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『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』デジタル中央銀行デジタル通貨とは何? 「デジタル人民元」は世界を席巻する? 市中銀行はついに崩壊? まもなく到来する「通貨システム」の大変革を第一人者が徹底解説!

野口悠紀雄さん著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』

野口悠紀雄さん著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』

野口悠紀雄さん著『CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃』が、新潮社より刊行されました。

 

国家が「デジタル通貨」を発行する理由と、私たちが直面する新たな現実! 経済学の最前線を走り続ける野口悠紀雄さんが、まもなく到来する「通貨システム」の大変革を徹底解説

大規模な社会実験が繰り返されてきた「デジタル人民元」が、来る2022年、北京五輪で世界デビューすると言われています。

これによってますます中国は覇権を強めることになるのか? ドルにとって代わるのではないか? さまざまな言説が飛び交う中、はたして私たちはどんな備えをしているのでしょうか?

 
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、これまで紙幣を発行してきた中央銀行が、あらたにデジタルの形で発行する通貨です。デジタル通貨で真っ先に思い出される「ビットコイン」は違うものです。

 
現在、中国の「デジタル人民元」をはじめ、スウェーデンの「e‐クローナ」、カンボジアの「バコン」など、すでに開発と社会実験が進んでいる国が多数ある一方で、日本はどうでしょうか?

日本銀行のHPを見ると「決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えている」と但し書きを添えつつも、あくまでも「現時点でCBDCを発行する計画はない」と言い切っています(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel201009e.htm)。

 
このままいくと、このデジタルの時代、日本は世界からさらに水をあけられかねません。

世界各国の中央銀行がCBDCに躍起になっているのは、即時決済などの利便性により、上手く活用すれば、国内のみならず国際間ビジネスにおいて大いなるアドバンテージを得ることが出来るからです。なのに、なぜ日本は「計画はない」と言い切ってしまうのでしょうか?

 
先行する世界の動きを精査しながら、日本を縛り付ける旧態依然の経済システムを指摘して、きたるべきデジタル通貨時代に求められる「知識」と「心構え」を示します。

 

著者コメント

中国のデジタル人民元とスウエーデンのe‐クローナ。これら「中央銀行デジタル通貨」が発行間近だ。欧州中央銀行も、デジタルユーロの導入に向けて準備を進めている。中央銀行デジタル通貨は、あらゆる経済活動に影響を与え、社会構造を一変させる。日本は、これに対応できるのか?強い危機感に突き動かされて、本書を書いた。

 

本書の構成

はじめに

第1章 リブラが口火を切ったデジタル通貨
1 世界通貨「リブラ」の構想が与えた衝撃
2 電子マネーではなく、仮想通貨だから重要
3 本当は日本にとっても大問題
4 プライバシーを求めるのか? 管理社会を許容するのか?
5 価格安定化は容易でない
6 「リブラ」から「ディエム」へ

第2章 CBDCの仕組みと必要性
1 CBDCの仕組み
2 国民の利便性向上と金融包摂
3 中央銀行の立場から見て、なぜデジタル通貨が必要か?
4 複雑でコストが高い現在の仕組み

第3章 デジタル人民元は大きな脅威となる
1 デジタル人民元の基本構造
2 デジタル人民元の詳細構造
3 デジタル人民元はいかなる影響を及ぼすか?
4 広範に使われている電子マネーはどうなるのか?
5 デジタル人民元の目的は電子マネーの排除?

第4章 中央銀行デジタル通貨は社会の基本を変える
1 中央銀行によるデジタル通貨発行の競争が加速
2 銀行預金が流出するという大問題
3 銀行預金の流出への対処法
4 プライバシー問題にどう対処するか?
5 中央銀行による通貨発行の独占は必要か? 望ましいか?

第5章 ビットコイン創始者は「国の管理から自由な通貨」を求めた
1 「プライバシーが守られる通貨」に惹かれた人々
2 ねじ曲げられた当初の理想
3 資金逃避先となったビットコイン
4 アンドリーセンがビットコインに夢を託す
5 仮想通貨の重要性が広く認められるようになった
6 ビットコインは「デジタル・ゴールド」になったか?

