本のページ

SINCE 1991

男だから女子におごらなきゃ、ってほんと? 魚住直子さん×西村ツチカさん『考えたことなかった』が刊行

魚住直子さん作・西村ツチカさん絵『考えたことなかった』

魚住直子さん作・西村ツチカさん絵『考えたことなかった』

魚住直子さん作・西村ツチカさん絵『考えたことなかった』が偕成社より刊行されました。本書は、SAPIX小学部が開催する「さぴあ作文コンクール」の課題図書にもなった『いいたいことがあります!』の姉妹編です。

 

日常の中に潜むジェンダーバイアスに気づく男の子の物語『考えたことなかった』

【作品のあらすじ】

ある日、中学2年生の颯太は、祖父母の家へ行く道すがら、言葉を喋るふしぎなネコに声をかけられる。「わたしは、未来のおまえなのにょー。」喋るネコに面食らう颯太だが、ネコによると、このままだと颯太の将来が大変なことになるらしい。いったい、どうして?

ネコとの出会いから、さまざまなことを考えはじめ、颯太は、ジェンダーバイアスや競争主義とどこかでつながりあった、社会のしくみに気づいていく。

颯太が気づいたこととは? そして、ネコの正体、颯太の未来はどうなるのか?

 

日常生活から「社会のしくみ」を浮かび上がらせるストーリー

野球部員として練習に精を出す颯太は、母親と妹の陽菜子と3人暮らし。父親は単身赴任で別居していて、近所には父方の祖父母が住んでいます。

この物語で颯太が経験するのは、言葉を話すネコに出会う、ということ以外は、それほど変わったことではありません。塾で一緒だった女の子と出かけることになったり、近所の祖父母の家に届け物に行ったり……。

しかしその中には少しずつ、社会のしくみが見え隠れします。

 
家では洗い物や洗濯など、家事をやるように言われているものの、祖父母の家ではおじいちゃんが「いい、いい。そんなの、おばあちゃんがやるから」と言い、なんでもおばあちゃんがやってくれて、颯太は「楽だなあ」と感じます。そして、おじいちゃんはいつも座ったまま。

女友達の原さんと出かけた時には、「男だし」と何気なく飲み物を奢ろうとますが、原さんに「なんで?」と言われ、答えに窮します。

祖父母の家での「楽さ、居心地のよさ」、無意識に女の子に奢ろうとした「男だから」という感情は、どこからくるのか?

これまで「考えたことなかった」ことに颯太が目を向けていくにつれ、読者も同じように、考えていなかったこと、気づいていなかったことが身近にあるかも、と思うかもしれません。

 
はたして颯太は喋るネコが告げた未来を、変えることができるのか? ひとりの男子中学生の目を通して、日常のひっかかりから社会のしくみを考えはじめる物語です。

 
刊行に合わせ、弁護士で『これからの男の子たちへ』の著者・太田啓子さんが書評を寄せています。

★無自覚な「男らしさ」の呪縛に気づいたとき(ウェブマガジン「Kaisei web」より):https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/review/2210review/

 
また、刊行前レビューでも好評の声が多数寄せられています。

★Net Galleyの刊行前レビュー:https://www.netgalley.jp/catalog/book/268633

 

前作『いいたいことがあります!』は、SAPIX小学部「さぴあ作文コンクール」課題図書

姉妹編とも言える前作『いいたいことがあります!』では、颯太の妹、小学6年生の陽菜子が主人公。母親から「勉強しなさい」「家事をやりなさい」と言われること、兄の颯太は忙しいから家事をしなくても許されることなど、生活のさまざまなことに対してモヤモヤしています。そんなある日、陽菜子はふしぎな女の子と出会い……。

同作は、SAPIX小学部が実施している「さぴあ作文コンクール」で課題図書に選ばれ、受験問題などにも使われて、多くの反響がありました。

今回の『考えたことなかった』は、またちがった視点から物事を見て考える、新たな物語となっています。『いいたいことがあります!』に続けて読んでも、単体で読んでも楽しめます。

性別問わず、幅広い年齢の方におススメの作品です。

 
★『いいたいことがあります!』を読んで、「らしさ」ってなんだろうと考える〔田中俊之さん/大正大学准教授(社会学、男性学)〕(ウェブマガジン「Kaisei web」より):https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/review/rv_1809/

 

著者プロフィール

 
■作:魚住直子(うおずみ・なおこ)さん

『非・バランス』で第36回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。『Two Trains』で第57回小学館児童出版文化賞、『園芸少年』で第50回日本児童文学者協会賞、『だいじょうぶくん』で第32回ひろすけ童話賞を受賞。

作品に『いいたいことがあります!』『クマのあたりまえ』『みかん、好き?』などがある。

 
■絵:西村ツチカ(にしむら・つちか)さん

漫画家。2010年、短篇集『なかよし団の冒険』でデビュー。同作で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、『北極百貨店のコンシェルジュさん』で第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。

漫画作品に『さよーならみなさん』『アイスバーン』、装画・挿絵を手掛けた作品に『シンドローム』『さいごのゆうれい』『火守』などがある。

 

考えたことなかった
魚住直子 (著), 西村ツチカ (イラスト)

ある日、ネコに声をかけられた。
「わたしは、未来のおまえなのにょー。」
このままだと、おれの将来、たいへんなことになるらしい。

いったい、どうして?

知らないうちにさせられてる競争。
「ふつう」は男子がおごるもの?
おばあちゃんがなんでもやってくれる祖父母の家の「居心地の良さ」。

どこかでつながりあった社会のしくみに気づいて
考えはじめる男の子の物語。

<既刊>

いいたいことがあります!
西村 ツチカ (イラスト), 魚住 直子 (著)

陽菜子は、中学受験をひかえた小学6年生。勉強も家の手伝いもするよういわれているが、いそがしい兄は家事をしなくていいらしい。
もやもやした気持ちをかかえてすごすある日、ふしぎな女の子と出会って……!?
あたらしいガール・ミーツ・ガール!

親は、自分が絶対に正しいと思いこんでいる。
自分の子どもだから、絶対にわかりあえると信じている。
でも、正しさはひとつじゃない。
わかりあえるのも、相手の気持ちを大事にしたときだけだ。それは他人同士のときと同じだ。
わたしは、親に支配されたくない。わたしは、わたしの道を行きたい。
(本文より)

 
【関連】
無自覚な「男らしさ」の呪縛に気づいたとき(太田啓子・評) | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン
〈書評〉いいたいことがあります! 魚住直子・作  西村ツチカ・絵 | Kaisei web | 偕成社のウェブマガジン

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です