宗教とは何か? 島薗進さんが宗教という営みの“核心”を明らかにする『なぜ「救い」を求めるのか』が刊行
「救い」を手掛かりに「宗教とは何か」を考える、島薗進さん著『宗教のきほん なぜ「救い」を求めるのか』がNHK出版より刊行されました。
キリスト教、仏教、イスラームをはじめ、世界の宗教に存在する「救い」の教え。そこに受け継がれてきた普遍的な心理には、宗教への信頼がゆらぐ現代においても希求される何かがあるはず――。『宗教のきほん なぜ「救い」を求めるのか』では、宗教学者で東京大学名誉教授の島薗進さんが「救い」の宗教の歴史をたどりながら、宗教という営みの“核心”に迫ります。
キリスト教、仏教、イスラームなどの「救い」の宗教の歴史をたどり、現代でも求められる宗教の“核心”を学ぶ
アンデルセンや宮沢賢治の物語をはじめ、文学や芸術における「救い」というテーマは、昔も今も人の心を打つものです。この「救い」の教えは、キリスト教、仏教、イスラームなど世界中の宗教において教義の中心となってきました(このような宗教を「救済宗教」という)。
現在、先進国、特に日本では、宗教に対する信頼が大きく揺らいでいます。しかし現代社会においても、従来とは形を変えながらも求められる“宗教性”というものがあるのではないか――本書では、この問いに対して、救済宗教と文明の歴史をたどることで理解と考えを深め、宗教という営みそのものの核心に迫ります。
<「はじめに」より一部抜粋>
本書では、「現代に生きる私たちは、救済宗教に距離感を感じている」という事実を通して、救済宗教について考えていきたいと思います。近代以降、宗教になじめない、宗教はもう受け入れられないという人が社会全体で増え
てきましたが(この状況を「世俗化」といいます)、現代の私たちもその流れのなかにいます。自分たちは宗教を卒業した。我々は、過去においてとても有力だった精神文化の「あと」(post-)にいる―救済宗教への距離感は、現代人のそのような意識と関わっているように思えます。
さらにいえば、現在、多くの人はそもそも自分と宗教がどのような関係にあるのか、よくわからないままでいるのではないでしょうか。それに対する手がかりが学校教育で与えられることはなく、メディアが意識的に提示する
ことも少ない。「世俗化」が進むあいだに、宗教への無関心、さらには宗教軽視の態度が養われ、そこから脱却できないでいるからでしょう。
しかしいま、新しいかたちでの「宗教の学び」が求められていると私は思います。それは、特定の宗教の教えについて知識を深める、あるいは体得していくというタイプの学びではなく、宗教とは何かについて知る、すなわち
「宗教リテラシー」を身につけるというタイプの学びです。その際、長い歴史と世界的な広がりをもつ救済宗教について考えることは、一つの有効な手がかりになると考えます。
現代の私たちの自己理解との関係で救済宗教を捉える。本書ではそのような視点に立って、救いの信仰(とその後)について考えてみたいと思います。
★「はじめに」と各章の抜粋記事をNHK出版デジタルマガジンにて一部公開:https://mag.nhk-book.co.jp/article/26415
本書の構成
はじめに
第1章 信仰を求めない「救い」 ~文芸が表現する救済宗教的なもの
第2章 「救い」に導かれた人類社会 ~歴史のなかの救済宗教
第3章 なぜ「救い」なのか ~文明史に救済宗教を位置づける
第4章 「救い」のゆくえ ~「救済宗教以後」を問う
おわりに
著者プロフィール
著者の島薗進(しまぞの・すすむ)さんは、1948年生まれ、東京都出身。宗教学者。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒業。同大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学名誉教授。上智大学グリーフケア研究所前所長。NPO法人東京自由大学学長。主な研究領域は近代日本宗教史、宗教理論、死生学。
著書に『宗教学の名著30』(ちくま新書)、『国家神道と日本人』(岩波新書)、『日本人の死生観を読む 明治武士道から「おくりびと」へ』(朝日選書)、『いのちを“つくって”もいいですか? 生命科学のジレンマを考える哲学講義』『宗教を物語でほどく アンデルセンから遠藤周作へ』(ともにNHK出版)など多数。
宗教のきほん なぜ「救い」を求めるのか 島薗 進 (著) 日本の宗教研究の第一人者が、宗教という営みの“核心”を明らかにする! |
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