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『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』頭髪検査、下着の色チェック、性差別…隠れた社会問題として話題の「ブラック校則」の全貌とは

荻上チキさん・内田良さん編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』

荻上チキさん・内田良さん編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』

東洋館出版社は、 評論家の荻上チキさん(「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー)、教育社会学者の内田良さん(名古屋大学准教授、「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」協力者)による編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』を刊行しました。

隠れた社会問題として注目を浴びている「校則問題」に光を当て、その知られざる現状と、現代の学校現場の問題にメスをいれた一冊です。

 

今、もっとも重要な教育問題:「ブラック校則」

2017年、ある高校生が、生まれつきの茶色の髪を黒く染めるよう学校に強要され、精神的苦痛から不登校になりました。この事案は裁判にまで発展しています。このことを契機に立ち上がった「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」の調査によると、数多くの理不尽な校則が、現在の学校に存在していることが明らかになりました。

●「黒髪・ストレート」と校則で規定し、生まれつき茶髪の子は黒く染めさせる
●地毛証明書を発行するために、幼児期の写真を提出させる
●女子生徒の下着の色を指定し、検査、さらには没収さえする
●スカートの長さを厳しく指定、物差しで直接長さをチェックする
●合計10kg近くになる教科書等を、小学生に毎日持ち帰らせる
●防寒・暑さ対策の禁止。日焼け止めの禁止
………

このような理不尽な校則は、決してめずらしいものではなく、今も全国の学校に存在しています。社会一般であれば、明らかにおかしいと判断されるはずの規則や指導が、当然のものとして運用されているのです。

2018年7月には、愛知県豊田市の小学生が屋外学習中に熱中症となり命を失いました。この事故をきっかけに、校内のエアコン未整備や暑さ対策の不十分さが社会問題となりました。しかし、このような痛ましい事故にもかかわらず、たとえば学校での水分補給であれば「通学中は不可」「水分補給はお茶・水のみ」「スポーツ飲料は水で1/2以上に薄める場合のみ可」といった、科学的根拠のない非合理的なルールが、未だに存在しているのです。

学校は、「理不尽を学ぶのも学校」「勉強の場にオシャレは必要ない」といった理屈で、こうした理不尽な制限を課しています。また「痴漢対策」の名の下、下着の色チェックやスカートの長さ計測など、それ自体がセクハラと言われてもおかしくない指導が行われているのです。

このような社会情勢を鑑み、「ブラック校則」の実態、問題点、解決の糸口を本書は明らかにします。

 

本書の特徴:全国調査のデータ紹介、各専門家の提言

『ブラック校則』では、本書の編者が主導した全国的な調査結果(統計データ)をもとに、子どもの尊厳を侵すような校則の実態を明らかにしています。また、その具体的な事例を数多く紹介しています。

例えば、生まれつき黒髪でない高校生の20%が黒く染めさせられた経験をもつ、10代の層の16%が下着の色の指定を受けている、など。下着にワンポイントの柄が入っていたために、修学旅行中ブラジャーを没収された、といった驚くべき事案もあります。

こうした問題の把握や改善のためには、確かな調査結果に加え、それに基づく個別の問題点に対応できる分析と提言が必要です。こうしたことから、子どもの貧困支援、LGBTアクティビスト、弁護士といった専門的な視点に加え、保護者や教師といった当事者、学校の指導で子どもを亡くした「指導死」の遺族など、11名の専門家が現状の分析と改善の提言を行っています。

 

編著者プロフィール

■荻上チキ(おぎうえ・ちき)さん

評論家。「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。

著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。

TBSラジオ『荻上チキ Session-22』メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。

 
■内田良(うちだ・りょう)さん

名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。専門は教育社会学。

スポーツ事故、組み体操事故、「体罰」、教員の部活動負担や長時間労働などの「学校リスク」について広く情報発信している。ヤフーオーサーアワード2015受賞。

著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)、『「児童虐待」へのまなざし』(世界思想社、日本教育社会学会奨励賞受賞)、編著に『教師のブラック残業』(学陽書房)ほか多数。

 

ブラック校則 理不尽な苦しみの現実
いま、なぜ校則が問題なのか?

「校則問題はもう遠い昔の話なのでは?」
「今の子どもたちはのびのびと過ごしているのでは?」

実は…
背景を変えながら、いまも理不尽なブラック校則は子どもたちを苦しめ続けている

2017年、生まれつき髪が茶色の高校生が学校から髪を黒く染めるよう強要され、精神的苦痛を受けて不登校になったことから裁判を起こした。
この報道をきっかけに行われた全国的な調査から見えてきたのは、生まれつき茶・金髪の高校生の2割が黒く染めさせられている、女子生徒の下着の色を検査され、没収さえされるといった「ブラック校則」の現状だった――

○体操着の内側に下着着用禁止
○日焼け止めやリップクリームの禁止
○「おしゃれ」だからタイツの着用は禁止
○女子生徒の下着の色を検査され、没収さえされる
○指導対象の生徒に授業を受けさせない
○年功序列で非合理的な「部則」
○以前よりも増加している「厳格な指導」
………

子どもたちの理不尽な苦しみが、子どもたちの、そして社会の未来の足かせとなっている。その現状を、どのように変えることができるのか。
2017年の裁判をきっかけに発足した「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」による詳細な統計データや苦しむ子ども・保護者の声のほか、司法・貧困・トランスジェンダーなどの多様な論点、そして保護者・教師自身からみた校則の問題など、多様な論点からブラック校則の現状と、その解決策を探る。
巻末には荻上チキ・内田良による対談のほか、頻繁に問われる校則への誤解を解きほぐした「想定問答」を収録。

 
【関連】
▼『ブラック校則』特設サイト:ブラック校則 | 東洋館出版社

 


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