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「私」たちは、厄介だ――中野信子さんが自身の半生と脳科学の知見から人間社会を解き明かす『脳の闇』が刊行

脳科学者・中野信子さんが5年にわたり、自身の半生と脳科学を通して現代社会の裏側を考察した『脳の闇』が新潮社より刊行されました。

 

人間の厄介さを知っていますか

迷わない人は、信用できない――そう著者は言います。ブレない人、他人の意見に左右されない人というのは得てして称賛されるものですが、社会的存在である人間は、迷い、戸惑い、他者の言葉を聞きながら何かを選択せざるを得ない生きものであり、迷うことこそが、ヒト脳が本来もつ高度で美しい機能だからです。

 
本書では、脳科学にもとづいてヒト脳の仕組みとはたらきをひもときながら、承認欲求と不安、行き過ぎた正義と他者へのバッシング、ポジティブ思考の落とし穴など、私たちが無意識のうちに抱えこんでしまう深い闇とそれがもたらす現代社会の病理について鮮やかに解き明かします。

また、子どもの頃から感じていた周囲との分断や生きづらさなど“やっかいな”著者自身の半生についても、客観的かつストレートに語られています。

「生きづらいのは脳のせい」だと心が軽くなるか、見たくない真実を突きつけられたような境地になるか――迷い、戸惑い、揺らぐ価値観を面白がるような気持ちで、読んでみてはいかがでしょうか。

 
<内容紹介>

ブレない人、正しい人だと言われたい、他人に認められたい……社会集団の中で人は誰もが承認欲求と無縁ではいられない。無意識の情動に流されながら、あいまいで不安な状態を嫌い、自らを正義に置くことで他者を糾弾し安心を得たがる――現代の構造的病理を見つめながら、自身の人生と脳科学の知見を媒介に、ヒト脳に備わる深い闇を鮮やかに解き明かす。『小説新潮』連載5年にわたった思考の軌跡を一冊に凝縮。

 

本書の構成

はじめに

第一章 承認欲求と不安
ヒトに特異的な欲望と快楽/誰もが持っている「空洞」/理性に情動がついていかない/「共感」というスキル/好意と「あわよくば」のあいだ/脳が恋愛のさなかにあるとき/不安感情が内面に暴発するとき/不安と戦わない、という方法

第二章 脳は、自由を嫌う
タイムプレッシャーによる意思決定/「迷わない人」は信用できない/ブランドと権威を認知する脳の働き/「解は不定」の居心地悪さ/人はかくも騙されやすい/迷信・俗信が確信に変わるとき/「わからない」を嫌う脳/あいまいさを保持しておく知力/誰しも中立ではありえない/信頼できる意思決定をしてくれる誰か

第三章 正義中毒
「正しさハラスメント」/正義を執行する快楽/集団を守るための不寛容/「美しい」=「正しい」のトリック/ネアンデルタール人と現生人類の違い/「倫理的に正しい」への警戒/糾弾は自省よりたやすい/「不謹慎」を叩く快感/民の裁き訣別するために/誰しもが陥る正義中毒メタ認知が中毒状態を乗り越える/「どうでもいい」という絶妙な距離感

第四章 健康という病
性格傾向の3類型/「いい子であれ」という無言のメッセージ/片頭痛持ちは賢い?/不健康自慢がウザいわけ/自らに傷を負わせる作為症/自傷と創作の痛々しさ/健康を崇め奉る風潮/リスキー・シフトとコーシャス・シフト

第五章 ポジティブとネガティブのあいだ
解決できない感情という重荷/アドバイスという名の自慢話/ナルシシストと自己肯定感/自身の醜さと闇を知る人/助けられなかった人たち/ポジティブ思考の暗部/抑うつ的反芻という思考習慣/音楽を聴けば頭が良くなる、は本当か/音楽は灰白質の神経細胞を増やす

第六章 やっかいな「私」
子どもの頃から感じた分断/王道イメージへの抵抗感/一番安いものを選ぶタイプ/気難しい自分の扱い方/過敏な感覚とこだわりと/待つという能動的選択/極上の孤独は蜜の味/インナー・ヴォイスと毒親問題
 
第七章 女であるということ
女性の寂しさの肌感覚/結婚は合理的か/「科学者」でなく「主婦」として評価されるマリー・キュリー/理系と女性は両立しない?/女性に対するステレオタイプ脅威/フェイルセーフの女子アナ戦略/銃と男とテストステロン

第八章 言語と時間について
「始めに言葉ありき」の解釈/人は真実など欲していない/ネガティブ感情とストレスホルモン/急急如律令と建設的批判/仮説としての普遍物語/自我とディスコミュニケーション/双子語と個人語/「ヴァルダロの恋人たち」の時間/「話が通じる」という奇跡/コミュニケーション力の測り方/杞憂と言い切れない日本人気質/人間は安全より不安に惹かれる/新世紀より世紀末が好き/時間軸と未来予測
未来や過去を思えるのは人間だけ/何かが終われば、新しい何かが始まる/人間の本質としての新奇探索性

あとがき

 

著者プロフィール

著者の中野信子(なかの・のぶこ)さんは、1975(昭和50)年生まれ、東京都出身。東京大学工学部応用化学科卒業。同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳科学者、医学博士。

現在、東日本国際大学特任教授、京都芸術大学客員教授。『不倫』『毒親』など著書多数。

 

脳の闇 (新潮新書)
中野 信子 (著)

ブレない人、正しい人と言われたい、他人に認められたい……集団の中で、人は常に承認欲求と無縁ではいられない。
ともすれば無意識の情動に流され、あいまいで不安な状態を嫌う脳の仕組みは、深淵にして実にやっかいなのだ――
自身の人生と脳科学の知見を通して、現代社会の病理と私たち人間の脳に備わる深い闇を鮮やかに解き明かす。
五年にわたる思索のエッセンスを一冊に凝縮した、衝撃の人間論!

 


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