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町田康さん現代語訳『宇治拾遺物語』より「序」「雀が恩義を感じる」の町田さん朗読動画を公開

町田康さん

町田康さん

河出書房新社は、町田康さん現代語訳『宇治拾遺物語』(河出文庫)から「序」「雀が恩義を感じる」二篇を、町田康さん本人による朗読動画として特別公開しました。

 

『宇治拾遺物語』を現代語訳した町田康さん本人による朗読を無料配信!

町田康さんによる現代語訳『宇治拾遺物語』は、「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」第8巻『日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集』に収録、2015年に刊行されました。同全集は創刊時から”古典作品を身近に楽しんでほしい”というコンセプトで創られたシリーズでしたが、その中でも町田版『宇治拾遺物語』は爆笑必至の作品としてたびたび話題を集めてきました。

本年4月に、河出文庫「古典新訳コレクション」として単巻で発売。よりポータブルに楽しめるようになり、「電車で読むと危険」「なぜほとんどが下ネタなのか…?」など、より広い読者層から支持されています。

 
『宇治拾遺物語』は、中世説話集の白眉として名高い読み物です。町田康さんの現代語訳では、「奇怪な鬼に瘤を除去される」(こぶとり爺さん)をはじめ、笑いと下ネタ満載の197話から、選りすぐりの33話を収めています。

 
『ギケイキ』『口訳 古事記』など、古典作品を軽妙かつユーモア溢れる新訳で現代に蘇えらせる作家が、心の動きを見事に捉えた古典新訳の金字塔『宇治拾遺物語』より、このたび「雀が恩義を感じる」(注:「腰折れ雀」として知られる中世説話)の町田康さんご本人による朗読動画が誕生しました。町田版『宇治拾遺物語』を既読の方も、未読の方も、町田康さんの最高の朗読をぜひお楽しみください。

★【町田康 本人朗読】『宇治拾遺物語』(河出文庫)より「序」「雀が恩義を感じる」:https://youtu.be/TJeOyxGS5pw

 

町田康さん訳「奇怪な鬼に瘤を除去される」(『宇治拾遺物語』日本文学全集版より)全文ためし読みも公開中!

《リーダー、って感じの鬼が正面の席に座っていた。そのリーダー鬼から見て右と左に一列ずつ、多数の、あり得ないルックスの鬼が座っていた。
見た目はそのように異様なのだけれども、おもしろいことに、盃を飛ばし、「ままままま」「おっとっとっ」「お流れ頂戴」なんてやっているのは人間の宴会と少しも変わらなかった。
暫くして酔っ払ったリーダーが、「そろそろ、踊りとか見たいかも」と言うと、末席から、不気味さのなかにどこか剽軽な要素を併せ持つ若い鬼が、中央に進み出て、四角い盆を扇のように振り回しながら、ホ、ホ、ホホラノホイ、とかなんとか、ポップでフリーな即興の歌詞を歌いながら、珍妙な踊りを踊った。
リーダーは杯を左手に持ち、ゲラゲラ笑っており、その様子も人間そっくりで、酔っ払って油断しきった社長のようであった。
それをきっかけに大踊り大会が始まってしまって、下座から順に鬼が立って、アホーな踊りを次々と踊った。軽快に舞う者もあれば、重厚に舞う者もあった。非常に巧みに踊る鬼もいたが、拙劣な踊りしか踊れない鈍くさい鬼もいた。全員が爆笑し、全員が泥酔していた。
その一部始終を木の洞から見ていたお爺さんは思った。

 
こいつら。馬鹿なのだろうか?
そのうち、芸も趣向も出尽くして、同じような踊りが続き、微妙に白い空気が流れ始めた頃、さすがに鬼の上に立つだけのことはある、いち早く、その気配を察したリーダーが言った。
「最高。今日、最高。でも、オレ的にはちょっと違う感じの踊りも見たいかな」
リーダーがそう言うのを聞いたとき、お爺さんのなかでなにかが弾けた。
お爺さんは心の底から思った。
踊りたい。》

 
★全文ためし読みはこちら!:https://web.kawade.co.jp/bungei/3393/

 

宇治拾遺物語 (河出文庫)
町田 康 (翻訳)

「こぶとりじいさん」として知られる「奇怪な鬼に瘤を除去される」など、現在に通じる心の動きを見事に捉えた名訳33篇を収録。

 
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