第6章 「デジタル円」の前に立ちはだかる厚い壁
1 「デジタル円」は動き出すのか?
2 日本はキャッシュレス後進国
3 手数料収入を当てにするメガバンクのデジタル通貨戦略は間違い
4 乱立する日本の電子マネー
5 「デジタル円」の利用料をゼロにできるか?

第7章 パラダイムの転換に成功した社会が未来を拓く
1 デジタル人民元のインパクト
2 スウェーデンやユーロはCBDC導入に向かう
3 デジタルドルはどうなるか?
4 「ディエム」はどうなるか?
5 CBDCはパラダイムの転換

終章 デジタル通貨時代に向けての5つの提言
1 危機感を持って通貨主権を守れ
2 デジタル通貨政策を確立せよ
3 銀行のビジネスモデルを、「手数料」から「データ利用」に大転換せよ
4 個人情報主権を確立せよ
5 デジタル通貨をきっかけとして、日本の未来を構築せよ

索引

 

著者プロフィール

著者の野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)さんは、1940年生まれ。東京大学工学部卒業。大蔵省入省。1972年イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学ファイナンス研究科教授などを歴任。専攻 はファイナンス理論、日本経済論。一橋大学名誉教授

主な著書に『情報の経済理論』(東洋経済新報社)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社)、『「超」整理法』(中公新書)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞出版社)、『戦後経済史』(日経ビジネス人文庫)など多数。

 

CBDC 中央銀行デジタル通貨の衝撃
野口 悠紀雄 (著)

ついに始まった「通貨覇権戦争」の本質を、第一人者が徹底解説!

各国の中央銀行が乗り出した通貨システムの大変革が、ビットコインとは比較にならないほど巨大な影響を、世界に与えようとしている。
送金情報を国家が把握し、市中銀行が崩壊するという懸念。
通貨覇権を目指す「デジタル人民元」を前に、大きく後れを取った米国と日本。
「デジタル通貨危機」を乗り越える道を明らかにする。

 
〈はじめに〉より
マネーの世界に大きな変化が起ころうとしている。
われわれがこれまで日常的に用いていた日銀券や銀行の口座振替、あるいはクレジットカードや電子マネーが、「デジタル通貨」と呼ばれるものに変わる可能性がある。
これが実現すれば、日常の買い物も、遠隔地への送金も、あるいはウエブサイトへの送金も、スマートフォンの操作だけで簡単にできるようになる。場合によっては、海外への送金も国内送金と同じように簡単にできる。
これは、われわれの生活を便利にし、経済活動の生産性を大きく向上させる。それだけでなく、社会の基本構造を根底から変革することになるだろう。
ただし、よいことばかりではない。場合によっては、銀行がなくなるほどの大きな変化が起こりうる。誰もがこの巨大な変化から逃れることはできない。
マネーの仕組みは分かりにくいので、これがどれほど大きな問題かが、一般にはよく理解されていない。それを解説するのが本書の目的だ。
デジタル通貨には、まず中央銀行が発行するものがある。これは、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)と呼ばれる。
中国では、世界に先駆けて「デジタル人民元」の開発が進んでおり、何度かの実証実験がすでに行われている。2022年の北京オリンピックまでには実際に発行される可能性が高い。スウェーデンでも、実証実験が進行中だ。
もう1つは、民間主体が発行するものだ。アメリカのSNS提供企業フェイスブックが、「ディエム」というデジタル通貨の発行を計画中だ(当初は「リブラ」という名称だった)。これが発行されると、これまでなかった巨大な通貨圏が誕生し、銀行のみならず、中央銀行の存在さえ揺るがすような大変化が起こる可能性がある。
デジタル通貨が広く用いられるようになると、その発行者は詳細な取引情報を把握することができる。これを用いて個人の行動を詳細に推定することが可能になる。
CBDCの場合には、こうした情報が国民管理の手段に使われる可能性もある。これを認めてよいかどうかは、個人の自由の基本にかかわる重大問題だ。

 


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