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「文学は心に効く」って、本当? 世界文学を人類史と脳神経科学で紐解く『文學の実効』が刊行

アンガス・フレッチャさん著『文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明』(CCCメディアハウス)

アンガス・フレッチャさん著『文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明』(CCCメディアハウス)

神経科学と文学の学位を持ち、スタンフォード大学で教えるシェイクスピア研究者が解説する〈文理融合の教養書〉、アンガス・フレッチャさん著『文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明』(訳:山田美明さん)がCCCメディアハウスより刊行されました。

 

人は、物語に救われてきた。なぜ? 世界文学を人類史と脳神経科学で紐解く――米国では出版権が6桁競売に!

小説や詩を読んで心が癒された。そうした経験を持つ人は多く、「文学は心に効く」とはよく言われることです。しかし、それは本当なのか?文学作品が人間の心に作用するとき、我々の脳内では実際に何かしらの変化が起きているのでしょうか?

神経科学と文学、その2つの学位を持ち、スタンフォード大学でシェイクスピアを教える著者が、歴史のなかで文学が生み出してきた「人を救済する25の発明」と、その効能(実効)を解説します。

 
取り上げる作品は、『イリアス』『オイディプス王』『神曲』『ハムレット』『羅生門』『百年の孤独』『ゴッド・ファーザー』など、誰もが認める世界文学の名作です。

事実、時空を超えて人類に受け継がれてきた作品は、それぞれの時代背景や社会を反映しており、当時の人々が切実に必要としてきた救いに応えるような発明が、その中に巧みに仕組まれているのです。

 
本書は「勇気を奮い起こす」「恋心を呼び覚ます」「怒りを追い払う」といった、《25の発明》によってもたらされる《25の効果(実効)》をテーマに、25の章で構成されています。

それぞれの章では、時代背景とともに作品を解説し、その発明を詳述。そして、それによってもたらされる脳内の変化を、神経科学の知識がない者でも分かるように、易しくガイドします。

 
本書は、人類史を背景にしながら作品を解説していくという特性上、紀元前2300年のメソポタミアに始まり、現在の世界文学までを時系列に俯瞰する優れたブックガイドにもなっています。最初から通して読み、ダイナミックな文学史を味わうもよし、興味がある章だけ読むもよし。著者のリリカルな書きぶりとストーリーテリングを堪能できる世界文学ファン必携の一冊です。

 
<「はじめに」より>

“命を養う者よ。偉大な母から生まれ、ヘビのようにうねる浅瀬から雄牛のように立ち上がる者よ。あらゆるものの上を照らしたまえ。――エンヘドゥアンナが歌うと、民衆の声がそれに応えた。すると、1000もの月のミルク色の明かりで、地平線がかすかにきらめいた。誰もが思いもかけなかったことに、真夜中に新たな朝が現れたのだ。こうしてエンヘドゥアンナは文学を発明した。

 

本書の構成

◎はじめに 創意の天空

◎序章 失われたテクノロジー

◎第1章 勇気を奮い起こす
ホメロスの『イリアス』――全能の心の発明

◎第2章 恋心を呼び覚ます
サッフォーの叙情詩、東周の頌歌――秘密を暴露する発明

◎第3章 怒りを追い払う
ヨブ記、ソポクレスの『オイディプス王』――共感を生み出す発明

◎第4章 苦しみを乗り越える
イソップの寓話、プラトンの『メノン』――安らな気持ちを高める発明

◎第5章 好奇心をかきたてる
『スンジャタ叙事詩』、現代のスリラー――未来から語る物語の発明

◎第6章 心を解放する
ダンテの『地獄篇』、マキアヴェッリのイノバトーリ――警戒心を引き起こす発明

◎第7章 悲観的な考え方を捨てる
ジョヴァンニ・ストラパローラ、『シンデレラ』の元になった物語――おとぎ話的展開の発明

◎第8章 苦悩を癒す
シェイクスピアの『ハムレット』――悲しみを解消する発明

◎第9章 絶望を払いのける
ジョン・ダンの「歌」――心の目を開く発明

◎第10章 自分を受け入れる
曹雪芹の『紅楼夢』、荘子の『渾沌』――胡蝶の夢に浸る発明

◎第11章 悲痛を撃退する
ジェイン・オースティン、ヘンリー・フィールディング――愛情のよろいの発明

◎第12章 人生を活性化する
メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』、現代のメタホラー――ストレスを変換する発明

◎第13章 あらゆる謎を解決する
フランシス・ベーコン、エドガー・アラン・ポー――仮想の科学者の発明

◎第14章 自分を高める
フレデリック・ダグラス、聖アウグスティヌス、ジャン=ジャック・ルソー――人生を発展させる発明

◎第15章 失敗から立ち直る
ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』――感謝の気持ちを増幅させる発明

◎第16章 頭をリセットする
芥川龍之介の『羅生門』、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』――信念を再検討する発明

◎第17章 心の安らぎを手に入れる
ヴァージニア・ウルフ、マルセル・プルースト、ジェイムズ・ジョイス――意識の流れを川岸から見る発明

◎第18章 創造力を育む
『くまのプーさん』、『不思議の国のアリス』――無秩序な語り手の発明

◎第19章 救いの扉を開く
『アラバマ物語』、シェイクスピアの革新的な独白――人間性をつなぐ発明

◎第20章 未来を書き換える
ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』、フランツ・カフカの『変身』――革命を再発見する発明

◎第21章 賢明な判断を下す
アーシュラ・ル・グウィンの『闇の左手』、トマス・モアの『ユートピア』、ジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』――二重の異邦人の発明

◎第22章 自分を信じる
マヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ』――自分の信念を選択する発明

◎第23章 凍りついた心を解かす
アリソン・ベクダル、エウリピデス、サミュエル・ベケット、T・S・エリオット――治癒の喜びの発明

◎第24章 夢の世界を生きる
ティナ・フェイの『30 ROCK』、少しばかりの反事実的思考――望みをかなえる発明

◎第25章 孤独を和らげる
エレナ・フェッランテの『リラとわたし』、マリオ・プーゾの『ゴッドファーザー』――幼年時代のオペラの発明

◎終章 明日を発明する

 

著者プロフィール

 
■アンガス・フレッチャー(Angus Fletcher)さん

オハイオ州立大学が主宰する、物語研究に関する世界有数の学術シンクタンク《プロジェクト・ナラティブ》の教授。神経科学と文学という2つの学位に加え、イェール大学で博士号を取得。スタンフォード大学でシェイクスピアの講義を担当しているほか、小説や詩、映画、演劇の科学的仕組みに関する2冊の著書、同業者による審査を受けた多数の学術論文を発表している。その研究は、アメリカ国立科学財団、アンドリュー・メロン財団、映画芸術科学アカデミーの支援を受けており、ソニー、ディズニー、BBC、アマゾン、PBS、NBC/ユニバーサルの各種プロジェクトの物語コンサルタントや、Amazonオーディオブックの『Screenwriting 101: Mastering the Art of Story(シナリオの基礎 物語の技術を習得する)』の著者兼ナレーターを務めている。

 
■訳:山田美明(やまだ・よしあき)

英語・フランス語翻訳家。訳書にウォルター・アルバレス『ありえない138億年史』(光文社)、グレゴリー・ザッカーマン『シェール革命』(楽工社)、ダグラス・マレー『大衆の狂気』(徳間書店)、レベッカ・クリフォード『ホロコースト 最年少生存者たち』(柏書房)などがある。

 

文學の実効 精神に奇跡をもたらす25の発明
アンガス・フレッチャー (著), 山田 美明 (翻訳)

 


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