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『おらおらでひとりいぐも』から6年――若竹千佐子さん第2作『かっかどるどるどぅ』が刊行

第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞のデビュー作『おらおらでひとりいぐも』から6年、若竹千佐子さんの第2作『かっかどるどるどぅ』が河出書房新社より刊行されました。

 

「ひとりで生きる」から「みんなで生きる」へ

デビュー作『おらおらでひとりいぐも』で様々な快挙を成した、若竹千佐子さんによる第2作『かっかどるどるどぅ』は、現代社会で仕事や介護、家族やお金など、様々な問題を抱え孤立して生きざるを得ない、寄る辺ない登場人物たちが、いかに「共に生きていく」ことができるのかを描いた群像劇です。

 
「戦うっていいよね。何も、刀もって槍もってというわけじゃないよ。戦うって言葉の気魄が好きなんだ」――ひとり一人の人間性を軽んじるような社会に対し抗う姿が、東北弁をはじめ、豊かな文体を駆使して活写される、著者真骨頂と言える一作です。

 
若竹千佐子さんは、55歳から8年間をかけ執筆した、2017年、前著『おらおらでひとりいぐも』で第54回文藝賞を受賞しデビュー(史上最高齢受賞)。同作は第158回芥川賞も受賞し(史上2番目の高齢受賞)、一躍時の人となりました。

老年を迎え、夫に先立たれた主人公・桃子さんのひとり語りを中心に展開されたデビュー作は、とりわけ40代~70代読者からの共感を呼び、累計発行部数68万部を突破。2018年「単行本/文芸書」年間ランキングの第1位に輝く大ベストセラーとなりました(トーハン調べ)。2020年11月には沖田修一監督による映画化(田中裕子さん主演)、2022年9月にはドイツの文学賞リベラトゥール賞を日本人で初めて受賞、世界10ヵ国で翻訳される等、その後も話題が続いています。

 
人間の孤独と内面をとことん見つめ、再び立ち上がるまでを描き、多くの感動を呼んだ前作のテーマを更に深化させ、昇華させた、6年越し、待望の第2作がついに発売となりました。

 

『かっかどるどるどぅ』内容紹介

女優になる夢を捨てきれず、つましい暮らしを送る60代後半の悦子。夫を亡くし、舅姑の介護に明け暮れ、気づけば自分を持たぬままに68歳になっていた芳江。大学院を出たものの就職氷河期に重なり、非正規雇用の職を転々とする30代の理恵。そして生きることに不器用で、自死まで思いつめ河川敷に座り込む20代の保――。

 
それぞれに、ままならない不安な毎日を送る4人は、引きつけられるように古いアパートの一室を訪れるようになる。そこでは片倉吉野という不思議な女性が、自室を開放し、訪れる人たちに食事をふるまっていた――。

孤立し、寄る辺なく生きるすべての人を強く励ます、感動の群像劇。

 
<本書の舞台「萬葉通り商店街」をめぐる人々>

◎里見悦子(さとみ・えつこ)
女優になる夢を捨てきれず、つましい暮らしを送る60代後半の女性。アパートの立ち退きが迫る。

◎平芳江(たいら・よしえ)
舅姑の介護に明け暮れ、自分をもたぬまま気づけば68歳。路上で見かけた悦子に思わず声をかけ、自らの人生が動き出す。

◎田口理恵(たぐち・りえ)
大学院を出たものの就職氷河期に重なり、非正規雇用の職を転々とする30代の女性。出来心からスーパーで財布を盗んでしまう。

◎木村保(きむら・たもつ)
生きることに不器用で、自死を考える20代の男性。河川敷で「困ったらここに行け」と見知らぬ人から紙切れをわたされる。

◎片倉吉野(かたくら・よしの)
古いアパートの一室を開放し、食事をふるまう。

 

著者メッセージ

 

著者プロフィール

著者の若竹千佐子(わかたけ・ちさこ)さんは、1954年生まれ、岩手県遠野市出身。岩手大学教育学部卒業。

主婦業の傍ら、幼いころからの「作家になる」という夢を持ちつづけ、55歳で小説講座に通いはじめる。8年をかけて『おらおらでひとりいぐも』を執筆、2017年、河出書房新社主催の文藝賞を史上最年長となる63歳で受賞しデビュー。

翌2018年、同作で芥川賞を受賞。『おらおらでひとりいぐも』は世界10ヵ国超で翻訳されている。2022年、ドイツ語版『Jeder geht fur sich allein』(訳:ユルゲン・シュタルフさん)で独の著名な文学賞、リベラトゥール賞を受賞。

 

かっかどるどるどぅ
若竹 千佐子 (著)

68万部を突破し、全国に感涙を与えた文藝賞・芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』から6年。「みんなで生きる」をテーマに据えた著者の新境地!

装幀:鈴木成一デザイン室
装画:後藤美月

<デビュー作>

おらおらでひとりいぐも (河出文庫)
若竹千佐子 (著)

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――

 


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