『こじれた仲の処方箋』母娘、夫婦、姉妹、友人……近しい間柄だからこそ、わだかまったままの「あの人」
東洋館出版社より、ハリエット・レーナーさん著、吉井智津さん訳『こじれた仲の処方箋』が3月5日に刊行されます。
全米ベストセラー心理学者が解き明かす、こじれた仲のほぐし方
「あのことを謝りたい」
「あのことを謝ってほしい」
「あの人のことが許せない」
「どうしたら許してもらえるだろう」
人間関係のわだかまりは「謝罪と許し」をめぐる問題と言い換えることもできます。著者が20年以上にわたって研究してきた「謝罪と許し」の視点から、人間関係の悩みを解いていきます。
誠意を伝えるハウツー、誠意がない人への対処法として役立つのはもちろん、許すということへの洞察は、傷つけられたままでいる人への癒やしにもなり得るものです。
ダメ謝罪の共通点5
(CHAPTER02「人をいらつかせる謝り方」より)
善意があっても、謝り方を知らない人は多くいる。その人たちは「ごめんなさい」とは言うけれど、それで相手の態度が軟化しない理由が理解できない。下手な謝り方には共通する要素があるのだが、それを理解しておくことは、うまい謝り方を知るための基本として重要だ。
1【言い訳】ごめんなさい、でも……。
2【気づかなかったアピール】ごめんなさい、そんなふうに思っていたなんて知らなくて。
3【自分は悪くない可能性を含ませる】もし不快にさせてしまったのなら、ごめんなさい。
4【相手の反応に焦点を移す】怒らせてしまって、ごめんなさい。
5【相手に特定の反応を求める】どうしたら許してもらえますか?
「許せない」苦しさから脱するヒント
(CHAPTER10「 “許す”ということ」より)
・「許す」か「許さない」かの二択ではない。
許しの専門家たちが二元的な言葉(加害者を許すか、自分自身の怒りと憎しみの虜でいつづけるかどちらかしかない)で話すとき、彼らは厄介なくらいに複雑な人間の感情を、単純な二元対立の公式に当てはめようとしてしまう。しかし、本当は、その相手を95パーセント許すこともできるし、2パーセントしか許さないこともできる。
・相手を許さないままでも、あなたが心の狭い人だということにはならない。
私は、許しの問題で苦しんでいる人々と、数十年一緒に仕事をしてきて、これだけは真実だと言えることがひとつある。それは、ネガティブな感情の苦しみから自分を解放するために、自分を傷つけた相手を許す必要はない、ということだ。許していないことを心に抱えていたとしても、それであなたは愛情深くないとか、未熟な人間だとかいうことにはならない。
・相手にされたことの大小は関係ない。
一度の大きなことでも、無数の小さなことでも、それによって残ってしまった怒りを抱えたままで、前進していけるとしたら、あなたはとても強い、勇気のある人間なのだ。
・すべてはあなた次第でいい。
何よりも重要なのは、あなたに許しなさいと言えるのは(あるいは、許してはいけないと言えるのは)、あなた以外にはいないということ。セラピストでも、親でも、親友でも、人間関係の専門家でもないということだ。「彼を/彼女を許すことはできませんか?」というのは、傷ついたり、犠牲を払ったりした側の人がいちばん聞かなくてよい言葉だ。ひどいことをした相手の責任を免除するように扱い、意志や美徳といったヒロイックな行為で怒りを超えようとしても、あなたは癒やされない。
著者は、「人間関係は、当事者同士がペアを組んで踊るダンスのようなものだ」と表現します。一見、相反するように思える2つの願い<相手との関係を、修復したい/手放したい>も、傷つけた側と傷ついた側の心の動きの相互作用のバリエーションです。
心に引っかかったままの”あの人”のことで悩んでいる人にとって、立場や状況を超えて道しるべとなる一冊です。
本書に出てくる”こじれた”事例
■甘やかされて育った妹に、溜まりに溜まった「あなたはズルい」という気持ちが爆発してしまった姉。
■次男の急死で悲しみに暮れる娘に対し、「長男のために強くなりなさい」と繰り返してしまった母。
■いつも「ごめんなさい」を連発する友人に、イラついてしまう。
■母が「私のせいでごめんなさい」と言いつづけるので、結局慰める側に立たされる娘。
■「謝らない男」と結婚してしまった妻。
■妻の叱責が激しくて、謝る気持ちがしぼんでしまう夫。
■奢ってもらって当然という態度の友人に、反省をうながしたい。
■自分を捨てた不倫夫を呪うことが生きがいとなってしまっている元妻。
■母の介護を手伝わない妹にイライラが募り、暴言を浴びせてしまった姉。
■「どうして●●してくれなかったの?」「それなら一言言ってくれればよかったのに」の泥仕合。
…ほか多数
ハリエット・レーナーさん プロフィール
著者のハリエット・レーナーさんは、女性と家族関係の心理学を専門とする、米国内でもっとも愛され、尊敬を集める人間関係のエキスパート。
心理学者として20年以上にわたりメニンガー・クリニックに勤務し、現在は、個人で開業している。ニューヨークタイムズ・ベストセラーとなった『The Dance of Anger』(邦訳『怒りのダンス』誠信書房)をはじめとする著書は、世界で300万部以上を売り上げている。
夫とともにカンザス州ローレンス在住。大きくなった2人の息子がいる。