続殺人犯を、本が狩る――作中作が仕掛ける罠に殺人鬼ははたして囚われるのか? 報復サスペンス『ナッシング・マン』邦訳版が刊行
アイルランドの人気ミステリー作家キャサリン・ライアン・ハワードさん著『ナッシング・マン』(訳:髙山祥子さん)が新潮文庫より刊行されました。
連続殺人犯がふと手にした本には、彼の凶悪な犯罪が克明に記されていた――。
先に刊行されたジョセフ・ノックスのノワール・サスペンス今年最大の話題作『トゥルー・クライム・ストーリー』に勝るとも劣らないほど構成に趣向をこらした、ハワードの最新サスペンス小説『ナッシング・マン』は、作中作を物語展開に効果的にからめた斬新さが評価され、2021年にはCWA(英 国推理作家協会賞)イアン・フレミング・スティールダガー賞の最終候補作に選ばれました。
【あらすじ】
12歳のイヴは、連続殺人犯〈ナッシング・マン〉に家族を惨殺された。唯一の生存者となった彼女は成人し、幸福だった人生をぶち壊しにした殺人鬼の正体をつきとめようと心に誓い、その犯行の経緯を取材したノンフィクション小説『ナッシング・マン』を出版する。
一方、偶然この本を読んだショッピング・モールの警備員ジム・ドイルは、作者イヴが思った以上に、自分の一連の犯行を詳細に調査していることを知り、焦燥感にかられる。いてもたってもいられず、イヴが姿を見せるはずのサイン会へ向かうジム。一触即発の空気のなか、待ち受けていたのは、思いもよらぬ展開だった……。
デビュー作『遭難信号』、2021年発表の『56日間』と、サスペンスフルな展開だけでなく、つねに凝りに凝った構成を用意し、新たな作品世界に挑んできた作家ハワード。まさに彼女の本領発揮とも言える本作は、犯人解明への執念で綴られた一冊の本が凶悪な犯罪者をあぶり出すという大胆な発想に加えて、それを犯人の側から描くという新しい視点も盛り込んだ、異色の報復サスペンス小説に仕上がっています。またひとつ、海外サスペンス小説の傑作がここに誕生しました。
著者プロフィール
■著者:キャサリン・ライアン・ハワードさん
1982年生まれ、アイルランド・コーク出身。小説やノンフィクションの自費出版を経て、デビュー作『遭難信号』(2016年)がCWA新人賞(ジョン・クリ ーシー・ダガー)、翌々年発表したThe Liar s Girl は、MWA最優秀長篇賞の最終候補に選ばれる。さらに『ナッシング・マン』(2020年)も、CWA賞イアン・フレミング・ステ ィール・ダガーの最終候補となった。
■訳者:髙山祥子(たかやま・しょうこ)さん
1960年生まれ、東京都出身。成城大学文芸学部卒業。バロン『世界一高価な切手の物語』、ドーソン『アメリカのシャーロック・ホームズ』、チャ ールズ『あの図書館の彼女たち』、ソログッド『マーロー殺人クラブ』、ハワード『56日間』『ナッシング・マン』など訳書多数。
ナッシング・マン (新潮文庫) キャサリン・R・ハワード (著), 髙山 祥子 (翻訳) 本が、殺人鬼を狩る――! |
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▼試し読み | キャサリン・ライアン・ハワード、高山祥子/訳 『ナッシング・マン』 | 新潮社
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