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あの「哲学書の最高峰」が今度こそ踏破できる!ハイデガー『存在と時間』の現代的な入門書が刊行 著者・池田喬さん×古田徹也さんトークイベントも開催

池田喬さん著『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』

池田喬さん著『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』

池田喬さんによる、ハイデガー『存在と時間』の入門書『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』が、NHK出版より刊行されました。

また、本書のポイントを解説する、池田喬さん×古田徹也さんのトークイベントが、10月8日に代官山 蔦屋書店およびオンラインで開催されます。

 

ハイデガーは高尚でも非実用的でもない! 今日を生きる私たちの「心の拠り所」だ

写真:1920年前後、30歳頃のハイデガー

写真:1920年前後、30歳頃のハイデガー

数年前、ある凶悪事件の容疑者が逮捕されました。その自宅へテレビカメラが入り、ニュース映像として流れたとき、映っていたのは部屋に積み上げられた本の山――。その最上段にあったのはハイデガー『存在と時間』でした。

 
哲学に興味はなくても「ハイデガー」という名前を知っている人は多い。上記の事件と『存在と時間』の内容に関係はありませんが、この本の知名度をうかがわせる一例と言えます。

 
いっぽう、哲学に関心のある人にとっては、『存在と時間』はどうしても避けて通ることのできない本であり、哲学の歴史を画する記念碑的著作です。一度は本を手に取ったとか、数ある翻訳のうち1種は持っているとかいう人は少なくないでしょう。

 
しかし……この本は簡単には読み進められません。なぜか。まず長大であること。次に、文章がいくらか親しみやすいわりには、用語が見慣れないこと。さらに、そのためもあって、ハイデガーが何を問題にしているのか、わかりにくいことです。人によってはこの本が未完成であることを知っていて、中途半端に終わる本を読み続ける意欲が維持できない、ということもあるかもしれません。

 
しかし、これらの問題にすべて応答するのが、今回発売された『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』です。まさに“迷路”のような、巨大な“森”のようなこの哲学書の複雑さを、じっくり時間をかけて「解明」していく、350ページ超の堂々たる入門書です。

書き手は、早くも博士論文でハイデガー『存在と時間』読解の新境地を示し、学界を唸らせた俊英、池田喬さん。出身が哲学研究では本流中の本流でありながら、それにとらわれない視野の広さを持ち、現代哲学の最先端までの流れのなかにハイデガーを位置づけることのできる稀有な書き手です。

 
さあ、あとは手に取って読むばかり……ではあるのですが、問題が残っています。池田さんも「はじめに」で言うように「なぜ、なおも『存在と時間』について書くのか」ということです。ハイデガー“業界”はじつに広く、そして深く、専門家による研究も、一般書・入門書の出版も盛んです。それなのに、「なぜ、なおも書くのか」。

 
答えは、「こんな入門書がなかったから」です。専門研究者が、一般向けに、『存在と時間』という哲学書の文章をひとつひとつ引きながら、21世紀を生きる読者が実感できるたとえで、ハイデガーが何を問題にしているのかを明らかにしていく入門書。あるいは、「ハイデガーが乗り移ったかのように世界を再構成してみせて読者を魅了する」という方法ではなく、また、「『存在と時間』の執筆の舞台裏を暴く」のでも、「全編に詳細な注釈を付していく」のでもなく、第一に原文に基づき、『存在と時間』以前・以後の哲学史とリンクさせながらハイデガーの問題意識を浮き彫りにしていく――そういうオーソドックスな入門書は、なぜか、ありませんでした。

 
そしてこれが非常に特徴的ですが、全11章が「~~か?」という問いかけで構成されていて(下記目次をご覧ください)、これらの“素朴な疑問”に答えていくなかで『存在と時間』の全体像が見えてくるようになっており、しかも、本書の順序がおおよそ原典の順序と重なっているのです。そんな、「オーソドックスなのに新しい」入門書がこれまでなかったということは、想像がつくかもしれません。

