老いを意識する時「読まずに死ねない本」がこんなにある! 前田速夫さん『老年の読書』が刊行

前田速夫さん著『老年の読書』
文芸誌『新潮』前編集長・前田速夫さん著『老年の読書』(新潮選書)が新潮社より刊行されました。
文芸誌の元編集長が「老い」と「死」にまつわる古今東西の名著から50冊以上を選りすぐって懇切に解説
誰しも年を重ね、行く末を思う時があります。老いと、その先にある死を意識する時、どんな人でも不安になるのではないでしょうか。そんな時には読書が支えになってくれます。古今東西、多くの文人や哲学者が「老い」と「死」について考えてきたからです。
『老年の読書』は、自身も老境を迎え闘病も体験した著者が、古代ギリシア・ローマのテオプラストスやキケロなどの文人・哲学者から現代日本の山田風太郎さんや古井由吉さんなどの作家まで、老いと死について綴られた数多くの名著から「老いに克つ、老いに向き合う、老いの悩みに答える」ための箴言を抜き出し、懇切に解説を加えた読書案内です。
併せて、長年にわたり文芸誌の編集に携わってきた著者の、川端康成や宇野千代さん、瀬戸内寂聴さんや小島信夫さんといった作家たちのちょっとしたエピソードも盛り込まれ、文学ファンにとっても興味深い一冊になっています。
<本書で紹介されている主な名著(登場順)>
キケロ『老年について』
セネカ『生の短さについて』
テオプラストス『人さまざま』
モンテーニュ『随想録』
鴨長明『方丈記』
吉田兼好『徒然草』
シェイクスピア『リア王』
トルストイ『イワン・イリッチの死』
チェーホフ『退屈な話』
永井荷風『断腸亭日乗』
井伏鱒二『厄除け詩集』
川端康成『眠れる美女』
谷崎潤一郎『瘋癲老人日記』
室生犀星『われはうたえども やぶれかぶれ』
宇野千代『幸福』
田辺聖子『姥ざかり』
内田百閒『日没閉門』
木山捷平『軽石』
高見順『死の淵より』
色川武大『狂人日記』
耕治人『そうかもしれない』
古井由吉『白暗淵』
小島信夫『うるわしき日々』
藤枝静男『田紳有楽』
吉田健一『時間』
山田風太郎『人間臨終図巻』
佐野洋子『がんばりません』
冨士正晴『どうなとなれ』
――など多数。
本書で紹介する「老い」と「死」にまつわるさまざまな箴言(一部抜粋)
「わしにとって老年は軽いのだ。そして煩わしくないどころか、喜ばしくさえあるのだ」(キケロ『老年について』中務哲郎訳、岩波文庫より)
「死ぬ術は生涯をかけて学び取らねばならないものなのである」(セネカ『生の短さについて 他二篇』大西英文訳、岩波文庫より)
「太陽と死とは、じっとして見てはいられない」(ラ・ロシュフコオ『箴言と考察』内藤濯訳、岩波文庫より)
「不知(しらず)、生れ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る」(鴨長明『方丈記』【『方丈記 発心集』】三木紀人校注、新潮日本古典集成より)
「命長ければ辱(はぢ)多し。長くとも、四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」(吉田兼好『徒然草』木藤才蔵校注、新潮日本古典集成より)
「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」(井伏鱒二『厄除け詩集』講談社文芸文庫より)
著者の言葉
(「はじめに」より)
老いと死は、どんな偉人にも、どんな平凡な人間にも、百パーセント間違いなく訪れる。その老年をどう生き、この世との別れをどう済ませておくか、これはなかなかの難題である。さればこそ、古今の名著をひもといて、偉人達人の境地に、一歩でも半歩でも近づきたいと思うのだ。
老年の読書は、みずからの老いをどう生き、どう死を迎えるかに直結している。そのことを考えるのに、本書がいくらかでもお役に立てれば幸いである。
本書の構成
はじめに
一 晴れやかな老年を迎えるために
二 老いの正体、ここにあり
三 無用者の存念
四 幸と不幸は綯い交ぜ
五 ありのままの死とは
六 「老いづくり」から真の老いへ
七 上手に年をとる技術
八 死からの呼び声に目覚める
九 残炎の激しさ
十 いよよ華やぐいのち
十一 晩年の飄逸と軽み
十二 病いの向こう側
十三 作家の生死と虚実
十四 老いと時間
十五 死後を頼まず、死後を思わず
おわりに――われとともに老いよ
著者プロフィール

撮影:西村義次
著者の前田速夫(まえだ・はやお)さんは、1944年生まれ、福井県出身。東京大学文学部英米文学科卒業。1968年、新潮社入社。1995年から2003年まで文芸誌『新潮』編集長を務める。1987年より白山信仰などの研究を目的に「白山の会」を結成。
著書に『異界歴程』、『余多歩き 菊池山哉の人と学問』(読売文学賞受賞)、『白の民俗学へ 白山信仰の謎を追って』『古典遊歴 見失われた異空間を尋ねて』『「新しき村」の百年 〈愚者の園〉の真実』『海人族の古代史』『谷川健一と谷川雁 精神の空洞化に抗して』など。
老年の読書(新潮選書) 前田 速夫 (著) 一度きりの人生、読まずに死ねない本がある。 「死ぬ術は生涯をかけて学び取らねばならないものなのである」(セネカ)、「不知、生れ死ぬる人、何方より来たりて、何方へか去る」(鴨長明)、「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」(井伏鱒二)――ギリシア哲学から現代日本文学まで、内外の名著から、より善く老いるための箴言を厳選して懇切にガイドする。川本三郎氏推薦! |
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