河﨑秋子さん〈生きるための死闘を描き切った圧巻の「クマ文学」〉『ともぐい』が刊行
河﨑秋子さんの最新長編『ともぐい』が新潮社より刊行されました。
大藪春彦賞受賞『肉弾』の衝撃から6年、生きるための死闘を描き切った圧巻の「クマ文学」が誕生
◆角幡唯介さん(探検家・ノンフィクション作家)
「熊を狩る。人間と自然との最も劇的な接点に、死に場所をもとめる男の生き様に憧れる」
◆小池真理子さん(作家)
「獣のように生き、まぐわい、死を受け入れる。荘厳な命の滴りを描き尽くした傑作」
◆東山彰良さん(作家)
「今日(こんにち)的な幸福というちっぽけなヒューマニズムでは測れない、むきだしの物語だ」
◆東出昌大さん(俳優)
「驚かされた。自分もそこに立ち会っているかのような、圧巻のシーンの連続」
2012年、第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞を経てのデビュー以来、自然を相手に書き続けながら数多くの文学賞を受賞し、常に注目を浴びている小説家・河﨑秋子さんの最新長編『ともぐい』が新潮社より発売されました。
山の王者である熊に、村田銃と一匹の犬だけを伴い挑む男の姿を描いた本作。時に瀕死の重傷を負いながらも執念深く、情け容赦のない最強の熊を追い続けるのは、己の生きた証を見出すため。
命とは、生を喰らうとは何なのか――根源的な問いを私たちに突き付けながら、抗えない運命の皮肉までも謳い上げた堂々たる物語です。
本作の舞台は明治後期の北海道。猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物を追う熊爪(くまづめ)は、真意の読めない盲目の少女との出会いやロシアとの戦争に向かう時代の変化の波に戸惑いながらも、生きる意味を求めて、熊との壮絶な対決へと自らを追い込んでいきます。
山や獣の骨太な息遣いと揺らぐ人間の繊細な姿を両立して表現する見事な筆致、そして特に熊と対峙した死闘における、ページを繰る手を止められない血沸き肉躍る圧倒的な描写。
北海道の地で厳しい自然と直に触れながら言葉を紡ぎ続けてきた著者だからこそ描ける、人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶってやまない傑作です。
【あらすじ】
明治後期の北海道。人里離れた山中で犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪(くまづめ)は、ある日、熊と人間の足跡と血痕を見つける。それを辿った先に倒れていた男は、冬眠していない熊、「穴もたず」を追っていたと言うが……。
河﨑秋子さんコメント「十年以上の時を経たからこそ、向き合えた物語」
『ともぐい』はもともと、学生時代以来ひさびさに小説を書こうと思った十四年前、綴った物語でした。
人間と獣、社会と野生、同じ地上で息づきながら、時に相容れず傷つけ合いさえするものを形にしたいと、自分なりに追い求めながら筆を進め、明治の北海道を舞台に独り生きる猟師の話となりました。今思えば筆力も技術も未熟で、自分の当時の甘さを突き付けられるものですが、未熟なりに自分の文学の始点であったように思います。
その後、巡り合わせと人のご縁のお陰で、今一度この物語に向き合うことができました。当時の粗削りな芯を忘れることなく、作家として、羊飼いとして、北海道に生きる人間として生活した十四年分の私の人生を上乗せする形で書き上げられたと思っています。
◆人間と人間以外のものについて書くということ
ここ数年、現実の世界では急激な気候の変化や野生動物との距離など、人間が人間以外のものといかに共存するかが問われ、また個々人で考える機会が増えています。そして、今後ますます眼前に突きつけられるような予感がします。その意味において、作者の私自身がいずれこの『ともぐい』から改めて何かを汲み上げる日がくるかもしれませんし、読んで下さった方が作者の意図を超えて何かを受け取り、考えてくれたなら幸いです。
著者プロフィール
河﨑秋子(かわさき・あきこ)さんは、1979年生まれ、北海道別海町出身。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞。2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞を受賞し翌年デビュー。同作は2015年度JRA賞馬事文化賞も受賞。
2019年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、2020年『土に贖う』で新田次郎文学賞を受賞。
その他の著書に『鳩護』、『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)、『介護者D』『鯨の岬』『清浄島』などがある。
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