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【第6回斎藤茂太賞】山本高樹さん『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』が受賞 旅の優れた書籍を選出した「旅の良書2021」も発表

第6回斎藤茂太賞が決定!

第6回斎藤茂太賞が決定!

一般社団法人「日本旅行作家協会」(会長:下重暁子さん/会員数180人)は、紀行・旅行記、旅に関するエッセイおよびノンフィクション作品の中から優れた著作を表彰する「第6回斎藤茂太賞」の受賞作を発表しました。

また同時に、旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出した「旅の良書2021」も発表されました。

 

第6回斎藤茂太賞が決定!

第6回斎藤茂太賞の選考会が7月8日、学士会館にて開催され、受賞作が次の通り決定しました。

 
<第6回斎藤茂太賞 受賞作品>

山本高樹(やまもと・たかき)さん
『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)

 
受賞者の山本高樹さんは、1969年生まれ。岡山県出身。著述家・編集者・写真家。出版社での勤務を経て、フリーランスに転身。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダック地方に長期滞在して取材を敢行。以来、ラダックでの取材をライフワークとしながら、『地球の歩き方インド』『地球の歩き方タイ』をはじめとする取材・撮影・執筆などで、世界各地を巡る日々を送っています。2015年からはラダックを中心とした地域で現地発着ツアーのガイドも務めています。

 
審査員は、下重暁子さん(作家/日本旅行作家協会会長)、大岡玲さん(作家/東京経済大学経済学部教授)、芦原伸さん(ノンフィクション作家/日本旅行作家協会専務理事)、種村国夫さん(イラストレーター・エッセイスト/日本旅行作家協会常任理事)、椎名誠さん(作家/日本旅行作家協会名誉会員=最終選考会は体調不良のため欠席)。

 
なお、第6回斎藤茂太賞の最終候補作は以下の3作品でした。

【最終候補作品】
◎山本高樹さん『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)
◎中村安希さん『もてなしとごちそう』(大和書房)
◎岡田悠さん 『0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)

 
[選評](下重暁子さん)

『0メートルの旅』は若い著者の才気を全体に感じて、一定の評価はできるものの、ブログ的な言葉の多用と感性的な表現が跳びはねすぎている点がマイナス、『もてなしとごちそう』は、過去に大きな賞をとった著者だけあって、さすがに文章には手だれを感じるが、エピソードの集積で読後の印象が薄くなっている点が弱い、とそれぞれ評価された。

『冬の旅』については、今回、欠席の椎名誠委員が書評で「おそろしく控えめなタイトルだが、実は非常に過酷な旅の記録。大げさな表現がないところに好感をもつ」と評しておられたが、私も同感で、淡々とした語り口、感情を抑えたさりげなさがとてもいいと思う。そして、いっしょに旅をしてくれた現地の2人の友人との人間関係が好ましく思われるのは、人がよく描けているからだろう。自分にとっては、どこどこのあの人に会いたいというのが、旅の最も大きなモチベーションになっているのだが、この著者も同じだと思う。

欠点は言わずもがなの記述が多いことで、「最後の4ページ、帰国後の旅の述懐の部分はいらない」という大岡玲委員の見解には私も賛成。

今回は、「人が描けている」ことが決め手となった。この点で他の2作品に比べで際立っているとともに、いわば旅行記の王道を行く最も重厚な本作品が、受賞作に選ばれる結果となった。(談)

 

斎藤茂太賞について

「斎藤茂太賞」は、長年にわたり世界と日本の旅行文化の発展に貢献した、日本旅行作家協会創立会長の故・斎藤茂太さんの功績をたたえ、その志を引き継ぐために2016年に創設。前年に出版された紀行・旅行記、旅に関するエッセイおよびノンフィクション作品の中から優れた著作を表彰する文学賞です。

 
<斎藤茂太さん プロフィール>

斎藤茂太さんは、1916年(大正5年)、歌人の斎藤茂吉の長男として東京に生まれます。精神医学者としても活躍。日本旅行作家協会の創立会長を長らく務めました。2006年(平成18年)11月20日逝去。作家の北杜夫さんは弟。

日本精神病院協会会長、アルコール健康医学協会会長、日本ペンクラブ理事などを歴任。

著作に『茂吉の体臭』(岩波書店)、『モタさんの“言葉”』(講談社)、『精神科の待合室』(中央公論社)、『モタさんのヒコーキ談義』(旺文社)、『モタさんの世界のりもの狂走曲』(角川学芸出版)など。

 

旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出した「旅の良書2021」も発表!

