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『現実はいつも対話から生まれる』対話型組織開発、教育、心理療法など、注目を集める「社会構成主義」入門書

ケネス・J・ガーゲンさん&メアリー・ガーゲンさん著、伊藤守さん監訳『現実はいつも対話から生まれる』

ケネス・J・ガーゲンさん&メアリー・ガーゲンさん著、伊藤守さん監訳『現実はいつも対話から生まれる』

ケネス・J・ガーゲンさん&メアリー・ガーゲンさん著、伊藤守さん監訳『現実はいつも対話から生まれる』が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより刊行されました。

本書は、対話型組織開発、教育、心理療法、紛争解決など、さまざまな分野で注目され、実践されている「社会構成主義」の基礎を簡潔に読みやすくまとめたものです。

 

対立を超える鍵がある――「第1章「社会構成」というドラマ」より一部抜粋

社会構成主義の基礎的な考えはとてもシンプルなようでいて、非常に奥深くもあります。私たちが「現実だ」と思っていることはすべて「社会的に構成されたもの」です。もっとドラマチックに表現するとしたら、そこにいる人たち が、「そうだ」と「合意」して初めて、それは「リアルになる」のです。

あなたは懐疑的にこう反応するかもしれません。
「死が存在しないという意味ですか? この身体も太陽もこの椅子も?」
私たちはここで、ひとつはっきりさせておかなければいけません。社会構成主義者は「何も存在しない」とか「現実などない」と言っているわけではないのです。

重要なポイントは、人が「何が現実か」を定めるとき、常にそれは、あるひとつの文化の伝統から話しているのだということです。確かに何かは起こりました。けれど、それを描写するには、ある特定の文化の観点を通さざるをえないのです。つまり、その文化特有の言語だとか、見方、話し方を通して語らざるをえないということです。

たとえば、「彼のお父さんが亡くなりました」ということを描写しようとすると、普通は生物学的観点から語ることになります。ここで私たちは「起こったこと」を「特定の身体機能の停止」として「構成」しているのです(けれども、医療専門家たちの間でもそれを死と確定することには同意が成立しないかもしれません。移植外科医は、かかりつけの内科医とは別の意見を持っている可能性があります)。

他の文化的伝統においては、「彼は昇天しました」とか「彼は彼女の心の中に住み続けます」とか、「これは彼の生まれ変わりの新しいサイクルの始まりなのです」とか、「彼は苦しみから解き放たれました」とか、「彼は、彼が残した功績という遺産の中に生き続けます」とか、「彼の3人の息子たちに彼の人生は引き継がれます」とか、「この物体の原子構成が変化したのです」などと語られるかもしれません。

こういったあらゆる文化的伝統の外に出てしまったとしたら、私たちはどのように語ることができるでしょうか?
構成主義者にとっては、「何も存在しない」のではなく、「私たちにとっては何も意味しない」ということなのです。他の言い方をすると、「私たちの関係性」によって、私たちの世界は、私たちが「木」「太陽」「身体」「椅子」などと捉えているもので満たされるのです。

もっと広い意味で言えば、お互いにコミュニケーションを取るたびに、私たちは、この生きている世界を構成していると言えるかもしれません。

私たちが日頃慣れ親しんでいる伝統の中にい続ける限り、人生はそのままでしょう。たとえば、「男と女」、「貧富」、「教養がある/教養がない」などのように慣れ親しんだ「区別」をしている限り、人生は、比較的予測できるものであり続けるのです。
しかし私たちは、「当たり前だ」と考えられているものすべてに挑戦することもできるのです。たとえば、「問題」はすべての人の目に見えるわけではありません。私たちが「良し」とする世界を構成していて、私たちが価値を置いていることを実現するのを妨げるものを「問題」と見なしているわけです。

私たちが「問題」として「構成」しているすべてのものを、「チャンス(機会)」として「再・構成」することはできないでしょうか?

ここに、構成主義的考え方の膨大な可能性があります。構成主義者にとって、私たちの行動は、伝統的に真実だとされてきたもの、理に適っているとされてきたもの、正しいとされてきたものに制約されることはありません。
私たちの目の前には、「イノベーション(革新)」への無現の可能性が広がっているのです。これまで現実であるとか良いと思ってきたことを捨て去らなければならないと言っているわけではありません。歴史や伝統に縛られることはないということなのです。
一緒に話し、新しい考えを聞き、問いを投げかけ、別の(代わりの)メタファーを考えることで、新しい意味の世界の敷居をまたぐのです。未来とは私たちが「一緒に創造する」ものなのです。
(第1章より抜粋)

 

本書の目次

第1章 「社会構成」というドラマ
「私たちが世界を創造している」という基本的な考え方
「言語ゲーム」から「可能性のある世界」へ
徹底的な多元主義
科学か? それとも宗教か?

第2章 「批判」から「再・構成」へ
「脱・構成」とそれを超えて
「個人」から「関係」へ
「調和した行動」としての意味
関係的な「自己」
「マインド」の関係的な「再・構成」

第3章 社会構成主義と専門行為
社会構成主義と心理療法の変化
社会構成主義と組織の有効性
社会構成主義と教育現場
対立への社会構成主義的な対処

第4章 社会構成主義の実践としてのリサーチ
知識という行為を「再・構成」する
社会調査の方法の開花

第5章 「批判」から「コラボレーション(連携)」へ
「ニヒリズム」から「豊かな現実」へ
「現実主義」を越えて:体、心、力(権力)
「道徳的相対主義」を越えて

 

著者プロフィール

■著者:ケネス・J・ガーゲン(Kenneth J. Gergen)さん

スワースモア大学心理学教授およびタオス・インスティテュート(Taos Institute)所長。

社会構成主義に関する主な著書には『ダイヤローグ・マネジメント』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)、『社会構成主義の理論と実践』『あなたへの社会構成主義』(以上ナカニシヤ出版)などがある。

 
■著者:メアリー・ガーゲン(Mary Gergen)さん

ペンシルべニア州立大学心理学教授および女性学教授。タオス・インスティテュートの創立メンバーでもある。社会構成主義に関する著書多数(未邦訳)。

 
■監訳者:伊藤守(いとう・まもる)さん

株式会社コーチ・エィ ファウンダー。日本人として初めて国際コーチ連盟(ICF)よりマスター認定を受ける。「コーチング」 を日本に紹介し、日本で最初のコーチ養成プログラムを開始。エグゼクティブ・コーチング・ファームである株式会社コーチ・エィを設立し、企業のリーダー開発や組織風土改革に携わる。

主な著書に『コーチングマネジメント』『3分間コーチ』(ディスカヴァー)『小さなチームは組織を変える』(講談社)などがある。

 
■翻訳統括:二宮美樹(にのみや・みき)さん

フランス・パリ大学ドドフィーヌ校国際ビジネス修士号取得。コーチ・エィにてグローバル情報調査を任される。

 

現実はいつも対話から生まれる
対話型組織開発、教育、心理療法etc.注目を集める「社会構成主義」最良の入門書。ここに対立を超える鍵がある―。

 


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