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芥川賞・今村夏子さんへ高樹のぶ子さんが贈呈式でエール「トカゲのように走り続けて…」

受賞スピーチをする今村夏子さん(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

受賞スピーチをする今村夏子さん(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

第161回芥川賞・直木賞の贈呈式が8月23日、都内で開催され、芥川賞が「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)の今村夏子さん、直木賞は『渦 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 魂(たま)結び』(文藝春秋)の大島真寿美さんに贈られました。

芥川賞の祝辞を述べた選考委員の高樹のぶ子さんは、走り続けるトカゲの姿になぞらえて若い才能にエールを送り、今村さんからは受賞決定後の”秘話”も明かされました。

 

第161回芥川賞&直木賞贈呈式が開催

(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

視線を上げるたび、会場に響くシャッター音に「やっぱり芥川賞ってすごいなと思いました」
――金屏風を背にした今村さんが受賞スピーチで語ります。

受賞作とともに書店に並んだ自分の顔写真入りのPOPを見て、音信不通だった友人から携帯電話にメッセージが届き、「好きなことが見つかって良かったね。うれしいよ」という言葉をもらったことも明かしました。

「たったこれだけのやりとりですが、何かとても大きなプレゼントをもらったような気持ちになりました。『好きなことが見つかってよかったね』という言葉は、初めて言われました。ずっと大切にしたいと思います」

 
「むらさきのスカートの女」は、近所でも風変わりで有名な「むらさきのスカートの女」が気になって仕方ない「わたし」が彼女と「ともだち」になるべく、あの手この手で同じ職場に誘い込んでいく物語です。

選考委員の高樹のぶ子さんは、「さまざまな読み方があった」と祝辞で評し、「追いかける女と追いかけられている女の関係性を想像し、同一人物、あるいは別の女なのか、その謎がいまだに解かれていない。(今村さんは)中途半端にばらさず、あの世まで持っていくのではないかと思います」と述べました。

高樹のぶ子さんからのエールに笑みを見せる今村夏子さん(右)と、直木賞を受賞した大島真寿美さん(左)(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

高樹のぶ子さんからのエールに笑みを見せる今村夏子さん(右)と、直木賞を受賞した大島真寿美さん(左)(撮影:朝日新聞出版写真部・東川哲也さん)

独りでいることが好きで、人付き合いは苦手と以前のインタビューでも話していた今村さん。緊張した面持ちが笑顔になったのは、今村さんの「妄想力」の強さに言及した高樹さんが、創作活動を“トカゲ”に例えて、こうアドバイスした時です。

「同じところに立っていると、自分の知らないうちにその場に身体が沈み込んでいきます。バシリスクというトカゲは、水の上を後ろ脚だけで走ります。右足が沈む前に左足を出す……ということを一生懸命やるうちに、知らないうちに結構遠くまでいける。今、芥川賞をもらわれて、立っているところから、走りだしてもらいたい。これから先はバシリスク夏子と、バシリスクのぶ子が、よーいドンで走りだします」

 
18年間務めた芥川賞の選考委員を今回で退くという高樹さんのエールに、今村さんは何度もうなずきました。寡作で知られ、会場で配られた「受賞のことば」にも、まだ新しい小説を書きだすことができず「日々恐怖を感じている」と吐露しつつ、こんな言葉を寄せています。

「私にはまだ書きたいことがあります。今回の受賞で、小説への思いは一層強くなりました」

 

あなたはどう読み解く? 28日に東京・六本木で「読書会」も

8月28日に文喫 六本木で読書会「むらさきの夕べ」が開かれる

8月28日に文喫 六本木で読書会「むらさきの夕べ」が開かれる

選考委員の間でも読み方がわかれた受賞作。8月28日には、『むらさきのスカートの女』の読書会「むらさきの夕べ」が文喫 六本木(東京都港区)で開催予定です。

ドレスコードは「むらさき」色という、一風変わった読書会です。

★詳細・申し込み:http://ptix.at/NMC7YO

 

【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女
今村夏子 (著)

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。

『こちらあみ子』『あひる』『星の子』『父と私の桜尾通り商店街』と、唯一無二の視点で描かれる世界観によって、作品を発表するごとに熱狂的な読者が増え続けている著者の最新作。

【第161回 直木賞受賞作】 渦 妹背山婦女庭訓 魂結び
大島 真寿美 (著)

虚実の渦を作り出した、もう一人の近松がいた──

「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描いた比類なき名作!

江戸時代、芝居小屋が立ち並ぶ大坂・道頓堀。
大阪の儒学者・穂積以貫の次男として生まれた成章。
末楽しみな賢い子供だったが、浄瑠璃好きの父に手をひかれて、芝居小屋に通い出してから、浄瑠璃の魅力に取り付かれる。
近松門左衛門の硯を父からもらって、物書きの道へ進むことに。
弟弟子に先を越され、人形遣いからは何度も書き直しをさせられ、それでも書かずにはおられなかった半二。
著者の長年のテーマ「物語はどこから生まれてくるのか」が、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した長編小説。

 
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