『LAGOM “私にとって、ちょうどいい”―スウェーデンの幸せ哲学』頑張りすぎない、持ちすぎない、捨てすぎない“LAGOM(ラーゴム)”な暮らし
ニキ・ブラントマークさん著『LAGOM “私にとって、ちょうどいい”―スウェーデンの幸せ哲学』(訳:稲垣みどりさん)が、東洋館出版社より刊行されました。
「私にとって、ちょうどいい」が一番! 日常生活を心地よいバランスにするヒント集が一冊に
ロンドン出身の著者・ニキ・ブラントマークさんは、結婚を機に、夫の母国であるスウェーデンに移り住みました。
スウェーデンでの「ラーゴムな毎日」は、それまでのあくせくした生活では忘れかけていた「穏やかな充実感」を取り戻させてくれました。
3人の子どもの母親でもあり、北欧ライフスタイルを紹介する「My Scandinavian Home」のクリエイターでもある著者が、日常生活を心地よいバランスにする秘訣を伝えます。
LAGOM(ラーゴム)ってなに?
LAGOM(ラーゴム)は、スウェーデン人の精神に深く染み込んでいる概念です。
“多すぎず少なすぎず”というふうによく説明されますが、つまりは、自分自身にとって、ちょどいいバランスを見つけること。
たとえば、いい湯加減なら「ラーゴムなお湯」、適切な働き方なら「ラーゴムに働く」、はき心地のいいズボンなら「ラーゴムなズボン」。このようにどんな文脈にも使える言葉です。
語源をたどると、ヴァイキングたちの言葉「Laget om(ラーゲット・オム)=仲間と分け合う」から来ていると言われています。
輪になって蜂蜜酒を回し飲みするときに、それぞれがちょうどいい量を飲む――全員が同じ量を飲むのではなく、少なくていい人がいれば、多めに飲みたい人がその分を飲む――ことを大切にする精神です。
スウェーデン発の、IKEA、VOLVO、Spotifyといった世界的な企業に共通する、デザインと機能、先進的な面とベーシックさ、コストパフォーマンスなどの“バランスのよさ”も、ラーゴムな精神にもとづいているのではないかと、著者は指摘します。
実はとても親しみやすい国・スウェーデン
海外のライフスタイルというと、いわゆる日本人的な感覚とはちがう視点に立っていることも多くあります。
しかしスウェーデンは、欧州のなかにあっても、家の中では靴を脱ぐ、時間に生真面目、激しい自己主張が苦手、質素さや素朴さに美を感じるなど、日本に似た面を多く持っているのです。
そんな親しみやすい国だからこそ、ラーゴムな暮らしは、私たちにとっても幸せのヒントになるはずです。
ラーゴムな暮らしへのアドバイス例
本書では、家の中(インテリアや省エネ活動)、仕事、休暇、お祝いごと、人間関係、など日常生活のあらゆる面において、ラーゴムに暮らすヒントを紹介しています。
※以下、本書より一部抜粋(編集)
【インテリア】
◆照明は色温度に気を配る(蛍光灯ではなく、電球色の電球に)
◆理由のないものは捨てる(使いみちはなくても、それを見るだけで癒やされるようなものは、とっておきます。誰かにもらったから何となく捨てづらいというだけのものは、捨てるかリサイクルに出しましょう)
◆自然の素材のものを取り込む(木製の小さなテーブルを置く、ウールのブランケットを椅子にかける、小石や貝殻を棚に置くなど、自然の素材のものをすこし取り入れるだけで、部屋にあたたかみが増します)
【働き方】
◆ひと休みする(勤務時間中にもフィーカパウズ(=コーヒーとおやつの休憩)を設けるのがスウェーデン流です。おしゃべりはフィーカパウズで、それ以外の時間は集中して仕事をします。休憩を定期的にとったほうが、集中力が増し、頭痛や腰痛といったトラブルは少なくなるという調査結果もあります)
◆ひとりの時間を認める(人といるとどっと疲れてしまう人は、ひとりでコーヒーを飲んだり、オフィスの周りを歩いたりして休憩します。そのことを周りも咎めることはしません)
◆終業時刻になったら「楽しい夜を!」と声をかけあって帰る(ロンドンでは、定時に帰ろうとすると「今日は半休?」などと言われたものですが、スウェーデンではそのようなことがありません。買い物や余暇の時間をとれるので「きちんと生活している」と感じられ、それが日々の仕事の生産性アップにつながります)
【育児】
◆両親ができるだけ同じだけ子どもと接する(育児休業を父母がなるべく同じ日数とることが推奨されています。「ラッテ・パッパ」と呼ばれる、日中にカフェでくつろぐ子連れのお父さんの姿は、日常風景です)
◆読み書きをいち早く教えることに意味はない(スウェーデンの子育てで気に入っていることのひとつは、競争意識を感じたり、子どもが就学まえに読み書きできることを親が誇らしげに言ったりすることを聞くことがほとんどないことです。何事も学ぶ準備ができた時期に学べば、必要以上の時間や手間がかかりません。親子ともにストレスなく成長できるのです)
◆「退屈」を怖がらない(子どもが飽きないように、いろいろなことをやらせたくなりがちですが、スウェーデンでは課外活動を詰め込むことをしません。“静かな時間”を設けることを大切にします。「つまんない!」と子どもがすねても、自分で面白い遊びを思いつく力を信じて見守りましょう)
本書の目次
ラーゴムとの出会い
01 日々の暮らしとラーゴム
ラーゴムな家
ラーゴムに心を落ち着かせる
ラーゴムに体を喜ばせる
成功へのラーゴムな鍵
02 身近な人たちの関係とラーゴム
ラーゴムに友情を育む
人間関係をラーゴムに
ラーゴムな子育て
季節のイベントのラーゴムな手引き
03 社会との関わりとラーゴム
ラーゴムなコミュニティー意識を持つ
自然を尊重するラーゴムな手引き
ラーゴムに省エネする
フットプリントをラーゴムに減らす
ラーゴムにエコな日々を送る
結びの言葉
注釈
索引
写真協力
謝辞
自分のペースで人生を楽しみたいあなたへ。
LAGOM【ラーゴム】とは、スウェーデンのライフスタイルに息づく概念。
ちょうどいい、ほどほど、合理的、平等……そんなニュアンスを含んだ、スウェーデン独自の言葉です。