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「ライフハッカーの書評家が選ぶ、2020年の名著10選」第1位!コロナ禍で働く全60職種77人による日記アンソロジー『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』が試し読み公開 尾崎世界観さん、町田康さんらも寄稿

『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』

『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』

左右社では2020年6月17日、『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』を刊行しました。本書は最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月、コロナ禍で働く全60職種77人が綴った日記アンソロジーです。

なお、本書の試し読みを左右社公式noteで無料公開しています。
★URL:https://note.com/sayusha/n/nfbb33a5d933b

 

最初に緊急事態宣言が発令された2020年4月、日常が一変したあの日々をほかの人はどう乗り越えてきたのか――。

誰もが立ち向かわざるを得なかった未曾有の事態を、ほかの人はどのように過ごし、悩み、前に進んだのか。

本書は刊行されるやいなや話題を呼び、昨年12月25日に発表された「ライフハッカーの書評家が選ぶ、2020年の名著10選」(https://www.lifehacker.jp/2020/12/226764book-revue-ranking-2020.html)では第1位に選ばれるなど、コロナ禍を代表する一冊として多数のメディアで紹介されました。

 
本書にはニュースでは伝わらなかった、その職種、その人ならではのさまざまな思いや出来事が率直に綴られています。

 
<出版社コメント>

ふたたび緊急事態宣言が発令されたいまこそ、不安と闘っているのは一人ではないと感じられる一冊です。
この未曾有のコロナ禍に際して、この本がみなさまの支えになることをお祈りしております。

左右社一同

 

本書「はじめに」より

仕事、終わり~。今日のお風呂は、登別温泉風かな別府温泉風かな。なんていう、ついこの間までのおだやかな日常は、コロナウイルスによって一変させられました。仕事がなくなったり、やり方が変わったり、突然忙しくなったり。ほかの人の仕事が気になりはじめました。この危機、どうやって乗り越えるんだろう? 緊急事態宣言が発せられた日、左右社編集部はすぐさま、仕事をテーマにした本をつくるべく、七七人のさまざまな職業の人たちに、四月の日記を書いてもらうようお願いしました。それを構成したのが本書です。 有名な人も無名な人も、二〇代も八〇代も、命の危険を感じながら治療する医者も、風評に悩まされるタクシー運転手もいます。日記を読むうちに、これまで職業名でしか認識していなかった人も、ひとりひとりの素顔が見えてきました。翻ってみれば、納豆を食べる幸せひとつとっても、どれだけの人の仕事でなりたっているか。 ひとつの仕事は、誰かの生活につながり、その生活がまた別の人の仕事を支えている。本書は仕事辞典であると同時に、緊急事態宣言後の記録であり、働く人のパワーワードが心に刺さる文学作品でもあります。 仕事は続くよ、どこまでも。

 

この“生活”は誰かの“仕事”が支えている!

 
◆ミニスーパー店員……「お一人様一点限り」のトイレットペーパーをめぐって

4月7日(火) ピークは過ぎたと思うが、未だタイミングが悪いと入手するのに苦労する品ではある。うちの店も「お一人様一点限り」の制限付きだ。すると一人のお婆さんが、「友達が困っているから友達の分も買って行ってあげたい」とレジに来た。流石にルールを守らないわけには行かず、「申し訳ございません」と丁重にお断りした。お婆さんは12ロール入りのトイレットペーパーを1つだけ買って、店を出た。何だか申し訳なく思っていたのだが、すぐにお婆さんを追いかけた。

 
◆葬儀社スタッフ……「父がコロナウイルスで亡くなったかもしれないのですが」

4月8日(水) 霊安室の隣の控室で会ったAさんは、背の高いまじめそうな中年の紳士だった。私が名乗ると少し安心した表情を見せた。「こういうの初めてなので……」とすまなさそうに言う。
(ええ、私も伝染病のケースは初めてなんです)と心の中で思ったが、そんな不安は悟られてはいけない。仮にコロナウイルスでなくても、肉親を亡くした遺族は、不安な気持ちで一杯なのだ。まずは安心させることだ。

 
◆介護士……「人と会って濃厚接触をするのがおれの仕事だしさ」

4月9日(木) そうでないと、COVID-19を利用者にうつす可能性を常に抱えつつ仕事してんのはつらいよ。おれには同居してる高齢の母親もいるしね。といって仕事に行かないわけにはいかないし。人と会って濃厚接触をするのがおれの仕事だしさ。

 
◆ごみ清掃員……リモートワーク不可能なごみ回収の現場で、目に見えぬウイルス感染の恐怖と闘う

4月13日(月) 落ちた箸を拾うのも怖い。ばらまかれたティッシュを集めるのも怖い。見えないものというのはこんなに怖いのかと初めて知った。しかし怖いからと言ってごみの回収を止める訳にはいかないので、責任感の一点で回収を続ける。