「旅の良書」は、基本的に中学生以上を対象として、旅の持つさまざまな魅力を読者に伝えてくれる優れた書籍を選出するもので、斎藤茂太賞の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象として、斎藤茂太賞の選考システムを活用して斎藤茂太賞実行委員会が選考・選出し、日本旅行作家協会の理事会の承認を経て認定するものです。

今年が第3回目の発表となり、日本旅行作家協会選定の「旅の良書」マークを、選ばれた「旅の良書」の版元へ無償で提供します。

 
<「旅の良書2021」選出作品>

■奥村忍さん『中国手仕事紀行』(青幻舎)

生活雑貨の店主である筆者が長年続ける、少数民族たちの民具の買い付けの旅の記録。ガイドブックも無いような中国奥地の知られざる魅力が詰まった一冊。
 
■斉藤政喜さん『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』(小学館)

国内外で30年以上さまざまな場所の「歩く旅」を続けてきた筆者の集大成ともいえる一冊。アウトドア誌の人気連載から厳選されたさまざまな旅先でのエピソードを収録。

 
■梨木香歩さん『風と双眼鏡、膝掛け毛布』(筑摩書房)

地名を手掛かりにその土地の記憶をたどる旅へ。訪れた場所に生きる人や生き物の営みに触れ、想いを綴るユニークな紀行エッセイ集。

 
■谷釜尋徳さん『歩く江戸の旅人たち』(晃洋書房)

江戸時代、庶民に愛された「お伊勢参り」。総歩行距離2000キロ以上にもおよぶ「徒歩」の旅はどのようにして可能になったのかを紐解く。

 
■池田正孝さん『世界の児童文学をめぐる旅』(エクスナレッジ)

児童文学の舞台を訪れれば、その物語の持つ意味や作者の思いが見えてくる。40年以上にわたって海外児童文学の舞台を訪れた筆者の記録をまとめた一冊。

 
■川原真由美さん『山とあめ玉と絵具箱』(リトルモア)

イラストレーターでもある筆者が10年以上にわたり親しむ山の魅力を女性ならではの視点で多数のイラストと共に綴った全31篇のエッセイ集。

 
■中村安希さん『もてなしとごちそう』(大和書房)

旅先で出会った人からもてなされる料理にはその土地ならではの味わいがある。“もてなし”という世界の深さと広さとおいしさを知る一冊。

 
■岡田悠さん『0メートルの旅 日常を引き剥がす16の物語』(ダイヤモンド社)

Webメディアで人気の70か国を訪れた会社員兼ライターによる、南極の旅から始まり、家の中でのグーグルマップを使うエアロバイクの旅までの16の物語。

 

冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ
山本高樹 (著)

ザンスカールの「知られざる祭礼」を目指した4週間の「冬の旅」の記録

インド北部、ヒマラヤの西外れの高地、ザンスカール。冬になると他の都市をつなぐすべての道が雪と氷に閉ざされるが、厳寒期の1、2月になると、凍結したザンスカール川を歩いて行き来できる幻の道が現れる。この「チャダル」と呼ばれる道を辿る旅は、遠い昔からザンスカールの人々によって受け継がれてきた稀有な伝統であり、世界中のトレッカーにとって憧れの旅路でもある。
しかし、冬のザンスカールの真の姿を見届けるには、チャダルを歩いて辿り着ける場所からさらに奥へと踏み込んでいかなければならないことは、あまり知られていない。ザンスカールの最深部の山中にある僧院では、「プクタル・グストル」という祭礼が行われると伝えられている。真冬のこの祭りを見届けるため、マイナス20℃にもなる極寒の世界の中、著者が約4週間かけて歩きぬいた苛烈な旅を、詳細に記した紀行文。
ふんだんに掲載された真冬の街、人々、生活を捉えた写真は、資料としても価値のある一冊。

 
[著者からのコメント]
「これは、冒険の物語です。でもそれは、僕自身の冒険ではありません。一緒に旅してくれたザンスカール人の二人の友と、旅の途上で出会った彼の地で暮らす人々、そして、はるか昔から幾世代にもわたって生と死と祈りを紡いできた、ザンスカールに生きるすべての人々の冒険の物語です。苛烈な自然に畏れを抱きながらも、しなやかに共存して、あるがままに生きる人々の人生のありようを、この本を通じて伝えられたらと思っています。」

 
【関連】
JTWO日本旅行作家協会

 


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