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【第78回毎日出版文化賞】小林エリカさん『女の子たち風船爆弾をつくる』など5作品が受賞

毎日新聞社は11月3日、優れた出版物の著編者、出版社を顕彰する「第78回毎日出版文化賞」の受賞作品を発表しました。

 

第78回毎日出版文化賞が決定!

第78回毎日出版文化賞の受賞作品が、次の通り決定しました。
なお、贈呈式は12月19日午後2時、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開催されます。

 
<第78回毎日出版文化賞 受賞作品>

■文学・芸術部門
小林エリカ(こばやし・えりか)さん
『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝春秋)

■人文・社会部門
寺澤行忠(てらざわ・ゆきただ)さん
『西行 歌と旅と人生』(新潮選書)

■自然科学部門
佐藤文隆(さとう・ふみたか)さん
『量子力学の100年』(青土社)

■企画部門
山根貞男(やまね・さだお)さん
『日本映画時評集成』全4巻(国書刊行会)

■特別賞
安田浩一(やすだ・こういち)さん
『地震と虐殺 1923―2024』(中央公論新社)

 

毎日出版文化賞について

毎日出版文化賞は1947年に本の出版文化の向上を願って創設。毎日新聞社が主催し、優れた出版物の著編者、出版社などを顕彰する文学・文化賞です。大日本印刷が特別協力。

「文学・芸術」、「人文・社会」(ノンフィクション、歴史、民俗、思想、哲学、宗教、政治、経済など)、「自然科学」、「企画」(全集、講座、辞典、事典、書評など)および、広く読者に支持され、出版文化の向上に貢献した出版物に贈られる「特別賞」の5部門で選考が行われます。対象となるのは、前年9月1日から当年8月31日までの間に初版が刊行された出版物、同時期に完結した全集などです。

「文学・芸術」「人文・社会」「自然科学」「企画」の各部門の受賞者には、賞状と記念品、賞金100万円が贈られます。
また、広く読者に支持され、出版文化に貢献した出版物に特別賞を贈呈する場合があります。「特別賞」の受賞者には、賞状と記念品が贈られます。

 

女の子たち風船爆弾をつくる
小林 エリカ (著)

日露戦争30周年に日本が沸いた春、その女の子たちは小学校に上がった。できたばかりの東京宝塚劇場の、華やかな少女歌劇団の公演に、彼女たちは夢中になった。彼女たちはウールのフリル付きの大きすぎるワンピースを着る、市電の走る大通りをスキップでわたる、家族でクリスマスのお祝いをする。しかし、少しずつ、でも確実に聞こえ始めたのは戦争の足音。冬のある日、軍服に軍刀と銃を持った兵隊が学校にやってきて、反乱軍が街を占拠したことを告げる。やがて、戦争が始まり、彼女たちの生活は少しずつ変わっていく。来るはずのオリンピックは来ず、憧れていた制服は国民服に取ってかわられ、夏休みには勤労奉仕をすることになった。それでも毎年、春は来て、彼女たちはひとつ大人になる。
ある時、彼女たちは東京宝塚劇場に集められる。いや、ここはもはや劇場ではない、中外火工品株式会社日比谷第一工場だ。彼女たちは今日からここで、「ふ」、すなわち風船爆の製造に従事する……。

膨大な記録や取材から掬い上げた無数の「彼女たちの声」を、ポエティックな長篇に織り上げた意欲作。

西行:歌と旅と人生 (新潮選書)
寺澤 行忠 (著)

184首の名歌と共に語られる、西行の魅力のすべて。
「願はくは花の下にて春死なむ」――どうすれば西行のように清々しく生きられるのか。出家の背景、秀歌の創作秘話、漂泊の旅の意味、桜への熱愛、無常を乗り越えた「道」の思想、定家との意外な関係、芭蕉への影響……偉才の知られざる素顔に迫る。西行一筋60年、西行歌集研究の第一人者がその魅力を語り尽くす決定版。

<出版社からのコメント>
著者は慶應義塾大学名誉教授で、西行歌集研究の第一人者。誤った形で現代に伝えられてきた西行の歌の数々を本来の姿に復元し、岩波文庫『西行全歌集』でもその仕事が特筆された碩学です。
『新古今和歌集』に最多の94首が撰入された歌人としての西行はもちろん、「旅」「桜」「道の思想」「仏教と神道の共存」など文化史における西行の知られざる事績を分かりやすく紹介してくれる一冊です。

量子力学の100年
佐藤文隆 (著)

第一人者がみた量子力学の軌跡。その魅力と不思議。
1920年代、ド・ブロイ、ボーア、ハイゼンベルク、シュレーディンガー、ディラックなどが現在の量子力学の礎となる成果を続々と発表した。そして1926年、ボーアの手によって「コペンハーゲン解釈」がなる。ユネスコは2025年に量子力学百年を記念する取り組みを行うことを決議した。この間の量子力学の道のりは、アインシュタインの反対などに代表されるように紆余曲折ありつつも、不思議と魅力にみちたものだった。しかしいまや量子コンピュータから生成AIまで、あらゆるところに量子力学は存在している。はたしてそれは何故か、そもそも量子力学とは何で、そしていまどのような姿をしているのか。日本を代表する物理学者が、自らの目でみてきた量子力学の歴史を詳述する。

日本映画時評集成 2011-2022
山根貞男 (著)

徹底して日本映画の現在と格闘しながら新たな〈活劇の行方〉を問いつづける――
45年におよぶ《日本映画時評》を一挙単行本化!
時評を突き抜けた圧巻の時評集成、最終巻。

*別冊附録 上野昂志、三上雅通、鈴木一誌各氏との『日本映画時評集成』(既刊3巻)刊行時の記念対談を集成(32頁)
・映画と動いている 上野昂志×山根貞男
・愛と憤怒の書をめぐって 三上雅通×山根貞男
・現代日本映画における〈活劇の行方〉新宿篇 鈴木一誌×山根貞男
・現代日本映画における〈活劇の行方〉神戸篇 鈴木一誌×山根貞男

地震と虐殺 1923-2024
安田 浩一 (著)

「朝鮮人が暴動を起こした、井戸に毒を投げ込んだ……」。関東大震災の発生直後、各地で飛び交ったデマによって多くの朝鮮人が命を奪われた。非常時に一気に噴き上がる差別と偏見。東京で、神奈川で、千葉で、埼玉で、悲惨な事件はいかなるメカニズムで起きたか。虐殺の「埋もれた歴史」は誰によってどのように掘り起こされてきたか。100年余りが経過した現在、何が変わり、何が変わらないのか。歴史的事実を葬ろうとする者たち、人災を天災の中に閉じ込めようとする政治家、差別行為にお墨付きを与える行政……。差別やヘイトクライムの問題を長年追ってきたジャーナリストが100年余り前と現在を往還し、虐殺事件が及ぼし続ける様々な風景を描く。

 
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社告:第78回毎日出版文化賞決定 | 毎日新聞

 


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