宮部みゆきさんが『きたきた捕物帖』シリーズ刊行へ リスペクトする名作への敬意をこめ、「捕物帖」シリーズに挑戦
PHP研究所は5月30日、宮部みゆきさん著『きたきた捕物帖』を刊行しました。
宮部みゆきさんは日本を代表するベストセラー作家であり、時代ものでも数多くの名作・ヒット作があります。ライフワークである累計200万部の「三島屋変調百物語」シリーズがおなじみですが、この作品も「永く書き続けたい」という著者の思いから、シリーズ化が決定しています。
「畏れ多いので『捕物帳』ではなく『捕物帖』にした」
「捕物帖」と銘打ったシリーズを持ちたかったという宮部さん。これまで手掛けなかったのは、大ファンである『半七捕物帳』(著:岡本綺堂)への思いが強かったためといいます。
何度も繰り返し読み、時代ものを書く原点になったという『半七捕物帳』。同じ「捕物帳」とするのは畏れ多いと、「帖」の字をつかって『きたきた捕物帖』というタイトルが決定しました。
ちなみに、捕物帳というと、岡っ引きの親分が手下を引き連れ、名探偵よろしく難事件を解決するというイメージがあります。
ところが今回の主人公は、まだ岡っ引きの見習いで、一番の下っ端。「町のなんでも屋」のような未熟な少年が、周りの大人たちに助けられ、一人前になっていく「成長物語」となっており、宮部流「捕物帖」としての新鮮味を加えています。
宮部ワールドの要となる新シリーズ誕生
『きたきた捕物帖』の主人公・北一(16歳)は、江戸は深川元町の岡っ引き・千吉親分の手下です。しかし岡っ引き仕事はさせてもらえず、千吉の本業である文庫屋(本や小間物を入れる箱を売る商売)で働いています。
そうしたなか千吉親分が急逝し、北一は親分の家を出て、富勘長屋に移り住みます。やがてある仕事を通じて出会う湯屋の釜焚きの喜多次が、北一の相棒となります。「きたきた」とは、北一と喜多次、ふたりの「きたさん」のこと。北一と喜多次が、事件の謎や不思議な出来事を解き明かすなかで、成長する姿を描いていきます。
著者のライフワーク「三島屋変調百物語」シリーズは江戸の怪談を扱ったものですが、『きたきた捕物帖』は謎解きに怪談の要素を加え、江戸庶民の人情も描く連作時代ミステリー。
「三島屋シリーズ」とともに、「きたさんたちのお話を永く書き続けたいと思っています」と著者も語る、宮部ワールドの要となる「新シリーズ」の誕生です。
これまでの宮部作品との「世界観シンクロ」も楽しみ
最新刊『きたきた捕物帖』は、ほかの宮部作品とキャラクターやストーリーがシンクロしています。宮部ワールドを別の角度から楽しむことができます。
【北一が暮らす富勘長屋】……長編『桜ほうさら』(PHP文芸文庫)で、主人公の笙之介が住んでいた長屋。あのときの住人たちが、今回の作品にも登場します。
【謎の稲荷寿司屋】……『〈完本〉初ものがたり』(PHP文芸文庫)で初登場。20年間、謎に包まれていたその正体が明らかになります。
※登場人物やストーリーは、「きたきた捕物帖」特設ページ(http://www.php.co.jp/kitakitamiyabe/)で紹介されています。
著者プロフィール
著者の宮部みゆき(みやべ・みゆき)さんは、1960年、東京生まれ。1987年「我らが隣人の犯罪」でオール読物推理小説新人賞を受賞してデビュー。
1992年『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、1993年『火車』で山本周五郎賞、1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞、1999年『理由』で直木賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞。
著書は、時代物に『桜ほうさら』『〈完本〉初ものがたり』『あかんべえ』『この世の春』『荒神』、「三島屋変調百物語」「ぼんくら」のシリーズ、現代ものに『模倣犯』『小暮写眞館』『ソロモンの偽証』などがある。
きたきた捕物帖 宮部みゆき (著) 宮部みゆき、久々の新シリーズ始動! 謎解き×怪異×人情が味わえて、著者が「生涯、書き続けたい」という捕物帖であり、宮部ワールドの要となるシリーズだ。 |
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