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辻村深月さん〈詐欺をめぐる3つの物語〉『嘘つきジェンガ』が刊行

辻村深月さん著『嘘つきジェンガ』

辻村深月さん著『嘘つきジェンガ』

辻村深月さんの新刊単行本『嘘つきジェンガ』が文藝春秋より刊行されました。

『鍵のない夢を見る』で直木三十五賞、『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞した人気作家による、詐欺をめぐる3つの物語――騙す側、騙される側、それぞれの心理を巧みに描く小説集です。装画は、いとう瞳さん。

 

辻村深月さんコメント

直木賞受賞作『鍵のない夢を見る』は身近にある犯罪を描いた小説集でしたが、その中でひとつだけやり残した題材が「詐欺」でした。

「詐欺」は人の願望や欲望、その人の「今」が色濃く滲む犯罪です。被害者と加害者、どちらの側にもあなたの今があると感じていただけたなら、とても光栄です。

 

詐欺をめぐる3つの物語『嘘つきジェンガ』あらすじ

 
◆「2020年のロマンス詐欺」

まさか、こんな2020年の春が待っているとは思いもしなかった――大学進学のため山形から上京した「加賀耀太」だったが、4月7日、緊急事態宣言が発出されてしまう。入学式は延期され、授業やサークル活動どころか、バイトすら始められない。そのうえ、定食屋を営む実家の売り上げも下がって、今月の仕送りが半分になるという。地元の友人「甲斐斗」から連絡が来たのはそんなときだった。「メールでできる簡単なバイト」を紹介してくれるというのだ。割の良さに目がくらんで始めた耀太だったが、そのバイトとはロマンス詐欺の片棒を担ぐことだった。

 
◆「五年目の受験詐欺」

「紹介は、詐欺だったんです、私たち、騙されていたんですよ」――電話口でそう告げた女の声に「風間多佳子」は驚愕した。詐欺と言われてもにわかには信じられなかった。なぜなら、「大貴」は志望校に合格したのだから。教育コンサルタントが受験生の親向けに開く完全紹介制の「まさこ塾」に多佳子が通っていたのは、次男・大貴の中学受験に際してだった。頑張っても頑張ってもなかなか成績が上がらず苦しむ息子の姿に心引き裂かれていた多佳子は、息子を信じようと決意しながらも、つい、まさこ先生に持ち掛けられた、100万円で受けられる「特別紹介の事前受験」という甘い誘いに、夫にも内緒で乗ってしまったのだ。

 
◆「あの人のサロン詐欺」

「紡」はオンラインサロン「谷嵜レオ創作オンラインサロン オフ会」を主宰している。最初は漫画原作者・谷嵜レオとファンとの非公式な交流イベントだったが、谷嵜のようなクリエイターに憧れる彼らの質問を受けるうち、いつのまにか創作講座がメインとなった。紡が発する言葉を熱心に書き留める参加者たち……自分の作品を熱心に愛してくれる皆が、紡の話に真剣に耳を傾けてくれる高揚感で、オフ会の時間はあっという間に過ぎる。しかし、じつは紡は谷嵜レオではない。谷嵜が覆面作家なのをいいことに、創作サロンの参加者にも、自分の家族にもそう偽っているのだ。

 

著者プロフィール

著者の辻村深月(つじむら・みづき)さんは、1980年生まれ、山梨県出身。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。

2011年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で直木三十五賞、2018年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『朝が来る』『東京會舘とわたし』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』ほか著書多数。

 

嘘つきジェンガ
辻村 深月 (著)

『鍵のない夢を見る』から10年、辻村深月が詐欺を描く。幸せが欲しくて嘘にすがりついてしまう人間の哀しみが、心に迫る3篇。

 


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