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アイヌを取りまく「もやもや」の正体にせまる!『アイヌもやもや 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。』が刊行

『アイヌもやもや 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。』(著:北原モコットゥナシさん、漫画:田房永子さん)が303BOOKSより刊行されました。なお、同社ウェブサイトでは第1章を無料公開中です。

 

信じがたい現職国会議員のアイヌ差別発言

2016年、国連女性差別撤廃委員会に出席したアイヌ女性に対して、国会議員のひとりが「国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります。」とブログに記しました。これほど明らかな民族差別発言はありません。しかし、この議員は明確な謝罪を拒み、その後も問題発言を重ねています。

 

漫画とアニメ「ゴールデンカムイ」のヒット以降注目されたアイヌの文化

アイヌのキャラクターが出てくる『ゴールデンカムイ』のヒット以降、さまざまなアイヌに関する書籍が発行されています。その多くは伝統的なアイヌの文化を解説するものです。

 
日本には多くのアイヌが暮らしています。しかしメディアで話題になることは限られており、また、現職国会議員がアイヌをはじめとする民族的マイノリティへの差別発言を繰り返しているという現実があります。こうした現状を、アイヌ、非アイヌ、どちらの側からも、どのように捉えたら良いのか、わかりやすく解説した書籍はありませんでした。

 

今を生きるアイヌが何を思い、何に苦しめられているのか、アイヌとフェミニストの漫画家がタッグを組んで、誰にでもわかるように解説したはじめての本

自身は東京生まれ埼玉育ちのアイヌで、アイヌの研究者で「ゴールデンカムイ」の監修にも協力した北海道大学教授の北原モコットゥナシさん。『男社会がしんどい ~痴漢だとか子育てだとか炎上だとか~』『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』などの書籍を手掛け、フェミニズムを多くの人に身近にし、考えるヒントを与えた漫画家の田房永子さん。北原さんの思いに、田房さんが応える形で、書籍『アイヌもやもや』の制作がスタートしました。

 
北原さんの実体験やまわりで見聞きしたことをもとに田房さんが漫画を執筆。北原さんがそれはどういうメカニズムで起きた差別で、どう人が苦しむのか、図をまじえながらわかりやすく解説していきます。

そしてフェミニズム、LGBTQ+、ヘイト、誹謗中傷、ルッキズム、無理解、トーンポリシングなど時代のキーワードを使いながら、今を生きるアイヌの思い、その姿を描きだしました。

まんがのいち場面

まんがのいち場面

解説ページ 図表もふんだんにもりこんでいる

解説ページ 図表もふんだんにもりこんでいる

 

第1章「言い出しにくいんです」を無料公開

版元の303BOOKSは本書について、より多くの方に知っていただくために、マジョリティの無知、無理解がマイノリティにおよぼす影響について解説した第1章「言い出しにくいんです」を特設サイトにて無料公開中です。

★特設サイト;https://303books.jp/ainu-moyamoya/

 

著者プロフィール&コメント

 
■著:北原モコットゥナシ(きたはら・もこっとぅなし)さん
※「シ」はアイヌ語小文字

1976年生まれ、東京都杉並区出身。北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授。アイヌ民族組織「関東ウタリ会」の結成に両親が関わったことで、文化復興や復権運動をはだで感じながら育つ。13歳のころ、北海道に暮らす祖母、トーニンテマハの影響でアイヌ語樺太方言や樺太アイヌの文化に関心をもつ。和名は北原次郎太。

著書に『アイヌの祭具 イナウの研究』(北大出版会)『ミンタラ1 アイヌ民族27の昔話』(小笠原小夜さんと共著、北海道新聞社)など。

 
[コメント]
「日本列島北部の先住民族」といわれるアイヌ。けれど、著者は東京都杉並区生まれのアイヌです。関東でも、北海道でも、アイヌのまわりには、いつも言葉にしにくいモヤモヤがついてまわり、視界を邪魔したり、息苦しくなったりすることも。モヤの正体を探っていくと、その向こうに、女性としてLGBTQ+として障がい者としてモヤを払う人々の姿がありました。そのお一人、田房永子先生によって、けっして軽くはない、とらえにくいテーマを、魅力的で柔らかな絵柄とともにお伝えできることとなりました。

 
■漫画:田房永子(たぶさ・えいこ)さん

1978年生まれ、東京都千代田区出身。。漫画家、エッセイスト。2001年、アックスマンガ新人賞佳作受賞。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に発行。大きな反響を呼ぶ。

他にも『キレる私をやめたい』(竹書房)、『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(上野千鶴子さんと共著、大和書房)など著書多数。

 
[コメント]
「アイヌもやもや」のお話をいただいた時は、「アイヌのことに完全に無知な私が携わっていいのだろうか」という不安がありました。でも、北原モコットゥナシ先生の文章を読ませていただき、アイヌの人たちの視点を通して見る世界が、私が女性として生きてきた中で納得がいかなかったことと通じているところがあると知って、ぜひ漫画を描かせてもらいたいと思いました。

北原先生の文章はとても面白く分かりやすくて、無自覚だった自分のマジョリティの部分も刺激され、この社会の構造を、よりクリアに捉えることができるようになったと感じています。漫画では、東京で生まれ育ったアイヌの少年・颯太を主人公に、彼をとりまく人々を描きました。ぜひたくさんの人に読んでもらいたいです。

 

アイヌもやもや: 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。
北原モコットゥナシ (著), 田房 永子 (イラスト)

【漫画『ゴールデンカムイ』の監修にも参加!北原モコットゥナシがアイヌをとりまくもやもやを丁寧に解説】
日本の民族的マイノリティであるアイヌ。北海道が舞台のドラマでもその姿を目にすることはめったになく、教科書に載っているのも民族衣装を着た姿ばかり。非アイヌにとって、今を生きるアイヌの姿は、まるで厚い「もや」の向こう側にあるかのようです。アイヌは、どんなことに「もやもや」を感じているのか? その「もやもや」はどこから来るのか? 無知・無理解や差別の構造、そしてマイノリティとマジョリティの関係など、北原モコットゥナシが様々な視点から考察してゆきます。

【アイヌが感じている「もやもや」を、田房永子が漫画で表現!】
母からの過干渉への葛藤や男性を中心に回る社会への疎外感を、鋭い視点でユーモアをもって描いてきた田房永子。本書では、アイヌが日常のなかで出会うさまざまな「もやもや」を田房氏の手によって漫画化しています。マジョリティに優位な社会の仕組みや、まわりからの無理解により、まるで虚を衝かれたような感覚に陥る瞬間など、漫画を通して感覚的に共有することができます。

デザイン:倉科明敏(T.デザイン室)

 
【関連】
アイヌもやもや 見えない化されている「わたしたち」と、そこにふれてはいけない気がしてしまう「わたしたち」の。|2023年12月12日発売! | 303BOOKS

 


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