られ婚約を破棄されたアツコは、ある時、乗ったことのない路線バスで初めて終点まで乗車してみた。その終点には小さな丘と公園が広がっていたのだが……。孤独な女性のやり場のない想いを綴った物語。

 
2.[俳句] 鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす

[小説あらすじ]
16歳で亡くなった女友達のことをいまだに忘れられない夫と夫の実家の人々。いつまでも、なくなった友達に固執する家族から逃げるように離婚を決意した知花は、最後に仕返しをしようとある行動に出た……。奇妙な家族の執拗な想いと行動を描いたホラー的な物語。

 
3.[俳句] プレゼントコートマフラームートンブーツ

[小説あらすじ]
ぬいぐるみ作りが大好きなアタル君は、その日、学級閉鎖でひとりでマンションに帰ってきていた。そこに見たこともない女性が突然現れて、アタル君に詰めよってきたのだが……。子供の視点で綴られたかわいらしいお話。

 
4.[俳句] 散ることは実るためなり桃の花

[小説あらすじ]
昭子が都心のデパートに出かけたのは、好きな海外絵本作家の原画展を見に行くためだった。そのデパートで偶然、娘婿が全く知らない女性と仲睦まじくデートしているところを見かけてしまい……。夫のことを気遣って、少しずつおかしくなってゆく娘を描いた物語。

 
5.[俳句] 異国より訪れし婿墓洗う

[小説あらすじ]
娘が国際結婚をして、外国人の婿の父親となった克典は、娘夫婦との今後のことも考えて、開発されたばかりの万能薬・ミラクルシードの使用をあきらめ、鬼籍に入ってしまったのだった……。本作唯一の近未来SF。

 
6.[俳句] 月隠るついさっきまで人だった

[小説あらすじ]
美人の姉についに恋人ができたようだ。はじめは楽しそうにしていた姉も、しばらくするとなぜか暗い表情を見せるようになっていった。あるとき、姉と彼氏に偶然街中で出会い、そこで初めて彼氏を紹介されたのだが……。付き合ったとたんにストーカーと化した男を描いたサスペンス。

 
7.[俳句] 窓際のゴーヤカーテン実は二つ

[小説あらすじ]
強い西日を遮光するために植えたゴーヤが、真冬になっても枯れなかった。しかも実まで着けたまま。原因はわからなかったが、ある時、夫の哲司がついにその実をもいで……。仲睦まじい夫婦が体験する不思議なお話。

 
8.[俳句] 山降りる旅駅ごとに花ひらき

[小説あらすじ]
一族の中では特に目立つところもなく地味に暮らしていた春恵は、派手な性格で派手な顔立ちの母や妹からいつもいじめに近い扱いを受けていた。祖父が亡くなり、その形見分けの会に出席するため、思い出の旅館に向かうと……。遺産を巡る家族の中での諍いを描いた物語。

 
9.[俳句] 薄闇や苔むす墓石に蜥蜴の子

[小説あらすじ]
夏休みのある日、初めて入った裏山で出会った小さな蜥蜴。その蜥蜴に導かれるようにして、ケンイチは土の中から虫メガネを発見した。名前が書いてあったその虫メガネを交番に届けたことから、事件は始まった……。男子小学生の小さな冒険を描いたサスペンス。

 
10.[俳句] 薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ

[小説あらすじ]
ケイタという悪と付き合ってしまったミエコは、ケイタと別れようと連絡を絶っていたが、ある時、ケイタらに待ち伏せされ、拉致られて廃病院で一晩過ごすことになってしまい……。優しいエネルギーの集合体に心癒されるホラー小説。

 
11.[俳句] 冬晴れの遠出の先の野辺送り

[小説あらすじ]
兄を自殺同然の事故で無くした私は、昔ながらの徒歩での野辺送りの途中で見知らぬ中学生と出会った。その中学生は、なぜか兄の野毛送りに同行してくれたのだが……。日本の原風景を描いた里山の物語。

 
12.[俳句] 同じ飯同じ菜を食ふ春日和

[小説あらすじ]
一人娘の知花が一歳半の時に初めて見つけた、美しい菜の花畑が見渡せる展望台。数年に一度は必ず訪れるその場所は、僕ら家族のひそやかな楽しみであり、故郷のような存在でもあった。しかし、その展望台も年月と共に劣化が進み、ついに……。秘密の展望台とともに歩む家族の歴史を描いた物語。

 

著者プロフィール

撮影:塔下智士

撮影:塔下智士

著者の宮部みゆき(みやべ・みゆき)さんは、1960年生まれ、東京都出身。法律事務所等に勤務の後、1987年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。

1992年『龍は眠る』で第45回日本推理作家協会賞長編部門、同年『本所深川ふしぎ草紙』で第13回吉川英治文学新人賞、1993年『火車』で第6回山本周五郎賞、1997年『蒲生邸事件』で第18回日本SF大賞、1999年『理由』で第120回直木賞、2001年『模倣犯』で第55回毎日出版文化賞特別賞、第5回司馬遼太郎賞、第52回芸術選奨文部科学大臣賞文学部門、2007年『名もなき毒』で第41回吉川英治文学賞、2008年英訳版『BRAVE STORY』でThe Batchelder Award、2022年に第70回菊池寛賞を受賞。

 

ぼんぼん彩句
宮部 みゆき (著)

俳句と小説の新しい出会い。17音の奥に潜む繊細で彩り豊かな12の物語。

宮部みゆきが深い洞察力と鑑賞力で12の俳句から紡ぎだした玉手箱。社会派からホラー、SFに至るまで、あらゆるジャンルに足跡を残してきた宮部文学の新たなる挑戦!

装丁:松岡史恵(ニジソラ)
装画/挿絵:西村ツチカ

 
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