 
◆内科医……不安にかられる患者さんたちを支え、診察を行う

4月14日(火) いつも冗談ばかり言っている患者さんに先生、怖くて嫌にならないの?と聞かれて、う~ん、自分で選んだ職業だからね、と答えると、そうか……と妙に真面目に考えこんでいる。コロナなんか怖がらなくて大丈夫だよ、と笑い飛ばして安心させてあげられたらいいのに。

 
◆馬の調教師……無観客競馬でデビュー戦を迎える馬に寄り添う

4月17日(金) 川崎競馬開催最終日 この日、自分の厩舎から競走馬としてデビュー戦を迎える仔がおり、オーナーさんも来場はされましたが、今開催は来場出来ても、普段は入れる僕らのゾーンやパドックなどには一切出入り禁止になっています。レース前のジョッキーとオーナーさんとの作戦会議や、レースの回顧など出来ず、仕方ないことですが、そういった楽しみも新型コロナウィルスの影響で奪われています。

 
◆専業主婦……退屈そうな息子、不安な日々にピリピリしている夫を力強く支える

4月22日(水) テレビで人と密にレストランで食事する姿を見て、楽しそうで懐かしくて悲しくなった。夫が帰宅してすぐ手洗いうがいをしないので、注意をしたら逆ギレされた。夫への怒りおさまらず、夕食の用意を放棄しようかと思ったけれど、冷蔵庫の野菜が腐るし予算もない。何よりも夫の個人的外食も避けてコロナ感染のリスクを減らしたい。

 
◆ライブハウス店員……「わたしなんかが」という思いに変化が

4月24日(金) お行儀の良い人間ではないから、おとなしくおうち時間はできないし、そもそも仕事をしないと、いまできることを続けないと、自分の生活どころかうちの店舗、うちの店舗どころか会社、会社どころか文化、エンタメ業界が死ぬらしい。わたしがいないと文化が死ぬことだってもしかしたらありえる気がしてきた。

 

『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』に寄稿した方たち

 
◆本書に寄稿した方々

職業パン屋/ミニスーパー店員/惣菜店店主/書店員/製紙会社営業職/ごみ清掃員/運送会社配達員/タクシー運転手/ミュージシャン/ライブハウス店員/純喫茶店員/映画館副支配人/女子プロレスラー/留学生/ホストクラブ経営者/校長/葬儀社スタッフ/馬の調教師/水族館職員/教師/美容師/ピアノ講師/客室乗務員/介護士/イラストレーター/ドイツ在住イラストレーター/画家/漫画家/小説家/校正者/作家・広告制作企画者/俳句作家/文筆家/ライター/評論家/夫婦問題カウンセラー/精神科医/文化人類学者/ジャーナリスト/映画監督/舞台人/劇団/メディアアーティスト/美術家/振付家/写真家/落語家/内科医/歯科医/薬剤師/保育士/専業主婦/ブック・コーディネーター/旅行会社社員/イラン観光業/台湾の蕎麦屋経営者/IT企業社員/美術館館長/農業指導者/経営学者/占星術家

 
◆芥川賞ノミネートで話題の尾崎世界観さんや、町田康さん、立川談四楼さんなど人気作家も寄稿!

ほかにも瀧波ユカリさん(漫画家)、ヤマシタトモコさん(漫画家)、川本三郎さん(評論家)、星野概念さん(精神科医)、山下敦弘さん(映画監督)、温又柔さん(小説家)、マシンガンズ滝沢さん(ゴミ清掃員・お笑い芸人)、鏡リュウジさん(占星術家)など、話題の人気作家、文化人の方々も、書き下ろし原稿を寄稿しています。

さらに、大橋裕之さんによる描き下ろし漫画も収録。

巻末には、2020年4月1日~30日までの出来事を追ったコロナ年表付きです。

 

仕事本 わたしたちの緊急事態日記
尾崎 世界観 (著), 町田 康 (著), 花田 菜々子 (著), ヤマシタ トモコ (著), 川本 三郎 (著), 立川 談四楼 他77人 (著)

新型コロナウイルス感染拡大ーーー前代未聞の事態を迎えたわたしたちの文学
累計5万部突破の人気アンソロジー、緊急出版! ! !

パン屋、ごみ清掃員、タクシー運転手、ミュージシャン、映画館副支配人、女子プロレスラー、内科医、保育士、ホストクラブ経営者、校長…コロナニモ負ケズ。働く77人、闘いの記録。

 
【関連】
2020年4月15日の『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』|左右社|note
ライフハッカーの書評家が選ぶ、2020年の名著10選 | ライフハッカー[日本版]

 


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