フルタチはどう生きるか――古舘伊知郎さん&釈迦コンシェルジュ『人生後半、そろそろ仏教にふれよう』が刊行
仏教をライフワークにするフリーアナウンサーの古舘伊知郎さんと、古舘さんが師匠と仰ぐ仏教研究第一人者・佐々木閑さんの共著『人生後半、そろそろ仏教にふれよう』がPHP研究所より刊行されました。69歳となった古舘さんが「釈迦の教え」を専門家に学び、死生観について語り合います。
若くして亡くなった姉の看取り体験がきっかけ
人生において「老・病・死」と向き合う事は避けられません。それらは年を重ねることで身近になり、意識することも多くなります。
フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんは、最愛の姉を42歳の若さで亡くしたことで「死」を実感しました。この時の看取りの体験が仏教を学びたいと強く思ったきっかけになったと言います。
以来、生きることへの漠たる不安に対する保険として、また欲と自我が強い心の拠り所として、仏教は古舘さんにとって欠かせないものとなりました。いまでは、一人語りのライブで「釈迦の推し活」について熱弁するほど、その教義に魅せられています。
《仏教にふれはじめたきっかけは姉の死により、「人生後半を自分はどう生きるか」につい考えたからでした。当時はちょうどバブルが弾けたあとで、日本経済が急激な不況に陥っていました。働いて収入を得ることは大事、日々の生活からは逃れられないと思う一方で、この世界はかりそめなんじゃないかという漠たる思いもありました。》
(本文「はじめに」より)
古舘伊知郎さんが推し活する釈迦の教え
本書では、人間の普遍的な悩みや煩悩について、古舘さんが「天下一品の釈迦コンシェルジュ」と敬う佐々木閑さんと対談しながら、初心者には近寄りがたい仏教の世界を「古舘節」で分かりやすく解説します。
自我や欲が強く、病気や死への恐怖感が強い古舘さんは、釈迦の仏教にふれて、それまでよりも自我と欲に正直に向き合えるようになったと言います。仏教についてなら何時間でも話せると言う古舘さんが、影響を受けた物事のとらえ方や、心がやすらぐ考え方を紹介します。
◆釈迦の仏教は、苦から逃れるトレーニング
数ある苦しみの中で古舘さんが特に自覚しているのが、人を憎んだり羨んだり妬んだりする「怨憎会苦」。
古舘さんは、この苦しみから逃れるトレーニングを「怨憎会苦マンション」と呼び、自分の邪悪さがマンションのクローゼットに収まっている様子をイメージし、客観視することで憎しみや嫉みから発生する苦しみを少しずつ軽減するようにしています。
◆分別も両極端もダメ! ほどほどがちょうどいい
釈迦が悟りを開いて初めて弟子に説法した教えが「中道」です。これは極端な考えは避け、歩み寄った中庸の道を行くという意味です。古舘さんは多様な選択が求められる現代において、この教えはAかBか決めずとも「ちょっといい加減でもいいんだよ」と言ってくれているようで惹かれると言います。
著者プロフィール
■古舘伊知郎(ふるたち・いちろう)さん
フリーアナウンサー。1954年生まれ、東京都出身。立教大学を卒業後、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。プロレス、F1の実況は「古舘節」と呼ばれ一世を風靡したのちにフリーに。「報道ステーション」のキャスターを12年間担当。立教大学経済学部客員教授。
著書に『喋り屋いちろう』(集英社)など。
■佐々木閑(ささき・しずか)さん
花園大学特別教授。1956年生まれ、福井県出身。京都大学工学部工業化学科卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。文学博士。専門は仏教哲学、古代インド仏教学。花園大学教授などを歴任。
著書に『NHK「100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば』『大乗仏教』『宗教の本性』(いずれもNHK出版)など。
人生後半、そろそろ仏教にふれよう (PHP新書) 古舘 伊知郎 (著), 佐々木 閑 (著) ブッダの教えに触れるだけで病・老・死が怖くなくなる! 仏教をライフワークにする喋り屋と、仏教学の第一人者が本気で対話。 |
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