 
最後に、「心の拠り所」とは何かについて。
たとえばあなたが何かを作っているとき――何でもいい、企画書でも、料理でも――、あっという間に時間がたっていて、そのために予定や約束を守れなくなったり、当初の予想とはちがうものができてしまったりすることがあるでしょう。そのとき、ふつうは、「もっと早くやればよかった」などと反省します。

でも、本当にそうなのか? ほかの人間とはちがう自分、自己固有の存在のありかたがそこに現れていたのではないか?――そんな問いがありうることが、ハイデガーの文章から見えてくるのです。本書を読みつつ、日常生活の具体的な場面について、かつてない観点から考え直す機会が生まれ、もしかすると、そこで直観されたことが、日常を支える確信につながっていくかもしれません。

 

本書の目次

序 なぜ『存在と時間』についてなおも書くのか

第一章 なぜ存在の意味を問うのに自分自身を問わねばならないのか

第二章 なぜ『存在と時間』の言葉遣いは普通の哲学書と違うのか

第三章 なぜ主体でも心でもなく世界内存在なのか

第四章 なぜハンマーと釘の分析が存在論なのか

第五章 なぜ「世界は存在しない」なんて言えるのか

第六章 なぜ「手」を中心に考えるのか

第七章 「世人」とは誰のことなのか

第八章 「死への先駆」は無茶な要求か

第九章 『存在と時間』に倫理学はあるのか

第十章 結局、『存在と時間』は何を成し遂げたのか

 

池田喬さん×古田徹也さん トークイベントを開催!

10月8日(金)19時から、代官山 蔦屋書店 & ONLINE(Zoom)にて、著者とその盟友・古田徹也さんが登壇して、本書のポイントを解説するイベントが開かれます。今年1月に200名超の視聴を集めた好評イベントの“完結編”です。

 
※イベントの申し込みはイベントチケット予約・販売サービス「Peatix」にて行われます。
※オンラインイベントはPC、スマホ、タブレットから視聴可能ですが、 事前にZoomのアプリを予めダウンロードする必要があります。

★イベント詳細:https://store.tsite.jp/daikanyama/event/humanities/22187-1716340907.html

 

著者プロフィール

著者の池田喬(いけだ・たかし)さんは、1977年生まれ。東京都出身。東京大学文学部卒業、同大大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。明治大学准教授。

ハイデガー『存在と時間』の読解を出発点に、「知覚」「行為」「自己」などの観点から、現象学を中心とした現代哲学・倫理学を研究する。

著書に新刊『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』(NHKブックス)、『ハイデガー 存在と行為――『存在と時間』の解釈と展開』(創文社→講談社)、共編著に『生きることに責任はあるのか――現象学的倫理学への試み』(弘前大学出版会)、『始まりのハイデガー』(晃洋書房)、『映画で考える生命環境倫理学』(勁草書房)など。訳書にハイデガー『現象学の根本問題』(虫明茂氏との共訳、創文社→東京大学出版会)など。

 

ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす (NHKブックス 1270)
池田 喬 (著)

類例のない究極の入門書

本書「序」のタイトルは「なぜ、『存在と時間』についてなおも書くのか」である。『存在と時間』やハイデガーの入門と謳う本はすでにいくるもあるからだ。
だが「なぜ、なおも書くのか」と問うには勇気がいる――正面から答えねばならないから。答えはこうだ;
「『存在と時間』は一度は読んだ方がいい。そして、『存在と時間』を読みたいとこころざした人にとって、この本がかつてなかった読み方と説得力を示しているから」。
哲学徒を引きつけてやまない“現代哲学の最高峰”の読解を、自分の読書体験としてモノにするための確かな道が本書だ。『存在と時間』の鮮烈な解釈で学界にデビューした新鋭による、問答無用のニュー・スタンダード!

 
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