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「悪」は排除せず、正しく取り込むべし!廣井亮一さん『悪さをしない子は悪人になります』が刊行

廣井亮一さん著『悪さをしない子は悪人になります』

廣井亮一さん著『悪さをしない子は悪人になります』

元家庭裁判所調査官の廣井亮一さんが、実際に数百人の非行少年たちを更生に導いてきた経験から、「悪」との向き合い方、更生のさまざまな方法について語る『悪さをしない子は悪人になります』が新潮社より刊行されました。

 

百人の非行少年たちを更生に導いた元家庭裁判所調査官による「悪理学」

少年が何らかの問題を起こした時、私たちは得てして「なんて悪い奴だ」「そのねじ曲がった根性をたたき直す必要がある」などと考えがちです。この場合、私たちは「問題=少年」とみています。

 
しかし、「最初から悪い」少年などほとんどいません。問題を起こす少年が概して恵まれない環境にいることは、私たちも経験的に知っています。実際には「少年を取り巻く関係の歪みが『問題』という形で少年を通じて表現されている」と考えた方が自然なのです。この場合、関係の歪みを調整する様々なアプローチを取れば、少年非行や問題行動などは改善されていく可能性が高い、と考えられます。

 
本書の著者は18年間にわたり家庭裁判所の調査官を務め、実際に数百人の非行少年たちを更生に導いてきました。その経験から「悪」はそれ自体として排除すべきものではなく、正しく位置づけて活用すべきもの、と考えるに至りました。「悪」それ自体は、負の方向に発散されているとはいえ、何らかのエネルギーが発露したものなわけですから、正しく方向づけてやれば、生きるためのエネルギーとして活用できるはずなのです。

 
本書では、「悪」に関するさまざまな考察を「悪理学」として展開すると同時に、非行を治すための技法をたくさん紹介しています。司法による強制と臨床的関わりによる受容を組み合わせたアプローチ、家族全体を一つの「人格」と見立ててその歪みを調整するアプローチなどのほか、「家の構造と間取り」に注目して非行からの更生を目指すユニークなアプローチなども紹介されています。矯正教育に携わる実務家や教育関係者だけでなく、子を持つ親ならどなたでも示唆するところの多い内容になっています。

 
<『悪さをしない子は悪人になります』内容紹介>

「悪」は排除するべきものではない。悪と善は相対的なものに過ぎない。大事なのは、総体としての生身の人間の中に「悪」を正しく位置づけることだ。罪を犯し、非行に走った少年であっても、「悪」を正しくその子の中に位置づけてやれば、それは人生をプラスの方向に導くためのエネルギーともなるのだ──。家庭裁判所調査官として、数百人の非行少年を更生に導いてきた著者が説く「悪理学」。

 

本書の構成

はじめに――非行少年と「悪」

I 悪理学
1 「悪」の原理
2 攻撃性と依存性
3 「悪」と攻撃性の歴史的変遷
4 犯罪・非行の4類型

II 非行を治す
1 家族で治す――家族療法
2 家と間取りで治す――間取図アプローチ
3 法と臨床で治す――司法臨床
4 学校と家庭裁判所で治す――関係機関のアプローチ
5 権威と権力で治す――アンコモン・アプローチ

おわりに

 

著者プロフィール

著者の廣井亮一(ひろい・りょういち)さんは、1957年生まれ、新潟県出身。立命館大学特任教授。

新潟大学人文学部卒業後、家庭裁判所調査官として18年間務める。その後、和歌山大学助教授、京都女子大学准教授を経て、2008年に立命館大学教授に。2022年より現職。臨床心理士、博士(学術)。専門は司法臨床。

 

 


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